Victor SX-55
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥56,000
1977年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。ビクターは,1972年にSX-3を発売し,斬新なデザインと
バランスの取れた音で広く人気を博した後,SX-5,SX-7・・と,「SXシリーズ」を開発・発売し,モデルチェンジ
しながらロングセラーのシリーズを作り上げていきました。そんな「SXシリーズ」登場から6年目,開発のスタート
からは8年目のこの年に,新たに発売された「SXダブルナンバーシリーズ」の第1弾がSX-55でした。
SX-55は,SX-3Vと同時期の製品で,SX-3以来の「SXシリーズ」伝統の技術・KDUコーンウーファー,ソフト
ドームユニットなどを継承しつつ,より新しい音を求めた設計となっていました。そのため,外観上もかなり印象の
異なるものとなっていました。
トゥイーターは,3cm口径,スコーカーは6cm口径で,双方とも「SXシリーズ」の特徴を継承したソフトドームユニ
ットが搭載されていました。ソフトドームのダイアフラムは,蓄積されたノウハウを生かし,ドームの特殊織布基材
から再検討した新設計のもので,応力歪みのない成型法により均一な半球形が維持されるように成型されてい
ました。粘弾性の含浸剤にも改良を加えて固有共振が少なく,しかもいっそう強靱な弾力性をもった広指向性の
ダイヤフラムが形成されていました。
駆動系は,高磁束密度の大型磁気回路や,スコーカーとトゥイーターとでボビンの素材を使い分けた高耐入力ボ
イスコイルなどが搭載され,新設計のソフトドームダイヤフラムを生かす設計となっていました。
文字どおり柔らかでしなやかな半球状のダイヤフラムが音を出すソフトドームユニットには,それ自体の固有共振
が少なく,バッフル面から突出したドーム形状により前方180度無指向に近い均一放射が可能となるなど,すぐれ
た特長を持っています。こうした特長を生かすために,ユニット前面に,プロテクターを兼ねた6本の頑丈なフィンを
もつアルミ・ダイキャスト製,ディフィニション・イコライザーが装備されていました。音響透過率が100%に近いこの
イコライザーは,ドーム中央部のわずかな位相差を整合して音像を引き締め,同時に拡散性を高めるディフューザー
としても働くようになっていました。
ウーファーは,30cm口径の西独クルトミューラー社製KDUコーンが搭載されていました。5個のコニカルドームを
付加し,30cmという大口径のウーファーのハンディとされる分割共振を抑えたウーファーユニットでした。センター
部分はフェルトキャップが採用され,中音域のレスポンスやトランジェントが高められていました。
3ウェイ構成のユニットを搭載したエンクロージャーは,SXシリーズ伝統の密閉方式で,水平指向性を重視して,ウー
ファーとソフトドームユニットを縦方向に一直線に配置したインライン配置がとられていました。フロントバッフルには,
振動減衰特性の素直な北米産針葉樹ダグラスファーが採用され,ランバー・コア構造(集成材を芯材として単板を両
面に貼り合わせていった構造)として,ムク材のメリットを生かす設計となっていました。内部の響棒や吸音材にもSX
シリーズ伝統のノウハウが生かされていました。エンクロージャーの表面上げは,明るい色調のスカンジナビアン・オー
ク調仕上げ(SX-55N)と落ち着いた色調のローズウッド調仕上げ(SX-55R)の2種類が用意されていました。
ネットワークは,最新の低損失コンデンサーを導入するとともに,コイルにも細かな改良が加えられていました。ケイ素
鋼板コアの構造を再検討して,ラミネート効果を高めたコイルと空芯型のコイルを使い分け,電流歪を一段と低減して
いました。
以上のように,SX-55は,SXシリーズの新しい展開として,伝統の技術を継承しつつ,より新しい方向性を目指した1
台でした。中域がしっかりと出る力強さを加えた音は,それまでのSXシリーズの穏やかな音とはまた異なった魅力を
示したものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



超えて伸びやか
ound epansive
SXにニューファミリー誕生。

◎8年間のノウハウを投入,
 エクスパンシブなニューサウンド。
◎クリアー&エクスパンシブ,
 新設計ソフトドーム・ユニット。
◎位相整合と音像収束,
 ディフィニッション・イコライザー。
◎質感と量感のKDUコーン・ウーハー,
 非対称配置コニカル・ドーム付き。
◎水平指向性重視設計,
 3ユニット垂直軸上配置。
◎美しい響きのダグラスファー材
 ランバー・コア・フロント・バッフル。
◎低歪率,高耐入力ネットワーク。




●SX-55型規格●

型式 3ウェイ密閉型
スピーカーユニット 30cmKDUコーン
6.5cmソフトドーム
3cmソフトドーム
最大入力 80W(ミュージックパワー)
再生周波数帯域 25〜20,000Hz
インピーダンス 4Ω
出力音圧レベル 91dB/W(1m)
クロスオーバー周波数 700Hz,5,500Hz
レベルコントロール 定抵抗連続可変型
寸法 640H×360W×325Dmm
重量 19.0kg
※本ページに掲載したSX-55の写真,仕様表等は1977年6月
 のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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