Ｖｉｃｔｏｒ　ＳＸ-３１１
２ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥３５，０００

１９８８年に，ビクター（現ＪＶＣケンウッド）が発売したスピーカーシステム。ビクターは，古くから家庭用
のすぐれたスピーカーシステムを作っていたブランドでしたが，１９７０年代には，ソフトドームユニットと
ドイツ・クルトミューラー社製コーンを使用したＳＸ-３シリーズで評価を高めました。時代を経て，ソフト
ドームユニットを搭載した新しいＳＸシリーズともいえるモデルとして発売されたのがＳＸ-３１１でした。

ＳＸ-３１１は，基本的には，ソフトドームトゥイーターとパルプコーンウーファーによる２ウェイ密閉形の
スピーカーシステムで，名器ＳＸ-３を継承したともいえそうな内容を持つものでした。ＳＸ-３と比べると
スケール的にはユニットもエンクロージャーサイズもやや小型となっており，コンパクトで手ごろな価格
のスピーカーでありながらしっかりした内容を持つ１台でした。



ウーファーは，２０ｃｍ口径のコーン型で，ドイツ・クルトミューラー社製のコーンを採用していました。原
点回帰ともいえるこのコーン紙は，軽さにこだわった設計により，クリアな低音再生を可能にしていまし
た。駆動系には，磁力の強いアルニコマグネットを採用し，つぼ型ヨークを採用した強力な駆動力は，
微細な信号の入力にもすぐれたレスポンスを実現していました。



トゥイーターは，３ｃｍ口径のソフトドーム型で，ウーファーと同様に，ドイツ・クルトミューラー社製のダイ
アフラムを使用していました。軽さにこだわった振動系により，小入力時から高い分解能を実現しつつ，
響きの良い軽やかな高音再生を実現していました。

エンクロージャーは，不要な振動を抑えつつ，エンクロージャー自体の響きとスピーカーユニットのハー
モニーを融合させようとする設計が行われていました。素材には，適度な振動減衰特性をもつ，音のい
い針葉樹系の高密度材を厳選して使用し，組み立てには，約１トンの高圧で６面全部を瞬時に結合す
る独自の高速高圧組固め工法を導入していました。接合面に高い強度をもたせながらバッフル面の美
しい響きを実現していました。
エンクロージャーの仕上げは，暖かみのあるウォルナット・オープンポアの雰囲気を漂わせた落ち着き
のある木目調となっていました。背面も同様の仕上げとして，部屋のどんな場所にも置けるようにしてい
ました。
エンクロージャー内の吸音材には，１００％ウールの素材を採用し，振動によるノイズの発生を抑え，ＳＮ
比のよい透明感のあるクリアな再生を実現していました。

ユニットの配置は，コンピューターで各スピーカーユニットの最適取付位置を設計するサウンドインテン
シティ法（単位面積を単位時間に通過する音のエネルギーを調べる手法）で，Ｇラインユニットレイアウ
トを採用していました。また，バッフル面の角の回折効果を抑えるスーパー楕円バッフルの採用で，指
向性の改善を実現していました。
さらに，オプションで，専用の置き台（ＬＳ-３１１・￥２０，０００　２本１組）が用意されており，フォルムの
面でも音の面でもすぐれたマッチングが図られていました。

以上のように，ＳＸ-３１１は，手頃な価格帯ながら，名器ＳＸ-３の小型・新技術版ともいえる設計で，雰
囲気の良いバランスのとれた音は，サイズを感じさせないしっかりしたものでした。すぐ後に発売された
よく似たイメージのＳＸ-５００シリーズの陰に隠れてしまったせいか，今一目立たないモデルとなってし
まいましたが，音楽再生に使いやすい１台でした。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

音と暮らす耳へ。
ここちよいレベルでも，
ハッとするリアリティを失わない
ソフトドームとアルニコのハーモニー。

◎小入力時にも密度の濃い中域，豊かな
　低域を実現するつぼ型ヨークのアルニコ
　マグネット採用のウーハー。
◎西独クルトミューラー社製の振動板を，
　全ユニットに採用。
◎強固で美しい響きが得られる針葉樹製
　キャビネット。
◎背面まで美しい木目フィニッシュ。
◎豊かな音楽の表現力を実現する
　新Ｇラインユニットレイアウト。
◎Ｓ/Ｎ感の良い１００％ウール吸音材。
◎トータルデザインを考慮した専用置台
　（ＬＳ-３１１）も用意。

●主な仕様●

※ 本ページに掲載したＳＸ-３１１の写真・仕様表等は，１９８８年
　３月のＶｉｃｔｏｒのカタログより抜粋したもので，ＪＶＣケンウッド株
　式会社に著作権があります。したがって，これらの写真等を無
　断で転載，引用等をすることは法律で禁じられていますので
　ご注意ください。

★メニューにもどる　　　　　　 　
 

★スピーカーのページ１０にもどる
 
 

現 在もご使用中の方，また，かつて使っていた方。あるいは，思い出や
印象のある方，そのほか，ご意見ご感想などをお寄せください。

↓
k-nisi@niji.or.jp