Accuphase T-101
FM STEREO TUNER ¥110,000
1974年に,ケンソニック(現アキュフェーズ)が発売したFMチューナー。トリオ(現ケンウッド)から独立
して発足したケンソニックは,1973年にアキュフェーズブランドでチューナー第1号機T-100を発売し
その高性能を評価されました。それに次ぐ弟機として,同ブランド初のFM専用チューナーとして発売さ
れたのがT-101でした。
フロントエンドは,周波数直線4連FM専用精密バリコンとデュアルゲートMOS型FETを使った高周波
増幅段(RF段)と混合回路(ミキサー段),バッファー付高安定度局部発振回路が組み合わされ,ダイ
ナミックレンジが広く確保され,スプリアス妨害比100dB以上,イメージ比90dB以上という高性能が実
現されていました。
ダイヤルは245mmのロングスケールに250kHzごとの目盛りが設けられ,精度の高い走行機構と組
み合わされ,スムーズなチューニング操作が可能となっていました。
中間周波回路(IF段)は,選択度と低歪率の問題を両立させるために,NORMALとNARROWの2段
切換の可変選択度型が採用されていました。歪を少なくするために新たに開発した10段LC集中型位
相直線バンドパスフィルターと,高選択度ピエゾ振動子フィルターを搭載し,NORMAL時には,直線位
相フィルターのみが働き,隣接妨害があるときのみNARROWに切り換えると,ピエゾ振動子フィルター
が加わり,高選択度特性になり,妨害電波を除去したクリアーな受信ができるようになっていました。
検波回路には,当時一般的なものの約3倍の1,200kHzの帯域を持つ広帯域ディスクリミネーターが
使用され,ステレオ受信時の諸特性が大幅に改善されていました。
ステレオ復調器(MPX段)には,コイル,コンデンサーを一切使用せず,入力パイロット信号の位相とサ
ブキャリア発振器を自動的に同期する,当時最新のPLL(フェーズ・ロックド・ループ)復調回路が採用さ
れ,すぐれたステレオ特性と長期安定性が確保されていました。
シグナルメーターとして,信号強度計,センターチューニングメーターの他に,ダイヤルスケール左端に
マルチパスメーターが独立して設けられ,チューナー単体でマルチパス(反射波,ゴースト)が検出でき,
アンテナの設定が容易にできるようになっていました。
その他,機能的には,ミューティング・スイッチ,ステレオ・ノイズ・フィルター(MPXフィルター),モノ-ステ
レオ切替えスイッチが装備されていました。モノ-ステレオスイッチには,FMステレオ放送のみを受信す
るステレオ・オンリーのモードも設けられていました。
出力端子は,固定出力と可変出力の2組が装備され,可変出力はフロントパネルにOUTPUT LEVEL
ツマミが装備されていました。また,当時想定されていた4チャンネル放送に備えた検波出力端子も用
意されていました。
以上のように,T-101は,アキュフェーズのチューナーとしては,2号機ながら,受信性能と音質,安定
度など,高い完成度を実現していました。現在のレベルで見ても,すぐれた高級チューナーではないか
と思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎高安定度フロントエンド
◎可変選択度中間周波回路
◎広帯域検波回路
◎フェーズ・ロック・ループ・ステレオ復調器
◎独立した反射波(マルチパス)検出メーター
●T-101型保証特性●
●モノフォニック●
感度 | 実用感度 11dBf(2.0μV) S/N50dB感度 18dBf(4.5μV) |
定在波比 | 1.5 |
S/N
65dBf(1mV)入力 |
75dB |
高調波ひずみ率
65dBf(1mV)入力 |
100Hz 0.1% 1kHz 0.1% 10kHz 0.2% SELECTIVITYスイッチNORMAL |
オーディオIMひずみ率 | 0.2% (アンテナ入力65dBf(1mV),100%変調14kHz:15kHz=1:1) |
周波数特性 | 20~15,000Hz(+0,-1.0dB) |
二信号選択度
45dBf(100μV)入力 |
妨害波 SELECTIVITY NORMAL SELECTIVITY NARROW 400kHz 55dB 100dB 300kHz 30dB 75dB 200kHz 6dB 20dB |
キャプチャー・レシオ | 2.0dB |
RF相互変調 | 70dB |
スプリアス妨害比 | 100dB |
イメージ比(76~90MHz) | 90dB |
IF妨害比 | 100dB |
AM抑圧比
65dBf(1mV)入力 |
55dB |
周波数安定度 | ±30kHz |
周波数確度 | ±0.2% |
出力電圧
(100%変調) |
2.0V |
●ステレオ●
感度 | 実用感度 31dBf(20μV) 50dB S/N 38dBf(45μV) |
S/N
65dBf(1mV)入力 |
70dB |
高調波ひずみ率
65dBf(1mV)入力 |
100Hz 0.2% 1kHz 0.2% 10kHz 0.5% SELECTIVITYスイッチNORMAL時 |
周波数特性 | 20~15,000Hz(+0,-1.0dB) |
ステレオ分離度 | 100Hz 35dB 1kHz 45dB 10kHz 30dB |
ステレオ切替入力電圧 | 19dBf(5μV) |
ミューティング・レベル | 19dBf(5μV) |
SCA妨害比 | 60dB |
19kHz,38kHz漏洩 | -70dB |
●その他●
使用バリコン | FM 周波数直線型精密4連 |
出力インピーダンス | 固定出力端子 200Ω
可変出力端子 2.5kΩ |
FMアンテナ入力インピーダンス | 300Ωバランス,75Ωアンバランス |
メーター | 信号強度計,センターチューニング,マルチパス |
電源及び消費電力 | 100,117,220,240V 50/60Hz 消費電力26W |
使用半導体 | 25Tr,2FET,7IC,24Diode |
寸法・重量 | 445W×152H×355Dmm 11.1kg |
※本ページに掲載したT-101の写真,仕様表等は1975年の
Accuphaseのカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
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