Technics SU-A4MK2
STEREO DC CONTROL AMPLIFIER ¥250,000
1982年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したコントロールアンプ。1965年に松下電器(現パナソニック)
は,オーディオブランドとしてテクニクスを立ち上げ,総合家電メーカーとしての技術を投入し,すぐれたオーディオ
製品を作り上げていきました。スピーカーからスタートしたテクニクスブランドは,その後,様々な機器に広がり,ア
ンプにおいても高い技術を発揮していきました。1977年には,超弩級機SE-A1,SU-A2のセパレートアンプの
ペアを発売し,さらに1979年にはコントロールアンプSU-A2の弟機として,より一般向けの高級機としてSU-A4
を発売しました。その後継機として発売されたコントロールアンプがSU-A4MK2でした。
SU-A4MK2は,全段A級動作により,スイッチング歪,クロスオーバー歪が解消され,回路構成は,アモルファス
MC昇圧トランス,ローノイズFET差動入力によるICLのフォノイコライザー,完全DCアンプのフラットアンプ及びバッ
ファアンプという構成でした。
フォノイコライザー回路に搭載されたアモルファス昇圧トランスは,当時世界初のものでした。トランスコアの素材に
独自に開発した厚さ数10ミクロンのアモルファス磁性合金を採用していました。このアモルファス磁性合金は,き
わめて高い透磁率(μe=1.2×105,1kHz)を実現し,低域周波数特性を大きく改善していました。また,高域
特性も,低磁気損失と低鉄損により大きく改善されていました。さらに,コア形状をトロイダル巻線として,外部から
の誘導雑音をシャットアウトし,加えてトランスはパーマロイの2重シールドケースに収め,珪素鋼板,鉄などでシー
ルドすることで,誘導雑音の防止対策を徹底していました。このように徹底した設計のアモルファス昇圧トランスは
3Hz~300kHz(15Hz~100kHz±0.2dB)という広帯域で超フラットな周波数特性と,MC入力では異例とも
いえる82dB(100μV入力時)の高S/N比を実現していました。
フォノイコライザー回路は,上述のようにローノイズのFET差動入力によるICL(インプット・コンデンサーレス)となっ
ており,2系統のフォノ入力を装備していました。2系統のうちフォノ1は,MC2段(250μV/70μV),MM2段
(2.5mV/1.0mV)と計4段の入力感度切換えが搭載され,多様なカートリッジに対応できるようになっていまし
た。
フラットアンプ,バッファアンプは入力段の特性の揃ったデュアルFET差動増幅,カレントミラー負荷とし,SEPP
出力段をもつ2段構成としていました。こうした構成により,フォノ入力は,わずか1つのカップリングコンデンサー
通過するだけとなり,ハイレベル入力では一切のコンデンサーを通過することなく出力端子までDC増幅となって
いました。SEPPバッファアンプにより,出力インピーダンスはわずか2Ωとなっており,パワーアンプリモート設置
の際のシールド線容量成分による高域特性の劣化は抑えられるようになっていました。
入力は,phono2系統の他にtuner,aux,tape1,tape2が搭載されていました。aux入力は,さらにCD
aux,videoの3系統が備えられ,aux selectorで切換えるようになっており,多様なソースの時代に対応
するようになっていました。tape1,2は相互ダビングが可能となっていました。
トーンコントロールは,SU-A4以来,シェルビング・トーン(設定された周波数以上または以下を全体的に一気に
ブーストあるいはカットする方式のトーンコントロール)が搭載されていました。通常のbass,trebleに加えてsuper
bass,super trebleが装備されていました。bassは,ターンオーバー50Hz・最大変化量±5dB,trebleはターン
オーバー2kHz・最大化変量±5dBというコントロール特性となっていました。そして,super bassは,12dB/oct
の急峻な立ち上がりと,最大10dBというブースト量をもち,スピーカーのf特を,低域へ最大1oct拡張できるという
ものでした。さらに,ターンオーバーは75Hz/150Hzに切換えがきるようになっていました。super trebleは,ター
ンオーバー8kHz・最大可変量±10dBで,カートリッジf特の補正等に便利なものでした。
これらのトーンコントロール機能は,ゲイン1で,DCフラットアンプとDCバッファアンプの間に挿入され,ON/OFF
(via tone-DC)が可能で,OFF(DC)時には,ストレートDCモードとなるようになっていました。
その他,コントロールアンプと称するとおり,機能として,さらに20Hz,-12dB/octのsubsonic filter,7kHz
-6dB/octのhigh filter,-20dBのmuting,loudnessスイッチ,stereo/monoのmode切換えなども装備
されていました。
テクニクスブラックといわれる独特の色のフロントパネルのデザインは,SU-A4を継承しており,主要な操作系
はパネル上面に配置され,下部のポケットドア内には,多くのコントロール機能が装備される形になっていまし
た。
以上のように,SU-A4MK2は,前モデルのSU-A4の内容を継承しつつ,MC昇圧トランスの採用など,より
強化が図られていました。歪み感の少ないしなやかで繊細さをもつ音は,テクニクスならではの魅力を持って
いました。特にフォノイコライザー部の実力は,テクニクスの歴代アンプの中でも最強の部類に入るもので,そ
の意味でもすぐれたコストパフォーマンスをもっていたように思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
全段A級動作,全段ICL構成を基盤とし,
アモルファスMC昇圧トランス,
シェルビングトーンなど
独自の技術を結集
◎DA時代に呼応し,しかもアナログディスクの
重要性を認識したA4MK2
◎アモルファスMC昇圧トランスを搭載
超広帯域で平坦な周波数特性を実現
◎すべてのカートリッジの特性を最大限に
引きだすフルマッチイコライザ
◎全段A級動作,ローノイズFET入力
によるICL構成
◎接続する線材の影響を解消した
2Ωの低出力インピーダンス
◎音楽性を損なうことなく音質調整可能
シェルビング・トーンコントロール
◎CD/Aux/Video,DA時代に対応した
プリセット補助入力端子を装備
●SU-A4MK2主な定格●
入力感度/入力インピーダンス | phono1(MC):70μV/30Ω (MC):250μV/470Ω phono1(MM):1mV/47kΩ (MM):2.5mV/47kΩ phono2(MM):2.5mV/47kΩ CD/aux/video,tuner,tape:150mV/47kΩ |
全高調波歪率(20Hz~20kHz) | phonoMM(VRmax,2Voutput):0.001%以下 phonoMC(VRmax,2Voutput):0.001%以下 CD/aux/video,tuner,tape (VRmax,2Voutput):0.001%以下 |
SN比 | phonoMM(2.5mV入力):92dB以上 phonoMC(100μV入力):82dB以上 CD/aux/video,tuner,tape:106dB以上 |
周波数特性 | phonoMM:20Hz~100kHz,RIAA±0.2dB 20Hz~20kHz,RIAA±0.15dB CD/aux/video,tuner,tape:DC~200kHz(+0,-3dB) DC~20kHz(+0,-0.1dB) |
最大許容入力 | phonoMM/2.5mV:160mV(1kHz,RMS) phonoMC/250μV:16mV(1kHz,RMS) |
シェルビングトーン | super treble(50kHz):±10dB treble(20kHz):±5dB bass(50Hz):±5dB super bass(20Hz,12dB/oct):0dB~+10dB |
ターンオーバー周波数 | super treble:8kHz treble:2kHz bass:500Hz super bass(+12dB/oct):75Hz,150Hz |
フィルタ | high:7kHz,-6dB/oct subsonic:20Hz,-12dB/oct |
ラウドネスコントロール(VR-30dB) | 50Hz,+7dB |
出力電圧/出力インピーダンス | recout:150mV/600Ω preout:2V/2Ω |
プリアウト最大出力電圧 | 8V(総合) |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 12W |
外形寸法 | 430W×97H×360Dmm |
重量 | 8kg |
電源スイッチ連動ACアウトレット | 最大供給電力800W |
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