SONY SS-AL5
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥160,000(2台1組)
1997年に,ソニーが発売したスピーカーシステム。ソニーは,「Gシリーズ」「APMスピーカー」など
スピーカーにおいても,多様な意欲作を出してきたブランドでした。1990年代頃から,SS-A5など
音楽を聴く道具としての落ち着いたナチュラル志向の音をもつスピーカーにも力を入れ,インテリア
性も考えたスピーカーとして発売されたのがSS-AL5でした。

SS-AL5の最大の特徴は,その美しいエンクロージャーでした。2ウェイのバスレフ型エンクロー
ジャーですが,全体が美しい曲面で構成されているのが特徴で,「ラウンドキャビネット」称されてい
ました。このエンクロージャーは,イタリアの高級モダンファニチャーのブランド,アルフレックス社
の協力を得て作られたもので,実際にイタリアの工場で熟練の職人により製作され,輸入されて
いました。



このエンクロージャーは,通常のこのクラスのスピーカーに一般的に使われる板材の約2倍,最大
部厚32mmの高剛性積層合板と,音質的に評価が高いMDF(ミディアム・デンシティ・ファイバー)
ボードを組み合わせて用いていました。さらに,剛性の高さと響きを考慮した内部の梁や補強材
でチューニングが施されていました。側板はラウンドバッフルとして,音の回折効果による波面の
乱れを抑え,フロントバッフルも面積を最小として,定位感と音場感の改善を図っていました。



ウーファーは,13cm口径のコーン型で,ケプラーに樹脂を含浸させた軽量で丈夫な新開発の振
動板を採用していました。駆動系は,13cmの口径に対して大型の直径8cmのマグネットを搭載
していました。このように強力な駆動系で軽量な振動板を駆動することで,初動感度を高め反応
の早い,微小信号に対する正確な応答性をもったウーファーとしていました。

トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,ドーム部には,シルク素材を使ったエッジ一体成形
のドームに手塗りのコーティングで仕上げられたものが搭載されていました。
磁気回路には,磁性流体が封入され,ボイルコイルの動きをよくし,かつ不要な動きを抑え,入力
信号により忠実に動くような設計となっていました。また,磁性流体により磁力が流れやすくなり,等
価的により大きなマグネットを使用したのと同じ効果が得られ,初動感度の高い正確な応答性を
実現していました。

ネットワークには,線径を太くして直流抵抗を減らしたコイルを搭載して初動感度を高め,コンデン
サーにも音質的にすぐれた高級フィルムコンデンサーを採用していました。また,各パーツ間は,
基板によるパターン配線ではなく,直接結合を採用していました。さらに,振動の影響を抑えるた
めに,ネットーワーク自身もクッション材を介してマウントされていました。入力端子は,バイワイ
ヤリング対応の端子となっていました。

以上のように,SS-AL5は,小型ブックシェルフスピーカーとして,各部にしっかりと技術が投入
され,美しいエンクロージャーも印象的でした。非常に癖の少ないバランスのとれた音をもってい
ました。同社の「#5000シリーズ」の標準スピーカーとしてインテリア性ももった1台でした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音質とフォルムの
高次元での出会いを求め,
あくまで丁寧に丹念に
磨き上げを行いました。

◎美しいエンクロージャー
◎最大部厚32ミリの板材を使用
◎大型マグネットと軽量ドライブユニット
◎磁気回路に磁性流体を封入
◎手作りで仕上げた高音質ネットワーク

タクトを振り降ろす直前の
”気配”までもの再現を求めて,
随所に初動感度を高める
設計を行いました。

●アルフレックス社の持つ高度な木材加工技術
 を活かした,曲線仕上げのバッフル板を採用。
 ラウンドした側面により,音の自然な回析を実
 現。フォルムの美しさと,スピーカーとしての高
 度な能力を両立。
●強力な磁気回路で軽い振動板を駆動すること
 で初動感度を高め,指揮者がタクトを振り降ろ
 す直前の緊張感,空気感といった気配までも
 の再現力を追求。
●ウーファーには直径130ミリのユニットを採用。
 その磁気回路には直径80ミリという大型のマ
 グネットを使用。
●ウーファーの振動板には軽量の繊維素材を
 編み込むことで強度を増し,ごく少量の樹脂
 を含浸させて気密性を獲得したケブラーを
 採用。
●ネットワークのコイルは直流抵抗を減らす
 ことで初動感度を高めるため,極太ともいえ
 る線材を使用しています。
●バイワイヤリング対応スピーカー端子。
●防磁設計。




●SS-AL5の主な仕様●

エンクロージャー方式  バスレフ型 
使用ユニット  ウーファー:13cmコーン型×1
トゥイーター:2.5cmドーム型×1 
公称インピーダンス  8Ω 
定格/最大入力(EIAJ)  40W/120W 
出力音圧レベル  86dB/W/m 
再生周波数帯域  42~30,000Hz 
クロスオーバー周波数  3kHz 
大きさ  230W×350H×335Dmm 
質量  約9.5kg(1台) 


SS-AL5mkⅡ
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥160,000(2台1組)
1998年に,SS-AL5はmk2へとモデルチェンジされました。外観はあまり変化がないよう
に見えますが,いくつかの改良が施されていました。

最大の改良点は,トゥイーターでした。シルク素材のソフトドーム型であった前モデルに対し,
カーボン・グラファイト・コンポジットという炭素繊維系の複合材によるドーム型ユニットになっ
ており,同口径ながら,70kHzに達する超高域の再生能力を実現していました。これは,
当時ソニーが翌年より,リーダー的存在として本格展開することになるSACDへ対応を
図ったものでした。



ウーファー部は,13cm口径のケブラーコーンを継承しつつ,磁気回路が改良され,ボイス
コイルも大型化されていました。ゴム製のエッジも柔軟化,耐久性の強化がなされていまし
た。
そのほか,新たに金属製のスパイク付きのインシュレーターが標準で標準で付属していま
した。



以上のように,SS-AL5mk2は,小型で美しいエンクロージャーに,しっかりとしたユニット
を搭載し,SACDにも対応を図った力作でした。小型のスピーカーながらしっかりした低音
とすっきりした中高音をもち,癖や偏りが少ない使いこなしがいのあるスピーカーとして完
成されていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



70kHzまでの高域再生能力を獲得し,
スーパーオーディオCDの再生も楽しめる
小型スピーカーのリファレンスモデル。

●アルフレックス社の持つ高度な木材加工技術
 を活かした,曲線仕上げのバッフル板を採用。
 ラウンドした側面により,音の自然な回析を実
 現。フォルムの美しさと,スピーカーとしての高
 度な能力を両立。
●70kHzまでの再生能力を備え,スーパーオー
 ディオCDに込められた,きめ細やかなニュア
 ンスやその場の空気感までものリアルな再現
 を追求しました。
●新開発のカーボン・グラファイト・コンポジット
 トゥイーターを採用し,超高域の再生能力を
 獲得。ウーファーユニットもさらにブラッシュ
 アップしました。
●フロントバッフルに剛性の高いメープル(楓)
 材を使用。高速なレスポンスを実現していま
 す。
●高音質パーツによる高域/低域独立ネット
 ワーク回路を内蔵。
●バイワイヤリング対応スピーカー端子装備。
●防磁設計。




●SS-AL5mk2の主な仕様●

エンクロージャー方式  バスレフ型 
使用ユニット  ウーファー:13cmコーン型×1
トゥイーター:2.5cmドーム型×1 
公称インピーダンス  4Ω 
定格/最大入力(EIAJ)  40W/120W 
出力音圧レベル  86dB/2.83V/m 
再生周波数帯域  42~70,000Hz 
クロスオーバー周波数  3kHz 
大きさ  230W×350H×335Dmm 
質量  約10.6kg(1台) 
※本ページに掲載したSS-AL5,SS-AL5mk2の写真
 仕様表等は1997年2月,2000年1月
のSONYのカタ
 ログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作
権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
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