ST-5950の写真
SONY ST-5950
AM/FM STEREO TUNER ¥84,800

1975年にソニーが発売したFM/AMチューナー。ソニーはトランジスターラジオ,通信型受信機等
高い高周波技術,半導体技術を持ち,ハイファイチューナーにおいても優れた技術を持っていました。
ST-5950は,ES-Uシリーズのチューナーの最上級機として,また,名機ST-5000,ST-5000F
に次ぐ高級チューナーとして発売された高性能チューナーでした。

FMフロントエンドには,精密な5連CGバリコンが搭載されていました。CGバリコンは,通常のバリコ
ンと異なり,オッシレーター側に羽きざみをもうけ,回転角ごとに周波数を直接カウントする仕組みで
同調周波数目盛が通信機並みに高精度化されていました。また,局部発振用オッシレーターをバリ
コンに内蔵することで,温度,経時変化などの外部の影響も受けにくくなり,周波数ドリフト(ズレ)も大
幅に減少し安定した受信が可能となっていました。

5連CGバリコン

FMフロントエンドのミキサー部には,特性のよく揃った2個のFETを1パッケージにしたデュアル
FETを採用していました。温度平衡に優れバランス回路がとられているため,スプリアス妨害比
も高くとることができていました。さらに,RF段には,低雑音で伝送特性のよいMOS FETが使
用され,局部発振用セクションとミキサー間にバッファアンプを加えた構成で,強電界域にも混
変調を起こさず安定した受信が可能となっていました。

ユニフェーズフィルター

IF段には,新開発の4素子1パックのユニフェーズ・フィルターが使用されていました。このフィル
ターは,高選択度と位相特性の直線性の両立をめざして新開発されたもので4個の素子が1パ
ッケージになっており,素子の特性がよく揃っていることで,温度特性などが非常に優れていまし
た。これを2段構成で使用して広帯域低歪率特性と優れた位相特性,そして高選択度を実現し
ていました。

MPX回路には,PLL MPX ICが搭載されていました。PLL(Phase Lock Loop)は,2つ
の信号の位相を比較し,サーボ機構を含んだ閉ループで両者の位相関係を一定に保つように
したもので,MPX回路にPLLを採用することで,パイロット信号,MPX信号の正確さと安定度が
飛躍的に高まります。この頃よりステレオチューナーにPLL ICの採用が増えていきました。
ST-5950では,PLL ICに,高入力インピーダンスのデュアルFETが組み合わされ,広帯域
にわたる低歪と優れたセパレーションを実現していました。

ST-5950のチューニングインジケーター

ダイアルスケールで特徴的であったのは,指針に細長いLEDを上下2段に並べたものが搭載さ
れていることでした。FM受信時には,通常は下側1個だけが発光し,同調すると上下2個とも発
光するというもので,チューニングインジケーターを兼ねた機能を持ち,半永久的寿命を持ち,応
答速度が早いLEDを使用しているため,FM局の存在がレベルメーターやセンターメーター以上
に素早く表示され,同調がしやすくなっていました。
メーターはレベルメーターとセンターメーターが搭載され,レベルメーターは,MULTIPATHスイッ
チにより,マルチパスメーターに切り換えられるようになっていました。

AM部は,RF段にフォワードとシャントAGCが採用され,広いダイナミックレンジが確保され,強
入力に対しても低歪率の受信が可能となっていました。IF段には,新開発の高選択度フィルター
が搭載され,妨害電波に対する鋭い選択度を確保していました。また,強入力に対しては,低歪
率受信ができるAGC回路が採用されていました。

機能的には,局間ノイズ等を抑えるミューティングスイッチ,ステレオ受信時にノイズが多いときに
セパレーションを抑えてノイズを低減するハイブレンドスイッチ,FM同調周波数を保持して安定受
信を確保するAFCスイッチなどが搭載されていました。また,チューナーとしては珍しいヘッドホン
端子(レベルコントロールつまみ付)も搭載されていました。ミューティング回路には,新開発のMOS
型SEVR(Semiconductor Electrically Variable Resistor)が採用され,優れた操作性が
実現していました。

以上のように,ST-5950は,ソニーの優れた総合技術が生かされた,使い易い高性能チューナー
でした。その高精度な操作性と高い受信能力はソニーらしさを感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新開発半導体素子を,
ふんだんに使用
AM/FMステレオチューナー


◎FMフロントエンドに超精密5連CGバリコンを採用。
◎FMフロントエンドのミキサー部には特性の揃っている
 2個のFETを1パッケージにした〈デュアルFET〉を採用。
◎RF段には低雑音,伝送特性のよいMOS-FETを使用。
◎4素子ワンパックのユニフェーズ・フィルターを
 中間周波数増幅段に使用。
◎マルチプレックス・ステレオ分離回路は安定性のよい
 PLL・ICに高入力インピーダンスのデュアルFETをプラス。
◎ミューティング回路に高性能スイッチング素子SEVRを
 採用。
◎半永久的寿命を持った細い発光ダイオードを
 チューニング・インディケーターに採用。
◎FMステレオ放送の選局を簡単にするための
 FMステレオ・オンリー機能。
◎AM部ではRF段にフォワードとシャントAGCを採用。





●主な規格●



●FMチューナー部●

アンテナ端子
300Ω平衡型
75Ω不平衡型(同軸ケーブルコネクター)
実用感度
1.5μV(IHF規格)
SN比
76dB
キャプチュアレシオ
1.0dB
選択度
85dB
イメージ妨害比
100dB
スプリアス妨害比
100dB
AM抑圧比
56dB
周波数特性
20Hz〜15kHz+0.2,−1.0dB
歪率
モノ:0.1%(400Hz,100%変調)
ステレオ:0.2%(400Hz,100%変調)
FMステレオセパレーション
50dB以上(400Hz,10kHz)
定格出力(400Hz,100%変調)
固定出力(FIXED):750mV/10kΩ
可変出力(VARIABLE):0〜2V/3kΩ




●AMチューナー部●

アンテナ端子
フェライトバーアンテナ
外部アンテナ端子つき
感度
48dB/m(バーアンテナ使用時)
100μV(外部アンテナ使用時)
SN比
50dB
イメージ妨害比
45dB(1,000kHz)
歪率
0.5%




●電源部・その他●

電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
25W
大きさ
430W×168H×331Dmm
重さ
8.0kg


※本ページに掲載したST-5950の写真,仕様表等は1975年6月
 のSONYのカタログより抜粋したもので, ソニー株式会社に著作
 権がありま す。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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