SU-V8の写真
Technics SU-V8
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥99,800

1979年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。SU-V10以来,同社が展開していった
可変バイアスによるノンスイッチング方式である「ニュークラスA方式」を採用したプリメインアンプとしてトップモ
デルSU-V10に次ぐモデルとして発売されたプリメインアンプで,上級機の技術やノウハウを取り入れた,コス
トパフォーマンスの高い1台となっていました。

SU-V8のパワー部の回路構成は,上級機SU-V10に準ずるもので,初段の差動増幅回路は,ワンチップの
デュアルFETで構成され,DCドリフトが−10℃〜+50℃の範囲で±10mV以下に抑えられ,ハイゲインDC
パワーアンプに,ハイレベル入力(tuner,aux,tape)が直結されたストレートDC方式が採用されていました。
スイッチでストレートDCを選択することで,トーンアンプもパスしてパワーアンプ直結となるようになっていました。
150mVのハイレベル入力を定格出力110Wまで一気に増幅するハイゲインDCパワーアンプには,リニアカ
スコード回路や3段ダーリントン回路などが採用され,裸特性が高められていました。NFBは45dBに抑えられ
ているものの,特性的には,110W+110W(8Ω)の大出力を0.007%(20Hz〜20kHz)という低歪率で
実現していました。このすぐれた特性に大きく貢献していたのが,「ニュークラスA方式」の搭載でした。「ニュー
クラスA方式」は,「シンクロバイアス回路」を核としたスイッチング歪みを解消した一種のノンスイッチング方式
で,+側の信号が入ったときは増幅作用を停止している−側の出力段に,−側の信号に対しては+側の出力
段に一定のバイアス電流を与え,出力段を信号の有無にかかわらず常時起動状態にしておき,トランジスタを
ノンカットオフとする可変バイアス方式でした。さらに,信号経路とバイアス電流が独立しているため,出力トラン
ジスタが常に適切な動作点をキープし,波形を切換える高速応答ダイオードが理想の二乗特性に近い合成伝
達特性をもつことで,クロスオーバー歪みも解消されていました。
SU-V10と同様に,出力トランジスタと電源部を一体化して最短距離で結び,電磁波による高域の歪を極少レ
ベルに抑えた「コンセントレーテッドパワーブロック」が採用されていました。

フォノイコライザーは,初段に低雑音デュアルFETの差動増幅回路を採用し,MM/MCとも入力コンデンサー
のないICLイコライザーとなっていました。MCに対応した低雑音・ハイゲインのイコライザーとなっていて,スイ
ッチ一つでゲインを切り換えて対応できるようになっていました。

電源部は,電源トランス,整流・平滑回路をL・R完全に独立させた,2トランスL・R独立型2電源で,十分な電
力容量が確保されていました。電源トランスは,コイルを特殊樹脂の中にフロートさせてシールドケースに収納
した構造で,機械振動が少なくシールド効果も高い,高S/Nのトランスとなっていました。

機能的には,オーソドックスながら,サブソニッククフィルター,ハイフィルター,ミューティング(−20dB),ラウド
ネスとプリメインアンプとして主な機能は過不足なく備えられていました。トーンコントロールは,トレブル,バス
に加えてスーパーベースが備えられていました。スーパーベースコントロールは,ターンオーバー周波数が75Hz
150Hzに切り換えられる,より低域をコントロールできるトーンコントロールで,バスコントロールと併用すること
で,スピーカーの低域特性の補正や,低域のブーミング現象の解消などに利用できる機能でした。

以上のように,SU-V8は,プリメインアンプとしては中級機のトップモデルといった1台で,上級機やセパレート
アンプで開発された技術を投入し,コストパフォーマンスの高いモデルとなっていました。しっかりした出力段の
構成に支えられ,クリアながら歪み感の少ない余裕のあるバランスのとれた音をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



スイッチング歪0,クロスオーバー歪0の
ハイクオリティパワー
突き抜けるようなジェット感覚の音です





●SU-V8 主な定格●


(tuner,aux→SP out総合特性)

実効出力
110W+110W(20Hz〜20kHz,8Ω,0.007%)
全高調波歪率
0.003%(20Hz〜20kHz,定格出力−3dB)
TIM 測定不能
出力帯域幅
5Hz〜100kHz(THD,0.02%)
周波数特性
(ストレートDC)
 DC〜20kHz(+0,−0.1dB)
 DC〜150kHz(+0,−3dB)
SN比(IHF-A)
106dB(ストレートDC)
残留雑音
550μV(ストレートDC)
ダンピングファクタ
60(8Ω)
負荷インピーダンス
main or remote :4Ω〜16Ω
main and remote:8Ω〜16Ω


(その他の特性)

入力感度/入力インピーダンス
phono MM:2.5mV/47kΩ
phono MC:170μV/47Ω
tuner,aux,tape:150mV/47kΩ
phono SN比
phono MM:88dB
phono MC:71dB(250μV入力)
phono周波数特性
20Hz〜20kHz,RIAA±0.2dB
シェルビングトーン
treble(20kHz)±10dB,bass(100Hz)±7dB
super bass(12dB/oct)30Hz±12dB
ターンオーバー周波数 treble:2kHz
bass:500Hz
super bass(12dB/oct):75Hz,150Hz
フィルタ
high:7kHz(−6dB/oct)
subsonic:20Hz(−12dB/oct)
ラウドネスコントロール
(VR −30dB)
+7dB(50Hz)
ミューティング
−20dB


(総合)

電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
260W
外形寸法
430W×153H×395Dmm
重量
15.7kg

※本ページに掲載したSU-V8の写真,仕様表等は,1980年4月の
 Technicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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