Aurex SR-Q75
DIRECT DRIVE FULL-AUTO PLAYER SYSTEM ¥65,000
1978年に,オーレックス(現東芝)が発売したプレーヤーシステム。オーレックスは,アナログプレーヤーの
分野では,あまり目立った存在ではありませんでしたが,ダイレクトドライブ方式を早くから導入し,独自の光
電式のカートリッジですぐれた性能を実現するなどしっかりと技術を積み上げていました。特に大型のプレー
ヤーは出していませんでしたが,逆に家庭に置いて使いやすい比較的コンパクトにまとめられたプレーヤーで
すぐれた製品を出していました。そんな中,当時の主力機として発売されたフルオートプレーヤーがSR-Q75
でした。
ターンテーブルは,薄型に見えますが,直径33cm,重量1.6kgのしっかりしたものが搭載され,駆動方式
はDD(ダイレクト・ドライブ)方式が採用されていました。
DDモーターは,コッキングをなくしたスロット&コアレスDCサーボモーターで,大形分周(90パルス)積分方
式FG検出器が搭載されていました。
そして,ここに回転精度を飛躍的に高めるクォーツロック・サーボシステムが採用されていました。基準発振
器に水晶を採用し,安定した水晶の発振周波数を分周して基準信号とし,モーターの回転数(FG=周波数
発電機で検出する信号)と比較することで制御する方式で,モーターの回転パルスと水晶発振のパルスの位
相差を検出して,モーターの駆動回路をコントロールする位相制御サーボにより非常に高精度の回転を実現
する方式でした。
SR-Q75では,クォーツロック・サーボシステムには,新開発のクォーツロック専用IC「TM4503P」が採用
されていました。「TM4503P」は,ワンチップMOS LSIで,速度サーボ及び位相サーボの電圧変換部に
変換出力電圧にFG基本周波数を全く含まず,応答速度の悪くなる不要な積分器を要しない,応答速度の
速いRAMP HOLDのサンプル&ホールド方式を採用していました。しかも,外乱抑圧比を拡大するととも
に,スロット&コアレスモーター,大形全周積分方式FG,クォーツ速度検出器とあいまってすぐれた回転精
度を実現していました。このクォーツ速度検出器は,従来のサンプル&ホールド方式に使用されているC,R
による制御の代わりに,クォーツによる制御方式を採用したものでした。
以上のような回転系,制御系により,回転偏差±0.001%,針圧100gまでの負荷特性0%,ワウフラッ
ター0.025%,SN比62dB(IEC-B)という高い回転精度を実現していました。
トーンアームは,スタティックバランス型,実効長224mmのS字型トーンアームで,特殊アルマイト処理を施
し,剛性を増した構造となっていました。ヘッドシェルもがっしりした剛性の高いものが採用され,全体にしっ
かりと防振対策が施されていました。
トーンアームには,標準で0.3×0.7milのダイヤモンド針を使用したMM型カートリッジC-500MⅡが装
備されていました。すぐれたトレース能力と暖かみのある再生音が特徴でした。
SR-Q75は,フルオートプレーヤーで,レコードエンド検出には,フォトカプラーを用いた無接触の光電式速
度検出方式を採用し,無接触式にすることで,トーンアームに負荷がかからずマニュアル式と同じアーム感
度を保ちつつフルオート化が実現されていました。
フルオート機構は,マニュアル演奏,オートスタート演奏,オートリターン,オートカット機構を装備していました。
さらに,1回から6回までの繰り返し演奏ができるオートリピート機構が装備されていました。
回転数は,緑色のLEDによるデジタル表示で,ロックと同時にLEDが点灯し,回転状態及び回転数が正確
にひと目で分かるようになっていました。また,レコードサイズをセレクトすると33・1/3,45rpmの回転数が
同時にセレクトできるレコードサイズセレクト機構が特徴的な機構でした。セレクトポジションは,17cm-45
rpm,17cm-33・1/3rpm,25cm-33・1/3rpm,30cm-33・1/3rpm,30cm-45rpmの5ポジショ
ンが搭載されていました。
キャビネットは,薄型ながら内部損失のすぐれたUVボードが採用され,大型のインシュレーターとあいまって
外来振動のアームや針先への伝達をしっかりと抑えていました。仕上げは,美しいピアノブラックのミラー仕
上げで,高級感のあるデザインとなっていました。
以上のように,SR-Q75は,当時のオーレックスブランドのフルオートプレーヤーの最上級機として,バラン
スのとれた設計がなされ,再生装置として使いやすい1台となっていました。すっきりとした美しい外観デザイ
ンも魅力的でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
光電式無接触形レコードエンド検出機構を搭載。
新開発クォーツDD専用ICの採用により,
回転偏差±0.001%,負荷特性0%の高特性。
◎光電式無接触形レコードエンド検出機構
◎新開発クォーツDD専用ICのPLL方式
◎±0.001%以内の回転精度を確保
◎針圧100gでゼロ%の負荷特性を実現
◎スロット&コアレスDCサーボモーター
◎LEDによるデジタル式回転数表示
◎透んだ再生音のMM形カートリッジ搭載
◎大形アコースティックインシュレーター
◎高級感あふれるデザイン,ミラー仕上げ
◎部分共振を抑えた高級S字形トーンアーム
◎レコードサイズセレクト機構
●SR-Q75の規格●
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
駆動モーター | コア&スロットレスDCモーター |
制御方式 | クォーツPLLサーボコントロール |
回転数 | 33・1/3,45rpm |
回転偏差 | ±0.001% |
起動特性 | 1/2回転 |
負荷特性 | 0%(針圧100gまで) |
ターンテーブル | 1.6kg,33cmアルミダイカスト |
型式 | S字形スタティックバランス |
実効長 | 224mm |
オーバーハング | 16mm |
トラッキングエラー | ±2° |
取付カートリッジ重量 | 14~20g(シェルを含む) |
形式 | ムービングマグネット形 C-500M-Ⅱ |
出力電圧 | 3mV/1,000Hz(5cm/sec) |
周波数特性 | 20~20,000Hz |
出力バランス | 1.5dB以内 |
クロストーク | 20dB以上(at1,000Hz) |
負荷抵抗 | 47k~100kΩ |
コンプライアンス | 10×10-6cm/dyne |
適正針圧 | 1.8±0.25g |
交換針 | N-500E針 |
SN比 | 62dB(IEC-B) |
ワウフラッター | 0.025%(WRMS) |
使用電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 8W,50/60Hz |
外形寸法 | 448W×155H×352Dmm |
重量 | 8.2kg |
※ 本ページに掲載したSR-Q75の写真・仕様表等は1978年10月
のAurexのカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
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