Victor SX-700
SPEAKER SYSTEM ¥75,000
1989年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。ビクター初のトールボーイ型のシステムで,AV用途も考慮さ
れたシステムでしたが,純オーディオシステム用としても,高いクオリティを持っていました。型番からも分かるとおり
新しいSXシリーズの一員として発売された中級機でした。
見た目は,3ウェイのトールボーイ型のフロア型システムという感じですが,実際には,トゥイーター,ミッドバス,そし
てサブウーファーによって構成された,密閉型2ウェイ+サブウーファーという形で,音場再現性と低域再生を両立
させようとした設計でした。
トゥイーターは,3.5cm口径のソフトドーム型で,振動板には,一眼レフカメラのシャッター膜にも使用されている羽
二重の絹に薄膜ゴムをラミネートした構造のシルクドームが使用されていました。ソフトドームでありながら音の立ち
上がりがよく,指向特性にすぐれたユニットとなっていました。
ミッドバスユニットは,18.0cm口径のコーン型で,適度な内部損失と巧みな音の伝達性を実現した,西ドイツ・クルト
ミューラー社製のコーティングコーン紙が採用されていました。
サブウーファーは,20cm口径のコーン型で,軽く,硬く,音の伝達がよいクロスカーボン振動板が採用されていました。
そして,トゥイーター,ミッドバス,サブウーファーの3つのユニット全てに,アルニコマグネットの内磁型磁気回路が駆動
系として採用されていました。強力なアルニコマグネットによる内磁型であるために,高磁束,低漏洩で,駆動力が高く
リニアリティにすぐれた再生能力が実現されていました。
低域の量感を生むサブウーファーは,音の厚みや迫力を生む一方,キャビネット内で共鳴を起こし,中・高域のユニット
への悪影響の恐れも出てくるため,キャビネット全体を高さ958mmのトールボーイスタイルとして上で,サブウーファー
用のキャビネットを内部で独立させ,ミッドバスとトゥイーターの2ウェイ用のキャビネットとサブウーファー用のキャビネッ
トを強固なセパレートボードで仕切った分割構造となっていました。これにより,大容量キャビネットとしての特性をその
ままに,音質的にもクオリティを保持することがねらわれていました。トールボーイ形状により,スペースファクターも向
上し,音像的に中心となるミッドバスユニットが,大画面ディスプレイの中心点に近く位置するため,AVスピーカーとして
も使いやすいものとなっていました。さらに,カラ松合板と針葉樹系高密度パーティクルボードを貼り合わせた27mm厚
のフロントバッフルの採用により,響きの美しさと音場の広がりを実現していました。また,リアの入力端子は,バイワイ
ヤリング対応のものが搭載され,マルチアンプ駆動も可能となっていました。
以上のように,SX-700は,
SX-3シリーズ,
SX-500シリーズなどのSXシリーズで培ってきた技術やノウハウを投入
して作り上げたトールボーイ型で,よりワイドレンジをめざすなど,意欲作でした。しかし,
SX-900,SX-500などの陰
に隠れた感じで,地味な存在となっていたきらいがありました。バランスのとれたよりスケールアップした音は,音楽観
賞用にも,AV用にも使いやすいものでした。