「classAA回路」を採用したパワーアン
プ部を支える電源部も強力なものが搭載されていました。電源トランスは
300VAという大容量で,巻線には無酸素銅線を使用したものでした。独自の完全整列巻線法により高密度・極
太巻線を実現し,同じ断面積中に従来比1.4倍ものコイルを巻くことが可能となり,同クラスのコアサイズのもの
に比べ,ひとまわり大きな容量を実現していました。この電源トランスを支える部分は,重量級鉄製シャーシの上
に5mm厚,1kg強の鉛合金トランスベースとゴムベースを重ねた三層構造が採用され,振動を効果的に吸収し
歪みの発生を抑えていました。
さ
らに,新開発のハイスピードキャパシタを4基搭載し,6,800μF×4=27,200μFもの容量が確保されてい
ました。大容量の電源トランスとともに強力な電源部を構成していました。このハイスピードキャパシタは,バイオ
テクノロジーにより,純度を2桁以上も向上させた新電解液を開発,使用することで,不純物の電極への付着に
よる音のヨゴレを取り除いたものでした。そして,電極,セパレータに関しても,高純度・低歪率アルミ箔を高張力
で固く巻く構造をとることで,高周波インピーダンスを改善し,オーディオ低域特性を向上させるとともに,振動の
防止,ノイズの低減も実現していました。
強力な電源部に支えられたパワーアンプ部は,120W+120W(20Hz〜20kHz,6Ω,0.005%)の高出力
と,0.002%(20Hz〜20kHz,定格出力−3dB)の低歪みを実現していました。
プリ部への電源には,新開発のEAS(Extended Active Servo)電源を搭載していました。これは,SU-A200
で開発されたアクティブサーボ電源を応用したもので,電流の安定供給を実現するものでした。そして,アースポイ
ントをパワーアンプ電源部と完全に分離してパワー部の大電流の影響を排除していました。このEAS電源は,車
載用のバッテリー以上の電圧安定性と,従来電源より約70dBも改善された高S/Nを確保していました。
フォノイコライザーアンプにも「classAA回路」が採用され,大電流供給能力を持つSEPP出力段構成の電流ドライ
ブアンプの搭載により,出力信号がRIAA素子のインピーダンス変動にも影響を受けず,理想のAクラス状態での
電圧増幅が実現されていました。さらに,デュアル超低雑音FET差動増幅,カスコード付初段のハイスルーレイト構
成が採用され,MM88dB(2.5mV),MC72dB(250μV)の高S/N比が実現されていました。
入力系は,当時,CD,ビデオ等,多様化してきたソースに対応して,7系統の入力が装備されていました。PHONO
TUNER,CD,AV1,AV2,TAPE1,TAPE2の7系統で,AV2は,フロントパネルにも端子が設けられ,スイッチ
フロント/リアの切換ができるようになっていました。7系統の入力切換は,マイコン制御の電子セレクタが採用され,
軽快な操作性と低歪みを実現していました。CD入力は,CDダイレクトスイッチが装備され,ダイレクトにすることで
入力信号が,多くの信号が集中するインプットセレクタを介さずに,トーンアンプに直結されるようになっていました。
さらに,グラフィックイコライザー等の接続に対応した外部機器接続端子が装備されていました。この端子は,スイッ
チの切換え一つで,TAPE3端子としても使えるようになっていました。レックセレクタも装備され,インプットセレクタ
で選んだソースとは別のソースをTAPE1またはTAPE2に録音できるようになっていました。そして,TAPE3には,
レックセレクタとは無関係に,インプットセレクタで選んだソースが録音できるようになっており。同時に2つの別の
ソースの録音が可能となっていました。
ボリュームには,表面を鏡面上に平滑化した新抵抗体と,金メッキを施した多接点ブラシを採用した低歪・低雑音の
PCLボリュームが搭載されていました。
スピーカー端子は,極太のケーブルもつなげる大型の端子が装備され,電源コードには無酸素銅を使用した極性表
示付きのものが採用されていました。
以上のように,SU-V80は,テクニクスらしく,理詰めで設計された高性能,高機能なプリメインアンプでした。歪み感
の少ない滑らかでクリアな音もテクニクスらしさを表現していました。しかし,当時798戦争のまっただ中に登場した
こともあり,他の798アンプに比べて重量も軽い(!)などのためか,その性能や中身に比しても,地味な印象の1台
となってしまったのは否めませんでした。