SU-10000の写真
Technics SU-10000
STEREO CONTROL CENTER ¥450,000

1972年にテクニクスが発売したコントロールアンプ。10000という型番が示すように,テクニクスとして初の
ソリッドステートのコントロールアンプで,当時のテクニクスが技術を結集し各部に贅を尽くし,世界最高レベル
をめざした野心的意欲作でした。

全体の回路構成はきわめてオーソドックスで,動作の余裕度と低歪みを徹底的に追求した設計でした。しかし
各回路ブロック内は贅を尽くした凝った内容を持ち,回路の一部には当時最新のアナログコンピューターの回
路技術を巧みに取り入れた設計も見られました。

イコライザー回路は,プラスとマイナス用の2電源とさらに別電源を持った3電源構成で,3段直結差動増幅+
エミッタフォロアの4段直結構成になっていました。初段には特に厳選した低雑音のPNPトランジスタが使用さ
れていました。また,終段部には162Vという高い電圧を使用した独特の設計になっていました。通常のイコラ
イザー回路では,トランジスターは3石程度ですが,SU-10000では7石も使用され,イコライザー許容入力が
3mV感度で1,350mVと,驚異的に大きな値となっていました。
PHONO1・2とも,入力インピーダンスは,30kΩ,50kΩ,100kΩに,入力感度は1mV,3mVにリアパネ
ルのスイッチで切換が可能となっていました。

トーンコントロール回路は,5石構成で,2電源をつかった贅沢な差動増幅回路が採用され,高SN,低歪率が
実現されていました。高音,低音とも2.5dBのステップアップ方式で,±12.5dBのコントロールができました。
ターンオーバー周波数は高域が2・4・8kHz,低域が125・250・500Hzの3段階の切換えが可能となってい
ました。フラットな特性にもどすディフィートスイッチも備えていました。また,音量調節用のボリュームは,22ス
テップ0dB〜−34dBまで,2dB単位での調整ができるスイッチ式アッテ
ネーターが使われ,ボリュームによる
音質劣化を抑えていました。また,−20dBのアッテネーターも装備され,組み合わせることで,−54dBまで
2dB単位の精密な音量調整が可能となっていました。

フィルターは,ハイ(7・11kHz)とロー(20・40Hz)を備えていましたが,通常のアンプではCRかLC型でトラ
ンジスターが使われていないのに対し,SU-10000では,18dB/octの急峻な特性を得るために2石構成の
ユニットアンプが使われていました。また,このユニットアンプは,フィルターOFFで信号回路から完全にはず
るようになっていました。


入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX2系統,DECK2系統が搭載され,DECK1・2は相互ダビングが可
能となっていました。
機能的にユニークなものとして,通常のREC OUT2系統に加え,もう1系統のREC OUTがあり,レベル調
整が自由にできるマイクミキ
シング回路が備えられ,マイクロフォンと他のソースの音をミキシングして録音す
ることができるようになっていま
した。マイクアンプは,イコライザ回路と同じ162Vの高い電圧を用いたもので
1mV感度で最大許容入力2Vと高耐入力を実現していました。また,L・R信号を合わせたモノラル信号を出力
できるセンターチャンネルOUTも搭載されていました。
ヘッドフォン回路も凝ったものが搭載され,初段に差動増幅2段,最終段はコンプリメンタリー接続という,8石
構成の差動ピュアコンプリメンタリーOCL回路で,高級パワーアンプ並の設計となっていました。

パーツも厳選された高品質なものが使われ,リアパネルの接続端子を国産オーディオ機器で初めて金メッキ化
したのはこのSU-10000であったといわれています。

以上のように,SU-10000は,テクニクスの最高級機としてオーソドックスながら凝りに凝った内容を持ち,当
時世界最高レベルの特性を実現した力作でした。当時のアンプとして驚異的な特性を裏付けるような,透明で
細部まで高い解像力を持った音は,テクニクスならではの世界を実現していました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


いっさいの妥協を排して生み出された
世界最高水準のアンプ
テクニクスが世界に誇る”作品”です
◎大許容入力・低雑音イコライザ回路
 ■3段直結差動増幅とエミッタフォロアの
  4段直結回路構成
 ■入力インピーダンス・入力感度とも切換え可能
 ■最大許容入力1,350mV(3mV感度)
◎音質を損なわないトーンコントロール回路
 ■特性変化範囲はステップアップ方式
  ターンオーバーは3段切換え
◎本格マイクミキシング可能
 ■最大許容入力2V・高耐入力マイクアンプ
◎18dB/octの急峻なロー・ハイフィルタ
◎OCL回路の本格ヘッドホンアンプ
◎ボリウムツマミにスイッチ式アッテネータ採用
◎テープモニター回路2組内蔵
◎トラブル・誤操作を防ぐ入念な設計
◎インジケータは発光ダイオード
◎接続端子は金メッキ
 
 
●定格●


入力感度/インピーダンス PHONO:LOW 1mV/30,50,100kΩ
      HIGH 3mV/30,50,100kΩ
TUNER:100mV/100kΩ
AUX  :100mV/100kΩ
MIC  :1mV/50kΩ
出力電圧/インピーダンス 定格出力 1V/600Ω
最大出力 10V/600Ω
PHONO最大許容入力 LOW 450mV
HIGH 1.35V
歪率 0.01%以下
SN比(IHF) PHONO:74dB(感度3mV)
      70dB(感度1mV)
TUNER:90dB
AUX  :90dB
MIC  :60dB
周波数特性 PHONO:RIAA標準カーブ±0.3dB以内
TUNER:7Hz〜100kHz±3dB
MIC  :10Hz〜20kHz±3dB
トーンコントロール ターンオーバー
  LOW 125Hz,250Hz,500Hz
  HIGH 2kHz,4kHz,8kHz
特性 ±12.5dB 11ステップ
テープモニター
(DECK1,2とも)
PLAY BACK
 入力感度/インピーダンス 100mV/100kΩ
REC OUT
 出力感度/インピーダンス 100mV/4kΩ
フィルタ LOW 20Hz,40Hz(18dB/oct)
HIGH 7kHz,11kHz(18dB/oct)
ヘッドホン出力 150mW
電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 40W
外形寸法 440W×180H×397.5mm
重量 14kg
※本ページに掲載したSU-10000の写真,仕様表等は1973年4月のTechnics
 のカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式会社に著作権があります。
 したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられて
 いますのでご注意ください。
 
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