MICRO SX-555FVW
ARM LESS PLAYER SYSTEM ¥258,000
1984年に,マイクロが発売したプレーヤーシステム。マイクロがアームレスプレーヤーシステムと
称しているように,トーンアームを装備していないプレーヤーシステムで,つまりターンテーブルシス
テムといえるモデルでした。マイクロは,前年の1983年に,超弩級ターンテーブルシステムSZ-1
で,空気の力によりターンテーブルを支える「エアーベアリング方式」とディスク吸着を同時に実現
する,世界初の「真空2重構造ターンテーブル」を開発し,搭載していました。この技術をより身近
(といっても高価ですが・・・。)な機種に展開したのがSX-555FVWでした。

当時のマイクロでは,トップモデルとして超弩級機のSZ-1,プレーヤーシステムとして中級機の
ラインナップ,SX-777FV,SX-111FV,SX-555FVWといった3桁の型番の「PEGASUSシ
リーズ」,BL-99V,BL-91,BL-77,BL-10XBといった2桁型番の「CASSIOPEIAシリーズ」
が展開されており,SX-555FVWは,「PEGASUSシリーズ」の中の末弟にあたる機種でした。

SX-555FVWという型番のFはFloat(フロート=浮く)の意味で,ターンテーブルがシャーシから
浮き上がり,スムーズな回転を実現するもので,1979年にマイクロが開発した方式で「エアーベ
アリング方式」
と称していました。「エアーベアリング方式」は機械的摩擦やノイズの原因となる機
械的ベアリングを廃し,中央部からターンテーブル周囲に向かって放出される空気によってできる
わずか30μ(3/100mm)の空気の膜によってターンテーブルがベースから浮き上がり,スムー
ズな回転を実現するというもので,マイクロの精密な金属加工技術が実現したものでした。ターン
テーブルの裏側の精密な加工に加え,30μの空気層を支えるシャーシは,きわめて高い平面性
が必要となるため,ゆがみの少ないガラス製となっていました。そして,フローティングのための空
気の吹き出しの仕組みは,直接エアーが送り込まれるのではなく,SZ-1同様に,キャビネットを
密閉構造とし,内部をエアーチャンバーとして吹き出す仕組みとなっていました。これにより,キャ
ビネット内部は高圧のエアーチャンバーとなっており,キャビネット自体の制動効果も高められて
いました。



SX-555FVWの型番のVは(Vacuum=真空吸引機)の意味で,レコードをターンテーブルに吸
着するバキューム吸着システムが搭載されていることを表していました。レコードのソリを修正で
きることに加え,レコードと重量級のターンテーブルが完全に一体化され,レコード自体の固有共
振が除去され,音溝の情報をより正確に拾うことが可能となっていました。吸着は常時吸着型で,
演奏中のレコードの浮き上がりは皆無に抑えられるとともに,レコードを交換するときには,吸着
スイッチOFFで逆噴射エアが働き,レコードが一瞬で浮き上がり,簡単にレコードの取り外しがで
きるようになっていました。
フローティング及び吸着のためにエアポンプユニットRP1100が付属していました。機械的振動
やノイズの点でも充分低く抑えられ,レコード演奏の邪魔にならないものとなっていました。ボタン
一つでフローティング,吸着,逆噴射ができるようになっていました。



SX-555FVWの型番のWは上述の「真空2重構造ターンテーブル」を表したものでした。2重構
造の名の通り,アンダーターンテーブルとアッパーターンテーブルの2つのターンテーブルを組み
合わせた構造となっていました。アルミ製のアンダーターンテーブルは,ちょうど従来のターンテ
ーブルを裏返しにセットしたような状態になっており,平面研磨された底面全体がフレーム上の
ガラス面にぴったりと密着し,動作時にはその部分が約30μの空気層でフロートされるように
なっていました。砲金製のアッパーターンテーブルは,レコード盤を載せる面であり,レコード盤
吸着の役割を持ち,アンダーターンテーブルにふたのような形で取り付けられ一体化することで
ターンテーブルの内部にできる空間が吸着用のチャンバーとなっていました。したがって動作時
には,ターンテーブル内部が真空に近い低圧状態になるため,共振を抑える効果もありました。
さらに,砲金製のアッパーターンテーブルとアルミ製のアンダーターンテーブルを一体化させた
共振周波数の異なる異種金属の結合でも共振が抑えられていました。

駆動方式はベルトドライブで,駆動モーターには,FGサーボDCモーターが搭載されていました。
アッパーターンテーブル4.5kg,アンダーターンテーブル3kgで合わせてターンテーブル全体で
重量7.5kg,慣性質量1.0ton・cm2という重量級のものとなり,極太の高剛性シャフト,エアー
ベアリング方式とあいまって安定した滑らかな回転を実現していました。

プレーヤーシステム全体は,すでに同社のプレーヤーに採用されていた,クアドロプレックスサス
ペンションが装備され,しっかりとハウリングマージンが確保されていました。このサスペンション
は,空気とオイルの粘性抵抗によるダンパー,特殊構造のゴム,円錐状金属スプリングと,それ
ぞれ固有共振の異なる4種の材料を組み合わせた構造により,広帯域にわたる振動減衰特性
を実現し,上下左右,前後方向の外部振動を除去できる構造となっていました。

以上のように,SX-555FVWは,マイクロの中級機の一角として,最上級機SZ-1の技術をしっ
かりと生かしつつ,コストパフォーマンスを高めた設計となっていました。オーソドックスな使いや
すいデザインにこめられた数々の技術は,アナログディスク再生の理想を求めたものでした。
SZ-1には安定感では及ばないものの,滑らかで厚みのある再生音はこのモデルならではのも
のでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



あらゆる振動を断ち切る
複合型2重構造真空ターンテーブル

◎SZ-1Tの設計思想を受け継ぎ,無共鳴
 無共振を実現。




●SX-555FVWの規格●

駆動方式  ベルトドライブ方式 
モーター FGサーボDCモーター
回転数 331/3,45rpm 2スピード
速度微調整範囲  ±3% 
回転ムラ  0.025%以下(WRMS) 
SN比  60dB以上(JIS) 
軸受形式 エアーベアリング方式
ターンテーブル形式 複合型2重構造真空ターンテーブル
7.5kg(上:砲金製4.5kg,下アルミ製3kg
慣性モーメント  1.0ton・cm2 
レコード装着方式  レコード吸着方式 
電源 AC100V(50/60Hz)
消費電力 5W
外形寸法 532W×440D×193Hmm
総重量 20kg




●付属エアーポンプ・RP-1110●

電源  AC100V(50/60Hz) 
消費電力  10W 
外形寸法  200W×360D×217Hmm 
出力エアー  エアーベアリング用1系統,バキューム用1系統
逆噴射用1系統 
重量  6.3kg 
※本ページに掲載したSX-555FVWの写真・ 仕様表等は
1984年3月のMICROの
カタログより抜粋したもので,
マイクロ精機株式会社に著作権があります。
したがって,
これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で
禁じ
られていますので,ご注意ください。
 
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