ALPINE/LUXMAN T-117
DIGITAL SYNTHESIZED FM/AM/TV STEREO TUNER 
                                  ¥59,800
アルプス電気とラックスが立ち上げたニューブランドALPINE/LUXMANが,1987年に発売したチューナー。
ALPINE/LUXMANブランドは,1984年に発足し,真空管とMOS FETのハイブリッド構成のプリメインアン
プ,D/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプをはじめ意欲的な製品を送り出し,CDプレーヤー,DATデッキ,
カセットデッキ,
さらにスピーカーに至る多くのジャンルの製品群を発売しました。そして,チューナーにもいくつ
かの製品を発売し,その中の最上級機がT-117でした。

ラックスは,チューナーの分野でも早くから製品を出しており,しっかりした技術を持っていましたが,ブランドイ
メージとしてはあまり高い方ではありませんでした。アルプス電気は,バリコンチューナーの時代から,バリコン,
フロントエンド部のパーツなど,チューナーに関するキーパーツを作っていました。そんなアルプス電気とラック
スが提携したブランドが作った意欲作だけあって,チューナーとしてはかなりユニークな内容を持っていました。

フロントエンド部は,高感度のデュアルゲートMOS FETを採用し,ハイボルテージタイプのチューニング用バ
ラクターを4連として,高感度と高選択度の両立を図っていました。
IF部には,低歪みと高選択度を両立する群遅延特性にすぐれたセラミック・フィルターを搭載し,受信状態に合
わせて切り換えられるWIDE/NARROWのIF帯域幅切換も装備されていました。
チューニングの際には,マイコンで直接IF周波数をカウントするIFカウント方式で,FMでは±10kHz以内,AM
では±3kHz以内の高精度で同調することができるようになっていました。



検波段には,電波状況に応じて2つのディテクターを切り換える「オプティマム・ツイン・ディテクター」が搭載され
ていました。そのために,T-117は,パルスカウント検波とPLL検波の両方を搭載していました。パルスカウント
検波は,広い帯域にわたりすぐれた直線性をもつため,にゅうりょく信号を忠実に出力波形に変換させることが
できるという特性をもち,PLL検波は,フロントエンドの局部発振周波数を分周して基準周波数と比較しその差
をフィードバックさせて同調を安定させるため,特に弱電界において有利という特性をもっています。そこで,電
波強度が十分な通常時は,パルスカウント検波のディテクターを使用し,電波強度が弱いときにはPLL検波の
ディテクターに自動的に切り替わるというユニークで贅沢な方式となっており,T-117の最大の特徴となってい
ました。

MPX部には,ステレオパイロット信号と,その高調波成分をキャンセルする,バーディーノイズ・キャンセラーと
パイロットキャンセラーが搭載されており,ローパスフィルター=アンチバーディ・フィルターによる悪影響を避け
フィルター使用時に比べ,高域でのセパレーションと周波数特性を大幅に改善していました。

T-117は,FM部に加え,AM,さらにTV音声のチューナーが搭載されていることも特徴でした。AM部は,サン
ヨー製のAMユニット・LA-1245で構成されていました。TV音声は,この頃,音声多重放送の名称でステレオ
放送も一般化しはじめ,それに対応したものでした。音声キャリアと映像キャリアが混在するIF信号の中から,
音声キャリアだけを取り出して検波する,本格的なスプリットキャリア方式が採用され,映像信号によるバズ音
の発生や混変調による音質劣化を排除し,クリアなTV音声再生を可能にしていました。

チューニングは,マニュアルチューニング,オートチューニング,FM/AM/TVの各局を24局までランダムにメ
モリーできるプリセット・ステーションメモリーが搭載されていました。また,タイマーでON/OFFを繰り返すと,メ
モリーした1~5までの局を順番に呼び出せるタイマープログラム機能が搭載されており,FM/AM/TVとバンド
を超えた多局留守録音が実現可能となっていました。
その他,機能的には,セパレーションを調整してSN比を改善するハイブレンド機能,400Hzの基準レベルを発
振できるREC CALなどが搭載されていました。

以上のように,T-117は,新しい国内向けブランドとして発足したALPINE/LUXMANブランドのチューナーの
主力モデルとして,2種類の検波方式やTVチューナーを搭載するなど,技術的にも非常に特徴的な1台でした。
新しいブランドの新しいチューナーとして,性能面でも機能面でも大変な意欲作であったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



飛びかうメディアを欲しいままに。
新世代のFM/AM/TVチューナー。

◎オプティマム・ツイン・ディテクター。
◎IFカウント方式オートチューニング。
◎高品位TV音声多重チューナー(VHF/UHF)。
◎24局ランダム・プリセット・ステーションメモリー。
◎予約留守録に便利なタイマープログラム機能。
◎バーディーノイズ・キャンセラー&
 パイロットキャンセラー。
◎システムリモコンIO端子。

●IF帯域幅切換(WIDE/NARROW)
●REC CAL(400Hzの基準レベル)
●センターチューニング
●インディケーター
●シグナルストレングス(4ドット)
●ハイブレンド機能




●SPECIFICATIONS●


●FM●

IHF実用感度 8.8dBf
SN比 MONO88dB,STEREO78dB
周波数特性 20Hz~15kHz(±1.0dB) 
歪率 0.04%(MONO),0.05%(STEREO)
選択度  45dB(±400kHz) 
IF妨害比  110dB
イメージ妨害比 80dB
ステレオセパレーション 60dB(1kHz),45dB(100Hz)
出力電圧  700mV 

 
 

●AM●


IHF実用感度 58dB/m
SN比  50dB 
歪率 0.4%
出力電圧 210mV

 

●TV音声●


実用感度(VHF) 16dBf
実用感度(UHF)  20dBf 
SN比  65dB 
歪率(STEREO) 0.5%
出力電圧 210mV



●総合●


消費電力 15W
外形寸法 438W×62H×323Dmm
重量 3.6kg
※本ページに掲載したT-117の写真,仕様表等は1987年9月の
 ALPINE/LUXMANのカタログより抜粋したもので,ラックス株式
 会社,アルプス電気株式会社に著
作権があります。したがって,こ
 れらの写真等を無断で転載・引用
等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。                        

 

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