Technics SU-V100D
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥198,000

1987年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。1986年にALPINE/LUVMANのLV-109
が発売されたのを皮切りに,各社からD/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプが発売されていきました。そんな中,
テクニクスがはじめて発売したD/Aコンバーター内蔵型のアンプがSU-V100Dでした。

SU-V100Dに内蔵されたD/Aコンバーター部は,「4DAC・18bit変換システム」と称されるものでした。アンプ同様
にD/Aコンバーターでも信号の+,−が切り替わるときに問題となるゼロクロス歪みを解消するために,入力データ
の+成分と−成分とを独立処理する2つのD/AコンバーターをL/Rの各チャンネルに搭載し,計4個のD/Aコンバー
ターを使用したシステムが4DACシステムでした。入力されたデジタル信号は,新開発の4DACプロセッサLSIで,+,
−信号を判別し,2つのD/Aコンバーターを切り換えて高速処理するそして,原理的にゼロクロス歪みの発生を抑え
ていました。また,4DACプロセッサLSI等の使用により,−12dB以下の平均音楽レベルにおいてD/Aコンバーター
の18bit動作を実現し,225次+41次の4倍オーバーサンプリング18bit方式のデジタルフィルターの採用とあわせ,
信号波形の再生能力,特に微細レベルにおける表現能力を高めていました。この「4DAC・18bit変換システム」は,
同軸1系統,光2系統の入力及び同軸REC OUT,PLAYBACK端子を装備していました。また,サンプリング周波
数32kHz,44.1kHz,48kHzに対応し,自動切換となっていました。

パワーアンプ部は,SE-A100で開発された「classAA回路」が採用されていました。「classAA回路」は,通常一つの
アンプ内で行われる電圧コントロールと電流ドライブの2つの動作をそれぞれ独立させ,別個のアンプに受け持たせた
もので,左右合わせて2つの電流ドライブアンプと電圧コントロールアンプで計4個のアンプで構成され,「VC-4(Volta
-ge Current 4)アンプ構成」と称していました。

VC-4アンプ構成

この「VC-4」アンプ構成は,出力インピーダンスが無限大の電流ドライブアンプと出力インピーダン スが0の電圧コント
ロールアンプをパラレルにつなぎ,電流供給から開放された電圧コントロールアンプが入力信号に忠実に電圧コント
ロールし,駆動に必要な電流は電流ドライブアンプから存分に供給されるというある種理想的な動作方式となっていま
した。その結果,負荷インピーダンス変動にも電流/電圧の位相ズレのない安定した伝送・増幅特性を得るというもの
でした。SU-V100Dのパワーアンプ部は,この強力な「classAA回路」により150W+150W/0.002%という,低
歪率とハイパワーを実現していました。

入力系は,PHONO,TUNER,CD,AUX,パワーアンプダイレクト,TAPE1,2とアナログ7系統と上述のデジタル
4系統が装備されていました。PHONOは高SN比を誇るイコライザーアンプによりMM/MC双方に対応していました。
D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプという形式を生かすために,内蔵のD/Aコンバーターの出力信号及び,パワー
アンプダイレクト入力信号は,classAAバッファアンプ及び,パワーアンプ入力ボリュームだけを介して,直接パワーア
ンプに入力するシンプルな信号経路となっていました。また,パワーアンプ入力ボリュームには,表面を鏡面上に平滑
化した新抵抗体と,金メッキを施した多接点ブラシを採用したP.C.L.低インピーダンスボリュームが採用され,約10dBの
SN比改善を実現していました。

SU-V100Dの電源トランス・コンデンサーSU-V100Dの内部

パワーアンプ部を支える電源部には,独自の完全整列巻線法により高密度・極太巻線で,同じ断面積中に従来比
1.4倍ものコイルを巻くことが可能となり,同クラスのコアサイズのものに比べ,ひとまわり大きな容量を確保し,高
い効率とレギュレーションを実現した300VAの大容量電源トランスをL/Rそれぞれ1基,合計2基・600VAを搭載
していました。さらに,電源用電解コンデンサーには,新開発のHi-Speed EX CapacitorをL/Rそれぞれに4個
合計8個(トータル容量65,600μF)搭載していました。
プリアンプの電源部には,温度安定性にすぐれた電源専用の定電圧ICと高周波特性にすぐれた広帯域ICを組み合
わせ,帰還回路を形成したアクティブサーボ電源を採用していました。これにより,カーバッテリーをしのぐほどのすぐ
れたレギュレーション(電圧安定性)と広い周波数帯域にわたるローノイズ特性を実現していました。

パワーアンプ部は,L/R独立のツインモノラル構成で,左右対称の構造となっており,さらに,プリアンプ部とデジタ
ル部を厳重にシールドしたT型構成となっていました。これらにより,パワーアンプ部とプリアンプ部・デジタル部,さら
にL/R間の相互干渉が低く抑えられていました。このようなコンストラクションは,この後,SE-M100SU-MA10
等にも継承されていくこととなりました。
アンプ全体を支えるベース部には,コンプライアンスの異なる2種の材料を組み合わせたインシュレータの上にBMC
(バルクモールドコンパウンド)ベースを採用し,その上に高剛性シャーシを重ねた構造がとられ,防振対策が徹底さ
れていました。

以上のように,SU-V100Dは,テクニクス初のD/Aコンバーター内蔵型プリメインアンプとして,しっかりと技術と物
量が投入され,28kgにもおよぶ堂々たる重量級アンプとなっていました。歪み感が少なくSN比のよいしなやかな音
はテクニクスらしいものでした。そして,このSU-V100Dが原型となり,後のSE-M100,SU-MA10が生まれていっ
たともいえるでしょう。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



150W+150Wの迫力サウンドで聴く,
デジタルフィデリティ。
アクティブサーボ電源で,
高音質にさらに磨きをかけました。

@4DAC・18bitシステム搭載。
 デジタル入力端子は4系統装備(光入力:2系統)
AclassAA搭載。150W+150W/0.002%の
 ハイスペックを実現。
B安定した電源供給を実現する
 アクティブサーボ電源を搭載。


◎デジタルを繊細に表現。
 4DAC・18bit変換システム。
◎高品位なデジタル信号伝送を実現する
 デジタル光リンクを2系統装備。
◎150W+150W/0.002%のハイスペック。
 独自のclassAA搭載パワーアンプ。
◎ピュアな信号伝送をさらに徹底した
 新パワーアンプダイレクト機能。
◎L/Rチャンネル間の相互干渉を極少化。
 ツインモノラルパワーアンプ。
◎バッテリー駆動をも凌ぐ電圧安定性。
 プリ部にアクティブサーボ電源を採用。




●SPECIFICATIONS●


■オーディオ■

実効出力
150W+150W(20Hz〜20kHz,6Ω,0.005%)
全高調波歪率
0.002%(定格出力−3dB)
周波数特性
20Hz〜20kHz(+0dB,−0.2dB)
0.8Hz〜150kHz(+0dB,−3dB)
SN比
115dB(IHF’66,Power Amp Direct時)
ダンピングファクタ
100(8Ω)
負荷インピーダンス
main or remote:4Ω〜16Ω
main and remote:8Ω〜16Ω
入力感度/入力インピーダンス
MM:2.5mV/47kΩ
MC:170μV/220Ω
tuner,CD,aux,tape:150mV/22kΩ
Phono SN比
MM:2.5mV入力:88dB
MC:250μV入力:72dB
Phono周波数特性
20Hz〜20kHz,RIAA±0.2dB
トーンコントロール
bass:50Hz(+10dB〜−10dB)
treble:20kHZ(+10dB〜−10dB)




■総合■

電源
AC100V,50/60Hz
消費電力
300W
外形寸法 478W×183H×453Dmm
重量
28.5kg

※本ページに掲載したSU-V100Dの写真,仕様表等は,1988年
 4月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式
 会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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