SR-929の写真 
SANSUI SR-929
QUARTZ-SERVO DIRECT-DRIVE  PLAYER ¥73,000

1976年にサンスイが発売したマニュアルプレーヤーシステム。アンプでは大活躍のサンスイもアナログプレーヤー
ではあまり有名ではありませんでしたが,本機は突如といった感じで登場した強力モデルでした。そのピアノフィニッ
シュの精悍なデザインも素晴らしいものでした。

SR-929は,当時最新の技術であった水晶発振子を使用したクォーツサーボを採用し,高精度な回転系を持った高
性能ターンテーブルを搭載していました。SR-929のクォーツサーボは,FGサーボとPLLサーボの2系統のサーボ系
により正確な回転を保つ方式で,SN比,負荷特性,ドリフト特性など,当時の水準より飛躍的に高い優れた特性を保
証していました。また,クォーツサーボをOFFにすれば,FGサーボが独立して働き,±3.5%の範囲でレコードのピッ
チを変えることもできました。
この優れたクォーツサーボで制御されるモーターは,サンスイ独自の「バイアス方式可飽和磁芯型位置検出機構」を
持つブラシレスDCサーボモーターでした。このモーターは,着磁強化を施した20極のローターと強力な駆動トルクの
得られる30スロットのコアを持ち,基本性能を追求した高精度なモーターでした。モーターからダイレクトに出ている
センターシャフトは精密仕上げの焼入れ特殊ステンレス鋼を使用し,軸受部には,摩耗が少ない二硫化モリブデン配
合のナイロン材を使用し,ゴムパッキンで密閉性,耐衝撃性を高めていました。

SR-929は高精度な高感度トーンアームを搭載していました。アームの支持機構は,垂直方向に機械強度が高く,
高感度なナイフエッジ方式で,水平方向はサファイヤ軸受けとラジアルベアリングを使用したワンポイント方式を採用
していました。この優れた機構により,垂直感度は10mg以下,水平感度は20mg以下と非常に優れた特性を実現
していました。また,S字型のアームパイプ内部には特殊ダンプ材を封入し,部分共振を抑えていました。さらに,ウェ
イトシャフト部にダンパーゴムを介して取り付けられた樹脂製シャフトやパイプホルダー部,上下軸受け部など入念な
共振防止が図られていました。そして,この高性能トーンアームは,亜鉛合金ダイキャストの大型のアームベースに
取り付けられ,強固にキャビネットに取り付けられていました。

SR-929の断面

SR-929のキャビネットは,重量級の三重構造の複合キャビネットになっていました。モーターボードは,ターンテーブル
と同じ材質のアルミ合金ダイキャストを採用し,高い精度と強度を得ていました。このモーターボードを高密度パーチクル
ボードのキャビネットが支え,さらに,レジンコンクリートのキャビネットベースがこれらを支えるという構造になっていました。
このような,それぞれ比重や質量の異なる材質による三重構造により高い防振性,ハウリングマージンが得られていまし
た。

キャビネットの仕上げには,ピアノ用硬質鏡面仕上げが採用されていました。ポリエステル樹脂で特殊コーティングを行い
手作業で下塗装,上塗装を繰り返し,多くの行程を経て仕上げられた深みのある光沢の美しいもので,傷の付きにくい実
に高級な仕上げのキャビネットとなっていました。
ターンテーブルシートは,シートの表面に小さなピラミッド上の突起を円周状に配置した特殊な形状で,レコードとの密着性
を高める工夫がされていました。また,裏返すことにより,平面のシートにもなりました。

以上のように,SR-929は,¥73,000という価格が信じられないほどの中身を持った強力なモデルでした。そこに使わ
れていた技術,パーツ,仕上げなどを考えるとサンスイは本当に儲かっていたのかと心配したくなるほどでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

高精度回転は音を大切にします。
サンスイ・クォーツサーボ方式。

 ◎高精度回転を実現したサンスイのクォーツ・サーボ
 ◎基本性能が一段と向上,独自のブラシレスDCサーボ
 ◎モーター回転数を正確に検出するFG(周波数発電機)
 ◎低ワウ・フラッター,高SN比など充実した特性
 ◎見やすく,調整しやすい一本縞ストロボ機構
 ◎ナイフエッジ・ワンポイント方式の高感度トーンアーム
 ◎有害な共振を防止した音質重視のトーンアーム
 ◎ハウリングを排除した超重量級・三重構造キャビネット
 ◎高さ調整可能なインシュレーター
 ◎外観は美しく,傷の付きにくいピアノ用硬質鏡面仕上げ
 ◎レコード盤接触面の大きなターンテーブルシート
 ◎ユニークなフリーストップ式ダストカバー
 
 

●SR-929の規格●


型式 2スピード・マニュアルプレーヤー
駆動方式 電子制御・ダイレクトドライブ方式
モーター DCブラシレスサーボ(クォーツサーボ)
定格回転 331/3及び45rpm
ターンテーブル 302mmアルミ合金ダイカスト製
ワウ・フラッター 0.028%以下(WRMS)
SN比 62dB以上(JIS)
66dB以上(IEC-B)
起動時間 1.2秒以内(120°)
回転数偏差 ±0.002%以内(クォーツサーボON)
温度特性 0.00003%/℃
負荷特性 0%(クォーツサーボON)
0.1%(クォーツサーボOFF)
トーンアーム スタティックバランスS字型
ワンポイント/ナイフエッジサポート
トーンアーム実効長 282mm
オーバーハング 15.6mm
定格消費電力 7W以下
寸法 490W×173H×381Dmm
重量 17.1kg

 
※本ページに掲載したSR-929の写真・ 仕様表等は1977年6月のサンスイの
 カタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があり ます。したがっ
 てこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じ られていますの
 で,ご注意ください。

※本ページの制作にあたり,けんばん様より貴重な資料のご 提供をいただきまし
 た。本当にありがとうございました。                                        

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