Technics SU-9011A
STEREO PREAMPLIFIER ¥49,800
1978年に,テクニクス(松下電器=現パナソニック)が発売したプリアンプ。当時いくつかのメーカーが
エントリークラスでも,機能のセパレート化を図った手ごろな価格のシンプルな機能のセパレートアンプ
を発売していました。そして,当時のテクニクスがセパレートアンプのエントリーモデルとして発売したプ
リアンプがSU-9011Aでした。 

SU-9011Aは,プリアンプとして求められる性能を,非常にシンプルなコンストラクションで実現しようと
したことが大きな特徴でした。テクニクスが積み重ねてきた回路技術と,素子そのものから作り上げる
開発力が可能にした設計でした。



SU-9011Aにはフォノ入力が2系統装備され,フォノ1には,プリ・プリアンプ(ヘッドアンプ)が搭載されMC
カートリッジにも対応していました。MC入力時には,SN比80dB(250μV入力時),入力換算雑音レベル
-152dBという高いSN比と,0.02%(10V出力時)という低歪率を実現していました。こうした特性を実
現するために,プリ・プリアンプには,テクニクスオリジナルの低雑音トランジスターM47LPがチャンネルあ
たり2石,コンプリメンタリーで使用されていました。
フォノイコライザー回路では,M47LPトランジスターを初段差動増幅器に採用し,カレントミラー負荷で動
作させていました。初段以降は,定電流負荷の電圧増幅段,SEPP出力段となっており,A級動作の構成
になっていました。SN比は,2.5mV感度で,88dBを実現していました。
RIAA偏差は,容量偏差2%,抵抗偏差1%以内の素子を使用し,±0.2dBという特性を実現していまし
た。



入力端子は,フォノ2系統に加え,TUNER,AUX,そしてTAPE2系統が搭載されていました。TAPE2系
統は,相互ダビングが可能となっていました。フォノ端子は,金メッキ端子となっており,MCとMMの切換
には,配線の引き回しによるハム雑音を避けるために,オリジナルのリモートファンクションスイッチを採用
していました。
入力セレクタとテープセレクタは,ツマミからシャフトを介して電気的に理想的なプリント基板上の位置で
切換を行うようになっており,配線の引き回しによる相互干渉を抑えていました。プリント基板自体も,相
互干渉,クロストークを改善するように,コンピュータを導入して設計されており,スイッチを含めた信号系
の細部にわたっての配慮が徹底されていました。



トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立型で,ツマミの中点では,トーンコントロールがDEFEATされ
トーンコントロール素子がすっかり信号系から外れるようになっていました。トーンアンプは,A級動作させた
ICで構成され,低雑音・低歪率で,信号を損なうことなく音質調整が可能でした。
ボリュームは,連動誤差のきわめて微少な精密ボリュームが搭載され,パターン回路技術をつくして,音量
を絞った際も高域劣化を抑えていました。

電源部は,過渡的な音楽信号にも対応する各回路に定電圧電源を供給する安定した電源部を搭載してい
ました。電源トランスは,磁気シールドを新しくコイル面にも施したものとして,カットコアタイプに勝る洩れ磁
気の少なさを実現していました。さらに,トランスだけでなく,電源回路全体を大きくさらにシールドし,信号
経路への影響をしっかりと抑えていました。

また,機能的には,マイク端子が装備され,ミキシング回路が搭載されていました。ミキシング回路は,信
号源インピーダンスの影響を受けない回路構成で,SN比73dBの低雑音,20Hz~45kHz+0,-3dBと
いう広帯域でフラットな周波数特性を実現していました。リアパネルには,ミキシング録音出力端子が装備
され,ミキシングされた信号をテープデッキに録音できるようになっていました。
その他,機能的には,30Hz,-12dB/octのサブソニックフィルター,7kHz,-6dB/octのハイフィルター
ラウドネススイッチ,STEREO/MONOのMODEスイッチなど,標準的な機能が装備されていました。

以上のように,SU-9011Aは,手ごろな価格のテクニクスのセパレートアンプのエントリーモデルとして,
薄型の中に,合理化されたシンプルな作りで,すぐれた性能を実現したコストパフォーマンスの高いプリア
ンプでした。シンプルな回路の良さを発揮した,すっきりとして透明感のある音は,外観のイメージ通りの
ものでした。



当時のテクニクスのカタログにある,ラックにマウントされたシステム例でも,すっきりとしたデザインと
コストパフォーマンスの高さが感じられました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



オーディオには
独立させて追求したい命題がある
ザ・クオリティ・セパレーツ

求めるものは・・・・・音楽の陶酔をあまさず伝える
      静寂の深度

フォノMC・SN比80dB(250μV入力時)
◎オリジナルの低雑音トランジスタを採用
◎リモートアクションスイッチ,金メッキ端子
 微少入力に細心の注意をはらった設計です。
◎MCプリ・プリアンプ動作はLEDが表示

フォノMM・SN比88dB(2.5mV感度)
◎アクティブオーディオファンに・・・高SN比で
 ワイドレンジのマイクミキシング回路内蔵
◎ユニークなセンターディフィートタイプ
 低雑音・低歪率トーンコントロール回路
◎入出力回路切換え,プリント基板にも,性能向
 上のために数かずの工夫を凝らしています
◎全回路に定電圧電源を供給・・・
 徹底したノイズ対策を施した電源回路
◎特性変化・連動誤差を極少に抑えた
 高精度ボリウムコントロールを採用
◎有害な低域ノイズをシャープに遮断する
 30Hz,-12dB/octのサブソニックフィルタ
◎テープヒス,レコードのスクラッチノイズを
 軽減する7kHz,-6dB/octのハイフィルタ




●定格●


<アンプ部>

入力感度/入力インピーダンス  PHONO1
 (MM):2.5mV/47kΩ
 (MC):70μV/10Ω
PHONO2
 (MM):2.5mV/47kΩ
TUNER・AUX:150mV/47kΩ
TAPE1・2 PLAY BACK:150mV/47kΩ
MIC:4mV/10kΩ 
PHONO最大許容入力(1kHz,RMS)  PHONO1(MM):200mV
       (MC):6mV
PHONO2(MM):200mV 
定格全高調波歪率  0.008% 
SN比(IHF-A)  PHONO1
 (MM):88dB
 (MC):80dB(250μV入力時)
      -152dBV(入力換算雑音)
PHONO2(MM):88dB
TUNER・AUX:100dB
MIC:73dB
全高調波歪率(20Hz~20kHz) TUNER・AUX
 (at 5V out put)Volume 0dB:0.005%
 (at 1V out put)Volume -30dB:0.008%
PHONO,PHONO2(MM)
 (at 5V out put)Volume 0dB:0.008%
 (at 1V out put)Volume -30dB:0.01%
PHONO1(MC)
 (at 5V out put)Volume 0dB:0.03%
 (at 1V out put)Volume -30dB:0.02% 
周波数特性  PHONO1,2:
 RIAA標準カーブ±0.2dB
TUNER,AUX:
 20Hz~20kHz,+0,-0.2dB
 2Hz~120kHz,+0,-3dB 
トーンコントロール  BASS:
 50Hz,+8dB~-8dB
TREBLE:
 20kHz,+8dB~-8dB 
サブソニックフィルタ  50Hz,-12dB/oct 
ハイフィルタ 7kHz,-6dB/oct 
ラウドネスコントロール(-30dB)  100Hz,+8dB 
出力電圧/出力インピーダンス  OUT PUT定格:1V/600Ω
       最大:5V/600Ω
MIXING REC OUT:定格:1V/600Ω
              最大:5V/600Ω
TAPE1,2 REC OUT:150mV 



<総合>

電源  AC100V(50/60Hz) 
消費電力  13W 
外形寸法  430W×98H×285Dmm 
重量  4.5kg 
※本ページに掲載したSU-9011Aの写真,仕様表等は1978年1月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
★メニューにもどる            
 
 

★セパレートアンプPART10にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system