SY-77の写真
Aurex SY-77
PRE AMPLIFIER ¥138,000

1976年に,オーレックスが発売したプリアンプ。1970年前後より,オーディオ専業メーカーに加え,家電メーカー
もオーディオブランドを立ち上げ,オーディオ分野に力を入れ始めていきました。テクニクス(松下・現パナソニック)
ローディー(日立),オットー(三洋・後にパナソニックに吸収合併),オプトニカ(シャープ)に続き,東芝は最後発で
オーディオブランドとしてオーレックス(Aurex)を立ち上げ,音響研究所を創設して力を入れていきました。そうした
オーレックスブランドとして初のセパレートアンプのプリアンプとして発売されたのがSY-77でした。

SY-77は,シンプルな回路構成を追求し,シンプルな回路を高品質なパーツで構成するという設計が特徴でした。
これは,当時日本でも高い評価を得ていたアメリカ・マークレビンソン製のアンプ等の影響もあったといわれていま
す。実際,この当時,特にプリアンプのシンプル化,薄型化が各社に見られていました。SY-77は,通常時はトー
ンアンプ回路をジャンプしてイコライザーアンプとフラットアンプを接続するというシンプルな信号の流れになってお
り,必要に応じてトーンONで,トーンアンプが連結され,トーンコントロールが可能となっていました。トーンコントロー
ル等の調整ツマミは,シーリングパネル内に収められ,パネルを閉じた状態では,ペアとなるシリーズに共通したシ
ンプルな外観になるようになっていました。

イコライザーアンプ部は,雑音差動2段・3段直結アクティブロードA級動作回路が搭載され,±70Vの高電圧をか
けることで,600mV(RMS,1kHz)という高い耐入力特性が実現されていました。PHONO-2端子には,負荷抵
抗,負荷容量ともそれぞれ2段階の切替が装備されていました。

フラットアンプ部は,初段カスコード接続・差動2段・純コンプリメンタリー回路が搭載され,出力段はパラレルプッシ
ュプルのA級動作となっていました。
トーンアンプ部は,差動1段を含む2段直結アクティブロード回路が採用され,±2電源方式による低歪率設計となっ
ていました。トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立で,2dBステップのアッテネーター方式が採用されていま
した。
ボリュームは,フラットアンプの前後で調整する4連ボリュームが搭載され,ボリュームを絞ったときの残留ノイズが
抑えられていました。

SY-77のフロントパネル

電源部は,トランスの巻き線を左右独立させたL・Rセパレートタイプとなっており,さらに,イコライザー,フラットアン
プ,トーンアンプにそれぞれ独立した定電圧電源を用いた定電圧6電源方式となっており,相互干渉を抑えていまし
た。電源トランスには,磁束漏れの少ないカットコアトランスを用い,低インピーダンス化が図られていました。

REC OUT端子とPRE OUT端子には,リードリレーが設けられ,電源ON/OFF時のノイズを取り除くとともに,信
号がリレーを通過することでの音質劣化を防ぐために,出力ショート方式が採用されていました。

以上のように,SY-77は,オーソドックスにしっかりと正攻法で作られたプリアンプで,徹底したヒアリングとあわせ
完成した音は癖が少なく純度の高いストレートなものとなっていました。そこには,パーツからしっかりと音を詰めてい
くという同ブランドの思想が表れていたように思います。1台1台にコンピュータによる実測特性表が添付されていた
のも,当時のオーレックスのオーディオに対するまじめな姿勢が表れていました。そして,オーレックスのプリアンプ
はこの後SY-88,SY-99と,よりオーレックスブランドの思想が突き詰められた名機たちへとつながっていくことに
なりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



もうトーン回路で迷わずにすみそうです。
トーン回路の要・不要を使い手が決められる
余地を残したプリアンプ。



●SY-77の主な規格

型式
ステレオプリアンプ
回路方式
イコライザーアンプ:差動2段・3段直結アクティブロード(A級)
フラットアンプ:初段カスコード・差動2段・純コンプリメンタリーパラレルプッシュプル(A級)
トーンアンプ:差動1段・2段直結アクティブロード
入力感度/インピーダンス
PHONO1:2.0mV/47kΩ
PHONO2:2.0mV/47kΩ,100kΩ/20pF,240pF
TUNER,AUX,TAPE1/2:150mV/50kΩ
出力電圧/インピーダンス
TAPE REC:150mV/3.3kΩ
OUTPUT:1.0V/600Ω(50kΩ負荷,定格)
PHONO最大許容入力
600mV RMS(1kHz)
PHONO RIAA偏差
20Hz〜20kHz ±0.2dB
高調波歪率
PHONO:0.012%(1V出力時,1kHz)
       0.004%(3V出力時,1kHz)
       0.002%(10V出力時,1kHz)
AUX   :0.003%(3V出力時,1kHz)
       0.002%(10V出力時,1kHz)
周波数特性
AUX:10Hz〜100kHz+0,−1.0dB
S/N比
(IHF-Aネットワークショート)
PHONO:75dB
AUX   :90dB
トーンコントロール
BASS   :20Hz±10dB(2dBステップ)
TREBLE:10kHz±10dB(2dBステップ)
サブソニックフィルター
10Hz(12dB/oct)
ミューティング
−20dB
使用半導体
トランジスタ:59個,ダイオード:42個
ACアウトレット
SWITCHED:2系統,400W
UNSWITCHED:1系統,400W
電源
AC100V,50Hz/60Hz
消費電力
26W
外形寸法
450W×93H×379Dmm
重量
9.5kg
別売オプション
キャリングハンドル TO-1(左右1組,¥3,000)


※本ページに掲載したSY-77の写真,仕様表等は1976年のAurexのカタ
 ログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権があります。したがって,
 これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

  
 
 
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