Technics ST-9031T
FM/AM STEREO TUNER ¥39,800
1978年に,テクニクス(松下電器=現パナソニック)が発売したFM/AMチューナー。エントリークラスの
薄型のセパレートアンプSU-9011A,SE-9021Aとの純正組み合わせを想定された薄型のチューナー
で,手ごろな価格のエントリークラスのチューナーながら,しっかりした内容を持つチューナーでした。
フロントエンドは,高周波特性において,接合型FETより,すぐれた特性をもつ4極MOS形FETを採用し,
ゲインが大きく安定性の高いこのFETにと周波数直線型FM4連バリコンを,RF段に搭載していました。
こうした構成で,実用感度12.8dBf,IHF’58では1.2μV(75Ω)の高感度を実現していました。また
SN比50dB感度(ステレオ)では,39.5dBfと,高感度,高妨害排除のフロントエンドとしていました。
IF段は,選択素子に群遅延特性と振幅特性を独立して設定できる表面弾性波(SAW)フィルタと群遅延
特性を重視した狭帯域の4共振素子型セラミックフィルタを2個使用し,低歪化と高選択度の両立を図っ
ていました。さらに,増幅素子には2個のICを使用し,安定度が高くリミッタ特性にすぐれた全段差動増
幅5段構成としていました。こうした構成により,モノラル,1kHzで全高調波歪率0.08%,選択度75dB
という特性を確保し,広帯域・低歪率のFMクオドラチュア検波器につないでいました。
MPX復調回路には,パイロット信号と変調信号とのビートに発生する不要成分による歪,ジッター歪を
防ぐジッター歪除去回路を搭載していました。狭帯域のバンドパスフィルタを通したピュアなパイロット信
号を差動増幅で安定に,MPX・ICに供給し,ビートを大きく低減していました。こうして,高域での歪を抑
えたことにより,1kHzで50dB,10kHzで40dBという高セパレーションを実現していました。
そして,MPX後段のローパスフィルタには,チェビシェフ型に抜本的な検討を加えたものを使用するなど
して,20Hz~15kHz,+0.2~-0.8dBという広く平坦な周波数特性を実現していました。
メーターは,信号の強さをリニアに指示するシグナルメーターとチューニング位置をセンター表示するチュー
ニングメーターが独立して搭載されていました。その他,機能的には,FM AUTO/FM MONO切換スイッ
チと連動したFMミューティング,録音レベルの基準信号を発振するREC LEVELスイッチが装備されてい
ました。
AM部は,フェライトバーアンテナと狭帯域のセラミックフィルタを使用し,40dBという高選択度を確保し,高
感度で混信の少ないAM受信を可能にしていました。
以上のように,ST-9031Tは,エントリークラスのチューナーで,合理化された設計ながら,しっかりとした
性能を実現したコストパフォーマンスの高いチューナーでした。薄型のすっきりしたシルバーパネル外観の
イメージどおりの上品な聴きやすい音をもった使いやすい1台でした。
当時のテクニクスのカタログにある,ラックにマウントされたシステム例でも,すっきりとしたデザインとコスト
パフォーマンスの高さが感じられました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
オーディオには
独立させて追求したい命題がある
ザ・クオリティ・セパレーツ
求めるものは・・・・・音楽の心を鋭くとらえる
低ひずみと高選択度
T.H.D.0.08%(1kHz モノラル)選択度75dB
◎広く平坦な周波数特性
セパレーション50dB(1kHz)の高性能
◎4極MOS型FET,4連バリコン採用の
高感度フロントエンド
◎電界強度チェックも可能な
リニアシグナルメータ搭載
◎FMエアチェックの録音レベル設定に威力
◎高感度・高選択度のAM回路
●定格●
受信周波数 | 76~90MHz |
実用感度 | 12.8dBf,(1.2μV,IHF”58・75Ω) |
S/N50dB感度 | MONO:18.1dBf(2.2μV,IHF”58・75Ω) STEREO:39.5dBf(26μV,IHF”58・75Ω) |
全高調波歪率 |
MONO:0.08%(1kHz) STEREO:0.1%(1kHz) |
S/N(IHF) | MONO:75dB STEREO:70dB |
周波数特性 | 20Hz~15kHz(+0.2,-0.8dB) |
選択度 | 75dB |
キャプチュアレシオ | 1.0dB |
イメージ妨害比 | 80dB(83MHz) |
IF妨害比) | 100dB(83MHz) |
スプリアス妨害比 | 95dB(83MHz) |
IM妨害比 | 90dB(83MHz) |
AM抑圧比 | 55dB |
ステレオセパレーション | 50dB(1kHz),40dB(100Hz,10kHz) |
リークキャリア | -60dB(19kHz,38kHz) |
アンテナ端子 | 75Ω(不平衡形) |
受信周波数 |
525~1605kHz |
実用感度 |
30μV・250μV/m |
選択度 |
40dB |
イメージ妨害比 |
45dB(1000kHz) |
IF妨害比 |
40dB(1000kHz) |
出力電圧 |
0.6V |
消費電力 |
12W |
電源 | AC100V,50/60Hz |
外形寸法 |
430W×98H×300Dmm |
重量 |
4.5kg |
※本ページに掲載したST-9031Tの写真,仕様表等は1978年
1月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株
式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
で転載,引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
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