Technics SP-20
QUARTZ PHASED LOCKED 
       DIRECT DRIVE TURNTABLE ¥60,000
1976年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したターンテーブル。テクニクスは,世
界初のダイレクトドライブ方式ターンテーブル・SP-10を 1969年に発表,翌1970年
に発売し,世界中から注目される存在となりました。それ以来,DD(ダイレクト・ドライブ)
方式のオリジネーターとして,優れた製品を送り出していきました。
そして,DDターンテーブルの原器ともいえるSP-10は,1975年にクォーツロックを搭
載したSP-10MK2へと進化し,その地位を強固にしました。そして,SP-10MK2の
弟機として発売されたのがSP-20でした。

ターンテーブルのダイレクトドライブを実現する駆動モーターには,テクニクス自慢の超
低速電子整流子DCモーターを搭載していました。入力電圧に比例した回転トルクを発
生するためにきわめて効率がよく,本質的に高トルクという特性を持つため,重量のあ
るターンテーブルに負けない,1.5kg・cmという大きな起動トルクを実現していました。
さらに,3相全波両方向駆動方式を採用していました。同一入力電圧の半波駆動に比
べて,発生トルクが√2倍になって,また,そのトルク波形も一層滑らかなものが得られ
るという方式で,より滑らかで強力な駆動が実現されていました。また,ローター極数と
ステータ極数を不整合関係にして磁気的コッキングを低減したヘテロポール型として,
より滑らかな回転を実現していました。

そして,SP-20では,従来の速度制御に加えて,温度変動や経年変化などの影響を
まったくといって良いほど受けない高精度な水晶振動子を基準発振器とした位相制御
(クォーツ・フェイズ・ロックド・コントロール)を採用していました。
高精度を生かすため,ターンテーブルの回転数検出には,全周積分型プッシュプル
F・Gで行っていました。発生周波数が高く設定でき制御周波数帯域を十分に広くでき
るF・G(Frequency Generator)と外部誘導の影響をキャンセルできるプッシュプル
方式,回転軸の全周で検出を行う全周積分型に水晶発振器と組み合わせることで,
高安定度で信頼性があり,制御能力の高い制御系を実現していました。
さらに,駆動電子回路には,SP-20用に新開発したDDモーター用の高集積度IC
(AN640)を搭載し,差動増幅器,温度補償回路による対策の代わりに,ワンチップ
IC化で一挙に駆動回路の安定性を高めていました。ストロボは,クオーツ発振による
LED照明で,1条1列の見やすいものとなっていました。



ターンテーブルは,直径32cm,重量2.5kgのアルミダイカスト製で,慣性質量338
kg・cm2の重量級で,厳しくダイナミックバランスをとった高精度なものが搭載されてい
ました。
こうした駆動系,制御系,ターンテーブルにより,ワウ・フラッター0.025%,SN比73
dB,回転数偏差±0.002%,安定した温度での通常の使用状態では,±0.00001%
というすぐれた特性を実現していました。さらに,針圧300gまで回転数偏差0,スタート
後わずか1/4回転で定速に達する(33・1/3rpm時)という瞬時のスタートも可能となっ
ていました。
スタート/ストップボタンと回転数切換ボタンに別個のロジックコントロール回路が内蔵さ
れ,触れるタッチの軽い操作で,正逆両方向対称に回転できる全波駆動の採用とあい
まって,すばやく滑らかにかかる電子ブレーキ,すばやい回転数切換が可能な高い操作
性を実現していました。




モーターコンストラクションは,テクニクスがDDターンテーブルのために開発した一体構
造で,モーターの回転部をターンテーブルと一体にし,固定部は高精度なダイカストキャ
ビネットと一体にした合理的な構造で,精度と信頼性が高められ,強固なベースとなって
いました。
ハウジングのデザインは,アルミダイカストを特殊熱処理したリンクル仕上げで表面変化
を防いでいました。カメラボディを思わせるメカニックな仕上げが特徴的でした。





SP-20には,適合するターンテーブルベースSH-10B4が同時期に発売されました。
ベースは,振動特性にすぐれた積層ボードを採用し,表面はカシュー仕上げ(カシュー
ナッツの実からとれる油を主成分とした塗料・カシュー塗料による仕上げで,漆に似た
風合いになる)ピアノを思わせる仕上がりとなっていました。
ベースを支えるインシュレーターには,スプリングと,ダンピング特性の異なる2種の粘
弾性材を使用した大型のインシュレーターが装備され,共振周波数,共振鋭度を低く抑
えていました。
アームパネルは,厚みのある木製のアームパネルで,取付精度を確保し,不要振動の
発生を抑えていました。
そして,SP-20は,上級機のSP-10MK2と形状,サイズが統一されており,ターンテー
ブルベースを共用することが可能で,SP-10MK2対応のSH-10B3等も使用可能でし
た。標準原器といわれていたSP-10MK2にはサードパーティーからもターンテーブル
ベースが種々発売されており,これらを使用することも可能でした。

以上のように,SP-20は,テクニクスが世界に先がけて商品化したダイレクトドライブター
ンテーブルSP-10の第2世代機,新たな標準原器であるSP-10MK2の開発のノウハ
ウをつぎ込んで創り上げたターンテーブルとして,高いコストパフォーマンスを実現してい
ました。その安定性,性能の高さはテクニクスの技術を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



瞬時スタートのクォーツD.D

たんにクォーツD.Dだけでは満足できない
かたのために・・・
”標準原器”SP-10MKⅡの基本性能を
存分に受けつぎました。

◎速度偏差±0.002%
 クォーツ発振による位相制御
 音楽の心を直に伝えます
●全周積分型プッシュプルF・Gによる回転数検出が
 クォーツによる基準信号発生と見事にタイアップ
●新開発ワンチップIC構成の駆動回路を採用

◎一体構造D.D
 合理性と高精度を追求したユニークな構造
 高性能を支えるベースです。

◎90°定速(33・1/3rpm)の瞬時スタート
 1.5kg・cmの強大な駆動トルク
 3相全波両方向駆動方式です

ワウ・フラッタ(W.R.M.S.)0.025%
SN比(DIN45539B)73dB
◎リンクル仕上げのハウジング
 メカニックで高級感あふれるデザインです。
◎純電子式ブレーキ機構
 スムーズですばやい
 ストップが可能です

●操作はロジックコントロール・・・軽いタッチで
 すばやく確実に動作切換えが行えます
●厳密にダイナミックバランスをとった,重量2.5kg
 直径32cm,慣性モーメント338kg・cm
2もの
 ターンテーブル
●ディスク面との密着性にすぐれたターンテーブルシート
●ストロボはもちろん1条1列
 クォーツ発振によるLEDの照明です
◎300gの針圧負荷に対し回転偏差”0”
●ダイナミック変動・・・SP-20にとって
 問題とするまでもないことがらです




●SP-20定格●

形式 ダイレクトドライブターンテーブル 
駆動方式 両方向駆動ダイレクトドライブ
駆動モーター F・G形超低速電子整流子DCモータ
制御方式 クォーツ・フェイズロックド・コントロ-ル
ターンテーブル アルミダイカスト製 自重2.5kg
直径32.0cm,慣性モーメント338kg・cm2
回転数 33・1/3,45rpm
起動トルク 1.5kg・cm
ブレーキ機構 電子ブレーキ 
起動特性 90°(1/4回転)以内33・1/3rpm時
負荷変動 0%(1.5kg・cm以内)
回転数偏差 ±0.002%
ワウ・フラッター 0.025%W.R.M.S.(JIS C5521)
±0.035% Weighted zero to peak(DIN45507)
SN比 60dB(IEC179B)
50dB(DIN45539A)
73dB(IEC45539B)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 5W
外形寸法 369W×369D×103Hmm
重量 8.2kg



●SH-10B4定格●

重量  5.2kg 
外形寸法  510W×403D×173Hmm 


※ 本ページに掲載したSP-20,SH-10B4の写真・仕様表等
は1976年12月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
パナソニック株式会社に著作権があります。したがって,これら
の写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられて
いますので,ご注意ください。

 
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