OPTONICA ST-2500
FM-AM STEREO TUNER ¥49,800
1975年にオプトニカ(シャープ)が発売したFM/AMチューナー。家電メーカーであったシャープは,
1974年頃よりOPTONICA(オプトニカ)ブランドで力の入ったオーディオ機器を発売していきまし
た。そうしたオプトニカブランド初期のプリメインアンプのエントリークラスの主力機SM-2500との
ペアを想定されたチューナーがST-2500でした。
フロントエンドは,周波数直線型の5連バリコンと低雑音のデュアルゲートMOS型FETを3個使用
した構成となっていました。雑音指数の低いFETの使用により,実用感度は1.5μV(IHF)という
高感度を実現していました。また,5連バリコンを含む回路構成により,イメージ妨害比120dB以
上,スプリアス妨害比110dB以上という高い不要信号排除能力を実現していました。
IF段は,2素子フェイズリニアセラミックフィルターを3段構成とすることにより,低歪率で,実効選択
度70dBを確保していました。さらに,高集積ICにより十分なリミッタが得られ,広帯域ディスクリ回
路とともにキャプチュアレシオ1.0dB,AM抑圧比50dB,SN比70dBという特性を実現していまし
た。
MPX回路は,PLL MPX回路を採用していました。MPX復調信号とFM放送のパイロット信号が
常に同位相になるよう自動制御するPLL(フェイズロックドループ)方式では,通常のLCの同調回
路で19kHzのパイロット信号を逓倍して38kHzの復調信号をつくる方式に比べ,コイルが不要で
外部からの妨害や雑音の影響を受けにくく,自動的に位相変化を補正するため,長期にわたり
45dB(1kHz)というステレオセパレーションを安定して維持できるようになっていました。さらに,
シャープな特性のローパスフィルターで不要高域をカットし,キャリアリーク抑圧比65dBを実現し
録音時のビート妨害や混変調も抑えていました。
機能的には,オーソドックスにまとめられたチューナーでした。弱電界でのステレオ受信時に多い
高域ノイズをL・Rchブレンドして聴感上のS/N比を改善するハイブレンドスイッチ,FMエアチェッ
ク時に,FM信号に相当する基準信号が発信されるエアチャックキャリブレータースイッチ,音量を
調整する出力レベル調整ツマミなどがフロントパネル上に装備されていました。
メーターは,電波強度を表示するシグナルメーターと同調点を表示するFMチューニングメーター
(センターチューニングメーター)が搭載されていました。さらに,マルチパスの検知のために,耳
でモニターできるサウンドモニター回路と,オシロスコープを使うためのマルチパスモニター端子が
装備されていました。
以上のように,ST-2500は,同社の単品コンポーネントとしてのチューナーとしてはエントリーモ
デル的存在ながら,デュアルゲートMOS型FET,5連バリコンなど,オーソドックスに技術や物量
を投入してまとめられ,性能と機能のバランスがとれた使いやすいしっかりとしたチューナーとなっ
ていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
威力の5連バリコン,
エアチェックキャリブレータ。
価格を考えると
ぜいたくすぎるほどの充実設計。
◎実用感度1.5μVの高感度FMフロントエンド
5連バリコンと3個のデュアルゲートMOS型FET
◎FM放送の録音に便利な
エアチェックキャリブレーター(特許出願中)
◎快適なFM放送受信のための
2重マルチパス検知方式
◎優れたIF段 群遅延が平坦な
フェイズリニアセラミックフィルタと広帯域検波回路
◎安定したステレオセパレーションが得られる
PLL回路
◎使いやすい2メータ式
シグナルメータとチューニングメータ
◎連続可変できる出力調整ボリューム
◎使用アンプにあわせられる2系統出力端子
◎見やすく同調がとりやすい220mmのロングスケールと
大型フライホイール
◎300Ωと75Ωの2系統のアンテナが使える
FMアンテナ端子
●定格●
<FM部>
受信周波数 | 76MHz~90MHz |
アンテナインピーダンス | 75Ω(不平衡型) 300Ω(平衡型) |
感度(IHF) | 1.5μV |
歪率(400Hz,100%変調) | 0.2% MONO 0.3% STEREO |
SN比 | 70dB |
イメージ妨害比 | 120dB以上 |
選択度 | 70dB以上 |
IF妨害比 | 110dB以上 |
スプリアス妨害比 | 110dB以上 |
AM抑圧比 | 50dB以上 |
キャプチュアレシオ | 1.0dB |
ステレオセパレーション | 1kHz 45dB 50Hz~10kHz 35dB |
キャリアリーケージ | 65dB |
マルチパス観測端子 | H 130kΩ V 30kΩ |
周波数特性 | 20Hz~15kHz +0,-1dB |
<AM部>
受信周波数 | 530kHz~1605kHz |
感度 | (IHF)15μV (バーアンテナ)300μV/m |
歪率 | 0.7% |
SN比 | 50dB |
イメージ妨害比 | 45dB |
選択度 | 40dB |
<出力>
FM | 0~1.2V(可変) 0.7V(固定) (いずれも400Hz 100%変調) |
AM | 0~0.3V(可変) 0.2V(固定) (いずれも400Hz 30%変調) |
<電源部,その他>
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
定格消費電力 | 9W |
外形寸法 | 442W×144H×380Dmm |
重量 | 10kg |
※本ページに掲載したST-2500の写真,仕様表等は,1975年
9月のOPTONICAのカタログより抜粋したもので,シャープ株
式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
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