SONY ST-4950
FM STEREO/FM-AM TUNER ¥69,800
1975年に,ソニーが発売したFM/AMチューナー。ソニーはトランジスターラジオ,通信型受信機等,高周波
技術,半導体技術にすぐれたものを持ち,ハイファイチューナーにおいてもすぐれた技術を生かしたST-5000
(1967年)ST-5000F(1969年)などで高い評価を受けていました。そうした技術をES-Ⅱシリーズのチュー
ナーにも生かし,1975年にはST-5950を発売し,それに次ぐ弟機として発売されたのがST-4950でした。
FMフロントエンドには,精密な4連CGバリコンが搭載されていました。CGバリコンは,通常のバリコンと異なり,
オシレーター側に羽きざみをもうけ,回転角度ごとに周波数を調節する仕組みで,同調周波数目盛精度が従来
の約3倍と,通信機並みに高精度化されていました。また,局部発振用オシレーターをバリコンに内蔵すること
で,温度,経時変化などの外部の影響も受けにくくなっていました。
RF段には,低雑音で伝送特性がよく,特性のよく揃った2個のFETを1パッケージにしたデュアルゲートFETが
使用され,1.9μV(IHF)という高感度を実現するとともに,強電界域にも混変調を起こさない安定した受信を
可能にしていました。ミキサー部にも,デュアルゲートFETが採用され,スプリアス妨害比が高められていました。
IF段には,新開発のユニフェーズ・フィルターが使用されていました。このフィルターは,セラミックフィルターの高
選択度をさらに高め,加えてフェイズ・リニアのもとに開発されたもので,4個の素子が1パッケージになっており
素子の特性が揃っているので,位相特性,温度特性などが格段にすぐれていました。これを2段に構成し,広帯
域低歪率特性と80dBという高選択度を実現していました。そして,検波部にはレシオ検波が採用されていました。
MPX部には,PLL ICが搭載されていました。PLL(Phase Lock Loop)は,2つの信号の位相を比較し,サー
ボ機構を含んだ閉ループで両者の位相関係を一定に保つようにしたもので,MPX回路にPLLを採用することで,
パイロット信号,MPX信号の正確さと安定度が飛躍的に高まっていました。そして,この頃よりステレオチューナー
にPLL ICの採用が増えていきました。
ダイアルスケールで特徴的であったのは,指針に細長いLEDを上下2段に並べたものが搭載されていることでし
た。FM受信時には,通常は下側1個だけが発光し,同調すると上下2個とも発光するというもので,チューニング
インジケーターを兼ねた機能を持ち,半永久的寿命を持ち,応答速度が早いLEDを使用しているため,FM局の
存在がレベルメーターやセンターメーター以上に素早く表示され,同調がしやすくなっていました。
メーターはレベルメーターとセンターメーターが搭載され,レベルメーターは,MULTIPATHスイッチにより,マルチ
パスメーターに切り換えられるようになっていました。
機能的には,局間ノイズ等を抑えるミューティングスイッチ,ステレオ受信時にノイズが多いときにセパレーションを
抑えてノイズを低減するハイブレンドスイッチ,FM同調周波数を保持して安定受信を確保するAFCスイッチなどが
搭載されていました。
AM部は,IF段に新開発高選択度フィルターを使用し,混信,妨害電波の排除特性にすぐれ、鋭い選択度を確保し
ていました。また,強入力に対しても,極めて低歪率の受信ができるAGC回路を採用していました。
以上のように,ST-4950は,ソニーの持ち前の高周波技術,半導体技術を生かした設計で,しっかりしたパーツ
を投入し,回路構成等オーソドックスにまとめられた正攻法の高品質なチューナーでした。高精度な操作性と高い
受信能力はソニーのすぐれた技術を感じさせる1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
高感度1.9μV,高選択度80dB,
キャプチュアレシオ1.0dB
FM同調と同時に光るダイヤル指針,
きれいな電波を受信するための
マルチパス・インディケーター。
◎目盛精度への挑戦,オシレーター内蔵の
超精密CGバリコン
◎IF段に新開発ユニフェーズ・フィルターを採用。
80dBの高選択度。
◎フロントエンドに低雑音MOS・FETを使用。
高感度1.9μVを得ています。
◎MPX部にPLL ICを採用。
40dBの高ステレオ分離度。
◎多局化するFM放送を正確にキャッチするために,
マルチパス・インディケーターを装備。
◎ダイヤル指針の革命。指針が光って
最適FM同調点を知らせます。
◎高選択度,ビートの少ないAM部。
形式 | AM/FMステレオ・チューナー |
回路方式 | スーパーヘテロダイン方式 |
使用半導体 | IC3個,FET4個,トランジスタ23石,ダイオード20個,発光ダイオード1個 |
アンテナ端子 |
300Ω平衡型 75Ω不平衡型(同軸ケーブルコネクター) |
受信周波数 | 76MHz~90MHz |
中間周波数 | 10.7MHz |
実用感度 |
1.9μV(IHF) |
S/N |
70dB |
キャプチュアレシオ |
1.0dB |
選択度 |
80dB(IHF) |
イメージ妨害比 |
75dB |
スプリアス妨害比 |
100dB |
AM抑圧比 |
56dB |
周波数特性 |
20Hz~15kHz±1dB |
歪率 |
モノ:0.15%(400Hz,100%変調) ステレオ:0.3%(400Hz,100%変調) |
FMステレオ・セパレーション |
40dB以上(400Hz及び1kHz) |
19kHz,38kHz抑圧比 | 60dB |
定格出力(400Hz,100%変調) |
固定出力(FIXED):750mV/10kΩ 可変出力(VARIABLE):0~2V/3kΩ |
アンテナ端子 |
フェライトバーアンテナ 外部アンテナ端子つき |
受信周波数 | 530kHz~1605kHz |
感度 |
48dB/m(バーアンテナ使用時) 100μV(外部アンテナ使用時) |
S/N |
50dB |
イメージ妨害比 |
45dB(1,000kHz) |
歪率 |
0.5% |
電源 |
AC100V 50/60Hz |
消費電力 |
19W |
大きさ |
430W×168H×331Dmm |
重さ |
7.7kg |
※本ページに掲載したST-4950の写真,仕様表等は1975年2月
のSONYのカタログより抜粋したもので, ソニー株式会社に著作
権がありま す。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
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