Technics 75A(SU-8075)
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥62,800
1977年5月に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。松下電器の中で1965年にスピー
カーのブランドとして誕生したテクニクスブランドは,アンプの分野でも,次々と高い技術力を発揮して,管球式
パワーアンプでOTL(アウトプット・トランス・レス)を実現し,国産初のOCL(アウトプット・コンデンサー・レス)を
実現するなど,画期的なモデルを発売していきました。そうした流れの中で,中級機ながら,DC化(ダイレクト
カップリング化)をより進めていくなど正攻法で技術的アプローチをしていったSU-8080を1976年に発売し,
翌年,その弟機として発売されたのがSU-8075でした。
当時,各アンプメーカーは,回路内の時定数を持つカップリングコンデンサーを取り去って,直流域までのゲイ
ンを備えるというDCアンプが広がっていました。テクニクスは,OTL,OCLといった技術面でのアプローチに積
極的に取り組んできたブランドで,75Aでは,ハイレベル入力端子からスピーカー出力端子までオーバーオー
ルなDC化を進めていました。アンプ前面パネルのmain amp inputセレクタをdirectにするとハイレベル入力
端子からダイレクトにDCメインアンプに接続されるようになっていました。
DCメインアンプ部は,初段差動増幅器,純抵抗負荷の電圧増幅段,エミッターフォロワーと2段ダーリントン接
続という出力段という回路構成となっていました。ハイレベル入力端子からの信号をダイレクトに増幅するため
に,ゲインを41dBまで高めて,62W+62W(8Ω両ch同時駆動,20Hz~20kHz)の実効出力が確保されて
いました。各段のゲイン配分にも細心の配慮を加えて,裸の歪を十分に低く設計し,安定なNFを軽くかけるだ
けで,実効出力時に0.02%,-3dB,36W+36W時には0.0015%という超低歪率を実現していました。
直流安定度の対応のため,通常のDCアンプで用いられるFETを使わずに,デュアルトランジスター初段差動
増幅器を構成し,カレントミラー負荷で動作させ,次段をフローティング状態とし,温度ドリフトがあってもDCドリ
フトに効いてこないという設計となっており,DCアンプで重要となるすぐれた直流安定度を実現していました。
main amp inputセレクタをdirectにするとハイレベル入力がそのままこのDCメインアンプに接続されるよう
になっており,main amp inputセレクタをvia toneにするとトーンコントロール回路が挿入されトーンコントロー
ルが使えるようになっていました。その際,メインアンプ部のゲインが27dBとなり,トーンコントロール回路のゲ
イン14dBとでトータル41dBとゲインは変わらないようになっていました。そして,main amp operationセレク
タをlow cutにするとメインアンプ動作がカットオフ2Hzの直流カット回路が挿入され,直流成分漏れからスピー
カーを守るようになっていました。さらに,万一の場合を考えて,リレーを併用して瞬時に動作する電子回路構
成の保護回路も装備されていました。
イコライザーアンプ部は,88dB(2.5mV感度)というPHONO S/N比を実現していました。音楽信号のわずか
1/25000という低雑音を実現するために,規格にもない新開発のM47LPという低雑音トランジスタを初段増
幅器に採用していました。
フォノ入力には,インピーダンス切り換えが装備され,抵抗分を27kΩ,47kΩの2段に,キャパシタンス分を
lowとhighの2段にそれぞれ切り換えられるようになっており,組み合わせて4種のロードが可能で,カートリッ
ジの特徴を引き出せるようになっていました
プリアンプ部,メインアンプ部の電圧増幅段の供給電源をすべて±2電源の定電圧電源として,各チャンネル
内のトランジェントクロストーク,さらには自チャンネル内で発生するセルフトランジェント歪も極少に抑えていま
した。
トーンコントロールは,上述のようにinputセレクタをvia toneに切り換えると初めて回路が挿入されるようになっ
ていましたが,ツマミの中点では,トーンコントロール素子であるコンデンサと抵抗が信号系から外れてしまう新し
いボリュームが使用された回路構成により,周波数特性のウネリが発生しない正確なフラットな特性が追求され
ていました。
イコライザサブソニックフィルタは,30Hz以下の低域の12dB/octでカットするフィルターで,回路はNFを巧み
に利用した構成で,ノイズや歪みの増加も極少に抑えられていました。また,10kHz,-6dB/octのハイフィル
タも装備されていました。
入力端子は,phono2系統,tuner,auxが装備されていました。tape入出力端子は2系統装備され,相互ダ
ビングもrec mode切り換えスイッチで可能となっていました。また,rec modeとtape monitorスイッチが独立
しており,ダビング中でも,phono,tunerなど他のソースが聴けるようになっていました。
さらに,プリアウト,メインイン端子も装備され,セパレートしての使用も可能となっていました。
フロントパネルのデザインは,メインとなる信号経路のコントロール部を下部にストレートにレイアウトし,トーン
コントロール,フィルターなどのコントロール系は上部にレイアウトして,アクセントラインで上下を分割したデザ
インは,当時としては斬新で,素材にはプリメインアンプのフロントパネルには珍しくダイカストを採用し,重量感
重厚さも感じさせるものとなっていました。
以上のように,SU-8075は,上級機SU-8080の技術的特徴を大幅に継承し,エントリークラスのモデルなが
ら,準じた性能を実現していました。テクニクスらしく理詰めの設計ですぐれた特性を実現し,非常に癖の少ない
端正な音が特徴でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音楽の心・・・それは美しいピアニッシモと
鋭く立ち上がるフォルティシモの中に
潜んでいます。
DC化の効果をストレートに味わえる,
インテグレーテッドDC回路構成です。
◎DC,directポジションを備えた
インテグレーテッドDC
◎トーンコントロール回路を挿入
via toneポジション
◎スピーカー保護を考慮したlow cut
メインアンプ動作も切換え可能
素子から創り上げて実現した
PHONO SN比88dB(2.5mv感度)の
イコライザアンプです。
◎規格品番にもない低雑音の
トランジスタを新開発して採用
◎カートリッジの持味を
あますところなく発揮させます
実効出力62W+62W
(両ch同時駆動時20Hz~20kHz・8Ω)
THD0.02%のDCメインアンプです。
◎デュアルトランジスタによる初段が
きわめて高い直流安定度を実現
◎スピーカー保護に万一を考慮して
電子方式による保護回路を装備
◎トランジェントな音楽信号に強い
定電圧電源を採用しています
◎中点でCRが外れる新ボリウムの
トーンコントロール回路です
◎音のニゴリの原因を入口で抑える
イコライザサブソニックフィルタ採用
◎テープセレクタは2ウェイダビング
ダビング中レコード・FMも聴けます
◎レジスタンス分・キャパシタンス分独立
カートリッジロード4種に切換可能
◎機能性でレイアウトしたフロントパネル
マット・ブラックのダイカスト製です
●Technics75A定格●
●メインアンプ●
実効出力(両CH駆動時) |
20Hz~20kHz:62W+62W(8Ω) 1kHz :65W+65W(8Ω) |
全高調波歪率 |
定格出力:0.02% 定格出力-3dB,31W出力時:0.0015%(1kHz,8Ω) |
出力帯域幅(両CH駆動,8Ω) |
5Hz~40kHz |
周波数特性 |
20Hz~20kHz+0,-0.1dB DC~100kHz,+0,-3dB |
SN比(IHF-A) |
115dB |
残留雑音 |
100μV |
ダンピングファクタ |
70(8Ω) |
入力感度/インピーダンス |
1V/47kΩ |
負荷インピーダンス |
MAIN or REMOTE:4~16Ω MAIN + REMOTE:8~16Ω |
●プリアンプ●
入力感度/入力インピーダンス |
phono1,2:2.5mV/27kΩ,47kΩ/low,high tuner,aux,tape deck1,2:200mV/35kΩ |
全高調波歪率 |
0.01% |
SN比(IHF-A) |
(main input:direct) phono1,2:88dB tuner,aux:106dB (main input:via tone) phono1,2:88dB tuner,aux:100dB |
周波数特性 |
phono1,2:RIAA標準カーブ±0.2dB tuner,aux:20Hz~20kHz+0,-0.1dB 0.2Hz~100kHz+0,-3dB |
phono最大許容入力 | 260mV(1kHz,rms) |
定格出力/出力インピーダンス | pre out 定格:1V 最大:8V rec out1,2:200mV |
トーンコントロール |
bass:50Hz,+7.5dB~-7.5dB treble:20kHz,+7.5dB~-7.5dB |
サブソニックフィルタ |
30Hz,-12dB/oct |
ハイフィルタ | 10kHz,-6dB/oct |
ラウドネスコントロール (VR:-30dB) |
100Hz,+8dB |
●総合●
電源 |
AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 150W |
外形寸法 |
450W×140H×361Dmm |
重量 |
11.2kg |
※本ページに掲載した75A(SU-8075)の写真,仕様表等は,
1977年5月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パ
ナソニック株式会社に著作権があります。したがってこれらの
写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
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