Victor SX-9000
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥900,000
1999年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。ビクターの歴代スピーカーの中でも最高級品ともいえるスピーカー
システムで,その作りはエンクロージャーを中心に,工芸品ともいえる贅沢なものでした。木工技術にすぐれたものをもっ
ていたビクターならではのスピーカーシステムでした。
SX-9000の最大の特徴は,その贅沢ともいえるエンクロージャーにありました。通常のスピーカーシステムのエンクロー
ジャー(キャビネット)は,コスト面,ソリや変形の問題などで,パーティクルボードや合板,MDFなど,人工的に接着剤で
固められた形の材質で作られていますが,SX-9000のエンクロージャーは,紫檀の無垢材が使用されていました。紫
檀は,きわめて高価で硬く,加工が難しいが,乾燥した状態では寸度も安定するため,一部の高級家具や彫刻材などに
用いられる材料です。比重がほぼ1にもおよぶ(水に沈むこともあるそうです。)強靱なこの木材をフロントバッフルボード
天板,側板,底板に用い(裏板のみ突き板貼りパーティクルボード)て,テーパー・キャビネットに仕上げ,重厚で気品あ
る外観と音質をもつエンクロージャーを実現していました。試作キャビネットは数十本を数えたそうで,くっきりとした音像
定位と豊かで明るい音を実現していました。エンクロージャーそのものの型式はバスレフ型で,ポートはリアに設けられ
ふたつあるポートは,微妙にチューニングが変えられて低域ののびとレスポンスのバランスがとられていました。
ウーファーは,22cm口径のコーン型で,ビクターらしくドイツのクルトミューラー社製ペーパーコーンで,駆動点をセンター
からずらすことで共振を分散し,高域側の減衰特性を滑らかにした,ビクター独自のオブリコーン方式が採用されていまし
た。センターキャップには,アルミキャップに純金プレーティングを施したものが採用されていました。
駆動系は,ボイスコイルが口径65mmで,磁束密度12000ガウスのアルニコマグネットよる強力な外磁型磁気回路が備
えられていました。SX-500DOLCEで開発された,高精度・高リニアリティを求めたスパイダーサスペンションも採用され,
Qが1.7と非常に低くオーバーダンプ型のウーファーとなっており,強力な駆動系と軽質量の振動板とあいまって反応の
鋭敏な低域再生をねらった設計となっていました。
スコーカーは,14.5cm口径のコーン型で,純金プレーティングを施したアルミコーンが採用されていました。ウーファー同
様にオブリコーン方式が採用され,滑らかな音のつながりが確保されていました。駆動系には,アルニコマグネットの内磁
型磁気回路が搭載され,ウーファー同様にスパイダサスペンションが採用され,反応の良い中域再生がねらわれていまし
た。4オクターブ以上の帯域を受け持ち,フルレンジ的な性格を持った重要なユニットとなっていました。
トゥイーターは,19mm口径のドーム型で,純金プレーティングを施したアルミダイアフラムが搭載されていました。位相補正
や放射特性を考慮してバッフル面からやや奥まった位置にマウントされていました。再生周波数は80kHzにもおよぶ広帯
域を実現していました。
SX-9000は,3ウェイのフロア型スピーカーですが,フルレンジユニット搭載のスピーカーのような鳴り方を求めた設計で,
バッフルには,厚さ1cmにおよぶ真鍮を素材としたユニフレーム構造が導入されていました。各ユニットを極限まで近づけて
このフレームに強固にマウントし,自然な音場再生をねらっていました。同時に,共振分散のためのリブを設け,前6本,後ろ
8本もの強固なネジ止めによりエンクロージャーに固定され,音像密度,聴感上のS/Nの向上が図られていました。
ネットワーク回路は,配線に無酸素銅線を使用し,真鍮削り出し,バナナプラグ対応の接続端子が装備されていました。さら
に端子には金メッキが施され,高純度な伝送により微少レベルの特性向上が図られていました。端子は,バイワイヤリング
対応で,ジャンパー線として銀の単線が付属していました。
以上のように,SX-9000は,ビクターが贅を尽くして作り上げたともいうべきフラッグシップモデルでした。フロア型ですが,迫
力やスケール感をねらった音ではなく,ローレベルの音まで美しい,透明感のあるナチュラルな音は,非常に質の高いもので
した。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



技を尽くし,心を尽くし,
ビクタースピーカーの頂点へ。

◎新発想により開発された3ウェイ・ユニット。
◎ユニフレームバッフル採用3ウェイ。
◎無垢紫檀によるテーパー・キャビネット。
◎高純度ネットワークによるピュアな伝送。




●主な仕様●

種類 3ウェイバスレフ型
スピーカーユニット 低音用:22cmクルトミューラー・オブリコーン
中音用:14.5cm金プレーティング・メタル・オブリコーン
高音用:1.9cm純金プレーティング・ピュアアルミドーム
再生周波数帯域 30Hz〜80,000Hz
定格入力(JIS) 45W
最大入力(JIS) 180W
定格インピーダンス 4Ω
出力音圧レベル 89dB/W/m
クロスオーバー周波数 320Hz/6,500Hz
寸法 322W×1071H×395Dmm
重量 45kg
※本ページに掲載したSX-9000の写真,仕様表等は1999年12月
 のVictorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意く ださい。

                        
 

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