SANSUI SP-1000
2-WAY SPEAKER SYSTEM ¥130,000(限定生産商品)
1989年に,サンスイが発売したスピーカーシステム。1984年にサンスイが発売した2ウェイスピーカーシス
テムSP-100iの上級機あるいはスペシャルモデルともいえるスピーカーで,デザインや作りなど,よりこだ
わったものとなっていました。

SP-1000は,SP-100i以来の「インナーフレームマウント・エンクロージャー」方式を採用していました。こ
れは,フロントバッフルにス
ピーカーユニットを固定する方式では,フロントバッフルが複雑に共振し,さらに
ユニット内に発生するエネル
ギーでエンクロージャー全体が共振して余分な振動が加わり,音の歪みを生じ
させるということで,
エンクロージャー内部のほぼ中央に40mm厚のセンターバッフルを設け,ウーファーフ
レームと磁気回路をセンターバッフルに固定し,
ユニットとフロントバッフルの振動的な接点をゼロにすると
いうものでした。
エンクロージャー自体はバスレフ方式のシステムでしたが,スピーカーユニットの音を濁さず
エンクロージャー内の背圧を効果的に利用する
ために,ダクトをリアバッフルに装備していました。
ウーファーユニットは,21cm口径で,振動板の表スキンには,極細1000フィラメントカーボンSSCF(スー
パー・スレンダー・カーボンファイバー・1000本のカーボン繊維を1本の糸に束ねたもので織っている)と適
度な内部損失を持たせた特殊バインダーを採用していました。3層構造とすることで剛性を高め,軽くしなや
かで,カーボン特有の鳴きを抑えた振動板としていました。
磁気回路には,直径120mmの大型ストロンチウムマグネットを採用し,口径30cmクラスの強力なドライブ
能力を実現していました。さらに,口径100mmのサブマグネットを加えたツインマグネット方式とすることで,
漏れ磁束も最少に抑えられ,インナーマウント方式により,磁気回路の振動も抑えられていました。また,
エッジの特有の鳴きを抑えるために,エッジを表面ではなく振動板の裏から固定することによりエッジの表
面の面積を最少に抑えた「インナーエッジ方式」を採用していました。



ツィーターは,25mm口径のハードドーム・ツイーターで,振動板として,チタン系ではなく,従来比約50%の
軽量化を実現したPFカーボン(樹脂系素材と複合したカーボン)振動板を採用していました。軽量化とともに
ウーファーと基本的な素材をカーボン系で揃えることで,音のつながりを良くすることをめざしたものでした。
そして,結果としてすぐれた内部損失と,高域再生のワイドレンジ化が実現されていました。



エンクロージャーには,音響特性にすぐれた針葉樹系高密度パーティクルボードを使用し,ウォールナット
ツキ板,オイルフィニッシュ仕上げとなっていました。そして,付属品にワックスを入れ,使い込むことによっ
て深みを増すことを考えた仕様となっていました。天板は,スプルースとの2重構造として,トップ面には牛
本革ヌーバックを張り,質感を高めるとともに,不要振動を低減する構造となっていました。また,背面の
機種ラベルも牛革スエードに焼印を押したものを採用していました。
スピーカー端子は,通常,端子を取り付ける部分だけ背面バッフルを薄くしたり,外付けしたりする構造が
とられていましたが,SP-1000では,真鍮削り出し金メッキのバナナチップ端子を採用して,音質への悪
影響を軽減していました。また,スピーカー端子にも筐体アースが必要という考えから,アース端子も設け
られていました。さらに,このバナナ端子に対応したスピーカーコードも付属品として装備されていました。



SP-100iでは,別売となっていたスピーカースタンドも標準装備となり,一体で音作りがなされていました。
専用のスタンドだけあって,MDFで組まれた支柱部には砂が充填されて重量約7kgにもなり,スピーカー
本体を設置した際に,重心が支柱の中心に来るように設定されるなど,重量バランスも考慮された設計
となっていました。支柱部には皮が巻かれ,振動対策も行われており,設置のためのスパイクも使えるよう
になっているなど,スタンドを含めた総合的な音作りがしっかり行われ,スピーカースタンドとして凝った作
りになっていたと思います。

以上のように,SP-1000は,比較的コンパクトな2ウェイシステムの中に,多くのこだわりを詰め込んだ
作品的な1台で,クリアで音場感のすぐれた音は,音楽を気持ちよく聴かせるものとなっていました。当時,
スピーカーでは,どちらかというとマイナーなブランドとなっていたサンスイの力作で,現在作るととんでも
ない価格になりそうと思うのは私だけではないでしょう。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽を,空気感で語りたい。
やさしさと,力強さと,しなやかさを身につけて,
はじめての音楽体験がやってきた。<SP-1000>。
音質的にも,そしてデザイン的にも,徹底してこだわった豊かな表現力。
それは,音楽を楽しむ雰囲気を大切にすることから生まれた。
サンスイがおくる,スピーカーという「楽器」です。

◎純粋なクラフトマンシップが生んだ,ザ・スピーカー。
◎音の純度は,ここから生まれる。
 インナーフレームマウント・エンクロージャー。
◎音の濁りを徹底追放。独創のインナーエッジを採用。
◎PFカーボン振動板採用。
 従来比約50%の軽量ツィーター。
◎質感と音質を重視して,材料を吟味。
◎真実の音をつき詰めた,スピーカースタンド一体型。




●SP-1000の仕様●

型式 背面バスレフ方式2ウェイ
スピーカーユニット 210mmコーン型ウーファー(防磁タイプ)
25mmハードドーム型ツィーター(防磁タイプ)
最大入力 120W
インピーダンス 6Ω
出力音圧レベル 88dB(W/1m)
再生周波数帯域 40Hz~40kHz
クロスオーバー周波数 2kHz
仕上げ オイルフィニッシュ仕上げ
寸法 270W×450H×303Dmm
重量 18.0kg
※本ページに掲載したSP-1000の写真,仕様表等は,1989年
 8月のSANSUIのカタログより抜粋したもの,サンスイ電気株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意く
 ださい。

                        
 

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