Technics 80A(SU-8080)
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥88,000
1976年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。松下電器の中で1965年にスピーカーの
ブランドとして誕生したテクニクスブランドは,アンプの分野でも,次々と高い技術力を発揮して画期的なモデルを
発売していきました。管球式パワーアンプSU-20Aで5パラレルプッシュプルによりOTL(アウトプット・トランス・レ
ス)を実現し,SU-50Aで国産初のOCL(アウトプット・コンデンサー・レス)を実現しました。そうした流れの中で,
中級機ながら,DC化(ダイレクトカップリング化)をより進めていくなど正攻法で技術的アプローチをしていったモ
デルが80A(SU-8080)でした。

当時,アンプのトレンドとして,回路内の時定数を持つカップリングコンデンサーを取り去って,直流域までのゲイ
ンを備えるというDCアンプが広がっていました。テクニクスは,上述のように,OTL,OCLといった技術面でのア
プローチに積極的に取り組んできたブランドで,80Aでは,ハイレベル入力端子からスピーカー出力端子までオー
バーオールなDC化を進めていました。アンプ前面パネルのmain amp inputセレクタをdirectにするとハイレベ
ル入力端子からダイレクトにDCメインアンプに接続されるようになっていました。

DCメインアンプ部は,初段差動増幅器,純抵抗負荷の電圧増幅段,エミッターフォロワーと2段ダーリントン接続
という出力段という回路構成となっていました。ハイレベル入力端子からの信号をダイレクトに増幅するために,ゲ
インを42dBまで高めて,72W+72W(8Ω両ch同時駆動,20Hz~20kHz)の実効出力が確保されていました。
各段のゲイン配分にも細心の配慮を加えて,裸の歪みを十分に低く設計し,安定なNFを軽くかけるだけで,実効
出力時に0.02%,-3dB,36W+36W時には0.0015%という低歪率を実現していました。
80Aでは,通常のDCアンプで用いられるFETを使わずに,デュアルトランジスター初段差動増幅器を構成し,カレ
ントミラー負荷で動作させ,示談をフローティング状態とし,温度ドリフトがあってもDCドリフトに効いてこないという
設計となっており,DCアンプで重要となるすぐれた直流安定度を実現していました。
また,main amp inputセレクタをvia toneにするとトーンコントロール回路が挿入されトーンコントロールが使える
ようになりました。その際,メインアンプ部のゲインが28dBとなり,トーンコントロール回路のゲイン14dBとでトータ
ル42dBとゲインは変わらないようになっていました。そして,main amp operationセレクタをlow cutにするとメ
インアンプ動作がカットオフ2Hzの直流カット回路が挿入されるようになっていました。

イコライザーアンプ部は,88dB(2.5mV感度)というPHONO S/N比を実現していました。音楽信号のわずか
1/25000という低雑音を実現するために,規格にもない新開発のM47Lという低雑音トランジスタを初段増幅器
に採用していました。このトランジスタを雑音が極めて低くなる動作電流が選べるカレントミラー負荷で動作させて
いました。入出力のカップリングコンデンサは,諸特性のよいポリエステルフィルムコンデンサを用い,可聴帯域外
の歪みさえも抑えていました。イコライザ素子は,偏差が±1%以内の金属被膜抵抗と,±2%以内のポリプロピ
レンコンデンサが使用され,イコライザ回路は,RIAA偏差±0.2dB以内という高精度を実現していました。
フォノ入力には,インピーダンス切り換えが装備され,抵抗分を27kΩ,47kΩの2段に,キャパシタンス分をlow
とhighの2段にそれぞれ切り換えられるようになっており,組み合わせて4種のロードが可能で,カートリッジの持
ち味を引き出せるようになっていました。

電源部は,強力なトランスを2個,10000μFの電解コンデンサを4個,さらに2系統の整流回路を備えた左右完
全独立電源が搭載され,電源部の安定度不足によるトランジェントクロストーク歪みの問題が解消されていました。
さらに,電圧増幅段の供給電源をすべて定電圧として,各チャンネル内のトランジェント歪みも極少に抑えていまし
た。トランスは,銅のショートリング,2層に巻いた珪素鋼板カバーの外からさらに銅リングカバーを採用し,そのう
えで,イコライザー回路から最も離れた対角線上にレイアウトし,さらに2つのトランスを対向させて巧妙にリーケー
ジフラックスを打ち消して,トータルなS/N比を向上させていました。



ボリュームは,連続的な音量調整ができる精密なものが搭載され,各アンプNF系に偏差1%以内の金属皮膜抵
抗を使ってゲイン差を0.5dB以内に抑えたことと合わせ,連動誤差が極少の正確な音量調整が可能となってい
ました。
トーンコントロールは,上述のようにinputセレクタをvia toneに切り換えると初めて回路が挿入されるようになっ
ていましたが,ツマミの中点では,トーンコントロール素子であるコンデンサと抵抗が信号系から外れてしまう新し
いボリュームが使用された回路構成により,周波数特性のウネリが発生しない忠実な波形伝送が追求されてい
ました。
オーディオミューティングは,一般的なボリュームの後に抵抗を挿入する方式ではなく,メインアンプのNF量を14dB
変化させることで行う方式が採用され,ノイズ量も同時に低下する効果ももたらされていました。
イコライザサブソニックフィルタは,30Hz以下の低域の12dB/octでカットするフィルターで,回路はNFを巧みに
利用した構成で,ノイズや歪みの増加も極少に抑えられていました。また,10kHz,-6dB/octのハイフィルタも
装備されていました。
入力端子は,phono2系統,tuner,auxが装備されていました。tape入出力端子は2系統装備され,相互ダビン
グもrec mode切り換えスイッチで可能となっていました。また,rec modeとtape monitorスイッチが独立してお
り,ダビング中でも,phono,tunerなど他のソースが聴けるようになっていました。
さらに,プリアウト,メインイン端子も装備され,セパレートしての使用も可能となっていました。

フロントパネルのデザインは,メインとなる信号経路のコントロール部を下部にストレートにレイアウトし,トーンコン
トロール,ミューティングなどのコントロール系は上部にレイアウトして,アクセントラインで上下を分割したデザイン
は,当時としては斬新で,素材にはプリメインアンプのフロントパネルには珍しくダイカストを採用し,重量感,重厚
さも感じさせるものとなっていました。

以上のように,80A(SU-8080)は,テクニクスらしく理詰めの設計ですぐれた特性を実現したアンプでした。特
性の良さが音にも現れ,非常に癖の少ない端正な音は,テクニクスの個性を強く感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽信号から何ものも取り去らず
何ものも付け加えない
忠実な波形伝送の理想に,
いままた大きく近づきました。

Integrated DC 
ハイレベル入力をDCアンプでダイレクトに増幅。

忠実な波形伝送を追求すると
DCアンプへ行きつきます。

◎直流域(DC)まで増幅ゲインを備え
 波形伝送特性にすぐれたDCアンプ

インテグレーテッドDC
DC化の効果を存分に生かせます

◎DC,directポジションを備えた
 インテグレーテッドDC

●トーンコントロール回路を挿入する
 via toneポジション
●スピーカ保護を考慮したlow cut
 メインアンプ動作も切換え可能

実効出力72W+72W(8Ω両CH同時駆動 20Hz~20kHz)
THD0.02%・・・DC構成のメインアンプ部

◎デュアルトランジスタによる初段が
 きわめて高い直流安定度を実現
◎スピーカ保護に万一を期して
 電子方式による保護回路を装備
◎トランジェント歪を極少に押える
 左右完全独立の電源回路です
◎トランスの配置方向にまで配慮
 した低雑音設計です

PHONO SN比88dB(2.5mV感度)のイコライザ回路

◎規格にもない低雑音トランジスタ
 から新しく開発しています
◎特性の良いカップリングコンデンサ
 可聴域外まで低歪化を図っています
◎高精度なイコライザ素子による
 RIAA偏差±0.2dBの周波数特性


◎中点でCRが外れる新ボリウムの
 トーンコントロール回路です
◎ダイナミックレンジの変わらない
 メイン利用のミューティング回路
◎スクラッチノイズやテープヒスを
 効果的に軽減するハイフィルタ装備
◎音のニゴリの原因を入口で押える
 イコライザサブソニックフィルタ採用
◎テープセレクタは2ウェイダビング
 ダビング中レコード・FMも聴けます
◎連動誤差1dB以内(0~-40dB)の
 超連動ボリウムを採用
◎レジスタンス分・キャパシタンス分独立
 カートリッジロード4種に切換可能




●Technics80A定格●


●メインアンプ部●

実効出力(両CH駆動時)
20Hz~20kHz:72W+72W(8Ω)
1kHz      :75W+75W(8Ω)
全高調波歪率
定格出力:0.02%
定格出力-3dB,36W出力時:0.0015%(1kHz,8Ω)
出力帯域幅(両CH駆動,8Ω)
5Hz~40kHz
周波数特性
20Hz~20kHz+0,-0.1dB
DC~100kHz,+0,-3dB
SN比(IHF-A)
115dB
残留雑音
100μV
ダンピングファクタ
70(8Ω)
入力感度/インピーダンス
1V/50kΩ
負荷インピーダンス
MAIN or REMOTE:4~16Ω
MAIN + REMOTE:8~16Ω




●プリアンプ部●

入力感度/入力インピーダンス
phono1,2:2.5mV/27kΩ,47kΩ/low,high
tuner,aux,tape deck1,2:200mV/35kΩ
全高調波歪率
0.01%
SN比(IHF-A)
(main input:direct)
phono1,2:88dB
tuner,aux:106dB
(main input:via tone)
phono1,2:88dB
tuner,aux:100dB
周波数特性
phono1,2:RIAA標準カーブ±0.2dB
tuner,aux:20Hz~20kHz+0,-0.1dB
phono最大許容入力  280mV(1kHz,zrms) 
定格出力/出力インピーダンス pre out 定格:1V/1kΩ
      最大:9V/1kΩ
rec out1,2:200mV 
トーンコントロール
bass:50Hz,+7.5dB~-7.5dB
treble:20kHz,+7.5dB~-7.5dB
サブソニックフィルタ
30Hz,-12dB/oct
ハイフィルタ 10kHz,-6dB/oct
ミューティング -14dB 
ラウドネスコントロール
(VR:-30dB)
100Hz,+8dB




●総合●

電源
AC100V 50/60Hz/180W
消費電力 172W 
外形寸法
450W×140H×371Dmm
重量
14.1kg
※本ページに掲載した80A(SU-8080)の写真,仕様表等は,1976年
 11月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社
 に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等す
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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