Aurex ST-S90
DIGITAL SYNTHESIZER STEREO TUNER ¥69,800
1982年に,オーレックス(東芝)が発売したFM/AMチューナー。CD元年のこの年,ケンウッドと共同開発でCDプ
レーヤーの第1号機XR-Z90を発売し,セパレートアンプSY-Λ90SC-Λ90F,スピーカーSS-F90,アナログ
プレーヤーSR-P90,カセットデッキPC-G90ADなど,ハイグレードな単品コンポーネントのシリーズとして「90シ
リーズ」を展開していきました。そのシリーズ中のチューナーがST-S90でした。
フロントエンドは,安定度の高いバッファアンプ付局部発振器を持つ4段バリキャップの電子同調式が採用され,高
い相互変調妨害特性を確保し,強電界地区の受信でも高い耐入力を持ち,外部からの電波妨害にも強い受信性
能が実現されていました。さらに,MOS FET RFアンプ(高周波増幅器)で電波をそのまま増幅してから受信する
形になっており,高い受信感度を実現していました。そして,局部発振にクォーツ(水晶発振)を用いたPLL周波数
シンセサイザーチューナー方式により,正確で安定した受信が実現されていました。
IF部には,歪発生の少ない群遅延特性の平坦なセラミックフィルターが採用され,IFアンプにはリミッター特性のす
ぐれたものが搭載され,IF帯域はWIDE,NARROWの2段切替となっていました。IF信号は,まず帯域幅の広い
セラミックフィルターを通過し,IFアンプに送られた後,WIDE時にはそのまま検波段に,NARROW時には狭帯域
のセラミックフィルターを2段通過し,群遅延特性の平坦な広帯域セラミックフィルターを通過するという構成になって
いました。これにより,低歪率とともに,WIDE時50dB(400kHz),NARROW時65dB(300kHz)という高選択
度が確保されていました。
検波段には,FMステレオ放送受信時の隣接妨害電波排除能力を向上させるためにアンチバーディーフィルターが
搭載され,隣接局とパイロット信号の高調波のビートによる雑音がカットされるようになっていました。
AM部は,電子同調ICを使用したPLL周波数シンセサイザー方式で,リアのバーアンテナにより,高感度,高SN比
での受信が可能となっていました。
選局機能として,AM/FMを合計10局までランダムにメモリーが可能なランダムプリセットメモリーが採用されていま
した。
操作方式,周波数表示,各動作表示など,すべてのにスタティック方式が採用され,それまで多く採用されていたダ
イナミック方式に比べ,安定性が高く,ノイズの発生も抑えられていました。
また,チューナー機能に加え,プログラムタイマー機能も搭載されていることがST-S90の大きな特徴となっていまし
た。1日1回のON-OFFができるエブリデイ,1度タイマーが働いた後,自動的に解除されるワンス,電源ONの状態
から自動的にOFFにするスリープの3通りの機能があり,プリセット局の指定も同時にできるようになっていました。
薄型の筐体は,パネル面の下部に電源スイッチ,プリセットされた放送局呼び出すチャンネルキーなど主要なキーを
配置し,それ以外のスイッチや表示部をスモークドパネルになったシーリングポケットに収めた個性的で未来的なデ
ザインは,「90シリーズ」に共通するイメージを持つものでした。
以上のように,ST-S90は,オーレックスブランド最後の本格コンポーネントのシリーズのチューナーとして,個性的な
デザイン,バランスのとれた性能と機能を実現していました。1974年に,国産初のシンセサイザーチューナーを発売し
たオーレックス最後の単品チューナーとなってしまいました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音質と操作性を追求。
プログラムタイマーも魅力です。

◎MOS FET RFアンプ採用FM電子同調フロントエンド
◎隣接妨害電波排除能力の高いアンチバージーフィルター
◎ワイド,ナローのIF帯域2段切替方式を採用しました
◎AM/FMともに安定したシンセサイザー方式を採用
◎スタティック方式デジタルチューニングシステム
◎ランダムプリセット機能によりワンタッチ選局が可能
◎エブリデイ・ワンス・スリープのプログラムタイマー機能

●バーアンテナおよびAM電子同調ICの採用で高感度
 高SN比を実現しているAM部
●明るさの変化で電波の状態を表示する
 5点LEDインジケーター
●高級感のあふれるスモークドシーリングポケットを採用




●ST-S90の主な仕様●


(FM部)

回路方式 PLL周波数シンセサイザー方式
4連バリキャップフロントエンド
受信周波数 76.0〜90.0MHz
感度 10.8dBf
SN比 MONO 88dB  STEREO 82dB
歪率(WIDE) MONO 0.03%(1kHz) STEREO 0.04%(1kHz)
周波数特性 20Hz〜15kHz ±0.5dB
選択度 WIDE 50dB(400kHz)  NARROW 65dB(300kHz)
イメージ妨害比 80dB
IF妨害比 90dB
AM抑圧比 65dB
分離度 50dB(1kHz) 40dB(100〜10kHz)
定格出力 0〜800mV(2.2kΩ)
キャプチュアレシオ 1.0dB



(AM部)

受信周波数 522〜1710kHz
感度 230μV(バーアンテナ)
SN比 58dB
歪率 0.5%
IF妨害比 68dB
イメージ妨害比 59dB



(その他)

電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 15W
外形寸法 420W×84H×414Dmm
重量 4.4kg
※本ページに掲載したST-S90の写真,仕様表等は1982年9月の
 Aurexのカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権があ
 ります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等すること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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