Technics 75T(ST-8075)
FM/AM STEREO TUNER ¥42,800
1977年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したFM/AMチューナー。80T(ST-8080)の弟機で,プリメ
インアンプ75A(SU-8075)とのペアを想定したチューナーでした。上級機同様に理詰めで性能を追求したテ
クニクスらしい1台でした。

フロントエンドは,高周波特性のすぐれたデュアルゲートジャンクションFET2石による2段増幅とFM4連バリ
コンがRF段に搭載されていました。実用感度は10.3dBf(75Ω),0.9μV(旧IHF),SN比50dB感度では
37.2dBf(75Ω),20μV(旧IHF),イメージ妨害比80dB,IF妨害比95dB,スプリアス妨害比90dBという
上級機80Tと同一の性能を実現していました。



受信安定度に最も影響する局部発振回路には,高周波低雑音トランジスタや新開発のアルミコア入り発振コ
イルを用いるとともに,湿度などの影響を受けやすい部分を空中配線して,高安定度の局部発振回路として
いました。

IF段は,選択素子に群遅延特性を重視した4共振素子型のセラミックフィルタを3個搭載していました。このう
ち2個は広帯域のもの,1個を狭帯域のものとして,巧みに組み合わせて使用していました。増幅素子には,
ICを2個使って,安定度が高くリミッタ特性のすぐれた差動増幅器を5段設けていました。これらにより,75dB
という高選択度と,0.15%(100%変調・モノ)という低歪率を両立させていました。
検波段には,オーソドックスなクオドラチュア検波回路がIC化されて搭載され,安定した特性が確保されていま
した。

IF段は,選択素子に群遅延特性を重視した4共振素子型のセラミックフィルタを4個搭載していました。このう
ち3個は広帯域のもの,1個を狭帯域のものとして,巧みに組み合わせて使用していました。増幅素子には,
ICを2個使って,安定度が高くリミッタ特性のすぐれた差動増幅器を5段設けていました。これらにより,85dB
という高選択度と,0.15%(100%変調・モノ)という低歪率を両立させていました。
検波段には,オーソドックスなクオドラチュア検波回路がIC化されて搭載され,安定した特性が確保されていま
した。

MPX復調回路には,副搬送波発生器にPLL(Phase Locked Loop)を採用していました。75TのPLLは,
電圧制御発振器で76kHzの信号を発振し,1/2分周で38kHzを,さらにその1/2分周で19kHzを得て,
パイロット信号との位相差を検出し,発振周波数も位相も,正確にパイロット信号に一致させる純電子式回路
構成のICが搭載されていました。温度や湿度の変化に強く,長期にわたって安定なスイッチング信号を供給
でき,1kHzで45dB,10kHzで35dB以上というすぐれたセパレーション特性を実現していました。

MPX回路でステレオ復調に使った19kHzのパイロット信号の除去のためのローパスフィルターには,チェビ
シェフ型に改良を加えたものを搭載し,広帯域で非常にうねりの少ない周波数特性を実現していました。

機能的には,当時のチューナーとしてオーソドックスにまとめられていました。同調離調時のポップノイズの発
生を抑えるFMミューティング回路,440Hzサイン波,50%変調相当の信号を出力するRECレベルチェック
電界強度比例型の正確なシグナルメーター及びセンターチューニングメーターが搭載されていました。

AM部は,ICで構成され,IF回路には選択度特性のよいセラミックフィルタが使用され,Qの高いフェライトバー
アンテナが搭載され,SN比20dB感度30μV,選択度25dBを確保していました。



以上のように,ST-8075は,理詰めで正攻法に技術を投入したチューナーで,上級機ST-8080に準ずる
内容をもったコストパフォーマンスにすぐれた1台でした。ST-8080ゆずりの,パネルの上部にコントロール
スイッチ類を集中的にレイアウトし,下部に6mm厚のガラスを大きくはめ込んだデザインも個性的で,当時斬
新さをもつものでした。プリメインアンプSU-8075とデザインの統一性も図られ,テクニクスらしい雰囲気の
あるものでした。



以下に,当時のカタログの一部を御所介します。



音楽の心・・・それは美しいピアニッシモと
鋭く立ち上がるフォルティシモの中に
潜んでいます。

+0.2~-0.8dB(20Hz~15kHz)
フラットな周波数特性が

音楽信号を忠実に再現します。

◎FM4連バリコン・高周波2段増幅
 を採用した高感度フロントエンド
◎群遅延特性を重視したIF段が
 高選択度と音質の良さを両立
◎PLL・ICを採用した
 MPX復調回路
◎+0.2~-0.8dB
(20Hz~15kHz)
 広く平坦な周波数特性
◎AM放送もすぐれた音質で受信
 高感度・高選択度のAM回路です




●Technics 75T定格●


■FMチューナー部■

受信周波数 76~90MHz
実用感度 0.9μV(75Ω,IHF58),10.3dBf
S/N50dB感度 mono:1.8μV(75Ω,IHF58),16.3dBf(新IHF)
stereo:20μV(75Ω,IHF58),37.2dBf(新IHF) 
高調波歪率(100%変調)
mono:0.15%
stereo:0.3%
S/N(IHF) mono:75dB
周波数特性 20Hz~15kHz(+0.2,-0.8dB)
実効選択度 75dB
キャプチュアレシオ(IHF) 1.0dB
イメージ妨害比(83MHz) 80dB
IF妨害比(83MHz) 95dB
スプリアス妨害比(83MHz) 90dB
AM抑圧比 55dB
ステレオセパレーション 45dB(1kHz),35dB(10kHz)
リークキャリア -60dB(19kHz,38kHz)




■AMチューナー部■

受信周波数
525~1605kHz
感度(S/N 20dB)
30μV
選択度
25dB
イメージ妨害比(1000kHz)
45dB
IF妨害比(1000kHz)
40dB




■総合■

出力
0~0.8V
録音レベルチェック出力 440Hz,50%変調成分 
消費電力
12W
電源 AC100V,50/60Hz 
外形寸法
450W×140H×304Dmm
重量
6.7kg


※本ページに掲載した75T(ST-8075)の写真,仕様表等は
1977年5月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナ
ソニック株式会社に著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載,引用等することは法律で禁じられていま
すのでご注意ください。

 

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