Victor
SX-521
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥57,700
1988年に,ビクターが発売したブックシェルフ形スピーカーシステム。型番から見ると
SX-511
の後継機という感じですが,設計思想的には大きな変化が見られた1台でした。
SX-3が有名な
SXシリーズは,ソフトドームユニットを生かしたバランスの取れた音が特徴としてあげられますが
SX-511では,突如クロスカーボン,アモルファスダイヤモンド蒸着チタンなど,ハードな素材を
全面的に採用して大きく方向を変えたモデルとなっていました。そして,このSX-521では再び
パルプコーン,ソフトドームといったユニットに回帰し,デザイン的にもSX-3のイメージを想起さ
せるものとなっていました。
ウーファーは,口径31.5cmのコーン型で,ビクターのSXシリーズの伝統の,ドイツのクルトミュ
ーラー社製のパルプコーンを採用していました。
スコーカーは,12cm口径のコーン型で,こちらにもクルトミューラー社製のパルプコーンが採用
されていました。スコーカーの磁気回路には,アルニコマグネットが使用されていました。強力な
磁気回路内の背圧を排除するために,ポールピースに穴を設けられるリング型のアルニコマグ
ネットが使用されていました。
トゥイーターは,3.5cm口径のソフトドーム型で,絹製のダイアフラムを採用していました。さら
に音速,剛性,気密性などの向上を図るために,羽二重の絹に薄膜ゴムをラミネートした構造
になっていました。
キャビネットは,針葉樹の高密度材を厳選して使用し,響きがよく剛性の高いキャビネットとして
いました。フロントバッフルは,接着点すべてに杭(クリート)を配してガッチリ取り付ける,フロント
クリート方式が採用され,さらにキャビネット組み立て時に,1トンもの高圧で6面全部を結合する
高速高圧組固め工法が導入され,頑丈なキャビネットとしていました。
ユニット配置は,最適取り付け位置をコンピューターで設計した新Gラインユニットレイアウトとして,
スーパー楕円バッフルとともに,優れた指向性を実現していました。
入力端子は,ウーファーとスコーカー&トゥイーターの入力を独立させたバイワイヤリング対応入
力端子が搭載されていました。また,高・中・低域のネットワーク素子は相互干渉を抑えるように
配置され,配線接続部にはハンダを使わずカシメ接続され,接着剤で密封されていました。
以上のように,SX-521は, ソフトドーム+クルトミューラーコーンというSXシリーズの原点に帰っ
たかのような設計で,分解能よりもバランスの取れたしなやかな音になり,音楽を気持ちよく聴け
る方向を目指した1台となっていました。