YAMAHA T-3
NATURAL SOUND FM STEREO TUNER ¥43,000
1978年に,ヤマハが発売したFM専用チューナー。「CT-」という型番から「T-1桁」という型番に移行
した新シリーズのチューナーの2号機で,同じく「A-1桁」シリーズに移行したプリメインアンプA-3との
ペアとなるチューナーでした。
フロントエンドは,高精度周波数直線型ワイドエアギャップ5連バリコンを搭載し,アンテナ入力部と段
間をダブルチューンとしていました。高周波増幅部には,DualゲートMOS FETを採用し,1.8μV
(MONO・84MHz)という高感度と高い妨害排除能力を実現していました。
IF段は,妨害電波の発生などをすばやく検知して,自動的にIF段のモード(LOCAL-DX)を切り換え
るAUTO-DX回路を搭載していました。
比較的妨害の少ない受信状態でのオーディオ特性重視のLOCALポジションでは,新開発のセラミッ
クフィルター2素子を採用し,IFアンプには,インピーダンス変動を抑えるためにバッファアンプを搭載し
リミッタ効果のすぐれたカレントリミッタ付き7段差動増幅器を採用していました。さらに,位相歪補正
回路なども搭載され,選択度は45dBを確保しつつ,SN比84dB(STEREO),歪率0.05%(1kHz)
セパレーション55dB(1kHz)というすぐれた特性を実現していました。
妨害の多い地域での受信に対応するDXポジションのDX-IF段は,LOCAL-IF段にセラミックフィルター
2素子をさらに追加する構成で,実効選択度82dB,歪率0.5%(STEREO)を実現していました。
検波回路には,広帯域レシオ検波が採用されていました。
また,スイッチの切換により,AUTO-DXによる自動切換だけでなく,LOCALポジションへの固定が
可能となっていました。
MPX回路は,HighスルーレイトのDCアンプを基本にヤマハ独自の平均値復調方式のスイッチング
回路にNFBをかけたDC・NFB回路を採用していました。また,パイロット信号キャンセル回路により
オーディオ信号として不要な19kHzのパイロット信号はデコーダーに入る前に除去され,ローパスフィ
ルターのカットオフ周波数が19kHzより高くすることが可能となり,18kHzまで,高域周波数特性を
伸ばしていました。
機能的には,正確にチューニングした場合,ローカルオシレーターの周波数を自動的にホールドする
ATS(Automatic Tuning Hold System)が搭載され,これにより安定した受信が可能となって
いました。その他,弱電界ステレオ受信時のノイズを低減するFMブレンド回路や録音レベルの基準
信号を発信するREC CAL回路,チューニング時のノイズを消すミューティングスイッチなども搭載さ
れていました。
メーターとしては,チューニング中点を表示するチューニングメーターと,入力レベルを指示するシグ
ナルメーターが装備され,シグナルメーターは,ヤマハ独自の妨害検出方式によって,Muting/ATS
OFF時には,マルチパス,フェージングノイズ源等からの妨害を指示の低下やふらつきとして指示で
きるようになった妨害検出型となっていました。
以上のように,T-3は,T-1桁シリーズの2号機として,すぐれた技術が投入され,CTシリーズとは異な
る薄型の筐体はクリーンな美しさをもつヤマハらしいもので,シンプルながら使いやすくしっかりした性
能を持つ1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
Technical
Quality Tuner T-3
素晴らしいオーディオ特性と
新しい次元の音
TシリーズのFM専用機
50dB SN感度 | MONO 3.2μV(15.3dBf) STEREO 38μV(36.8dBf) |
実用感度 (IHF・MONO・84MHz) |
300Ω 1.8μV(10.3dBf) 75Ω 0.9μV(10.3dBf) |
イメージ妨害比(84MHz) | 120dB |
IF妨害比(84MHz) | 100dB |
スプリアス妨害比(84MHz) | 120dB |
AM抑圧比(IHF) | 65dB |
実効選択度 | DX 82dB LOCAL 45dB |
SN比 | MONO 86dB STEREO 84dB |
全高調波歪率 | MONO 100Hz 0.05% 1kHz 0.05% 6kHz 0.08% 10kHz 0.05% STEREO 100Hz 0.05% 1kHz 0.05% 6kHz 0.08% 10kHz 0.1% |
IM(混変調)歪率(IHF) | (LOCAL) (DX) MONO 0.05% 0.5% STEREO 0.08% 1.0% |
ステレオセパレーション | (LOCAL) (DX) 1kHz 55dB 30dB 50Hz~10kHz 50dB 25dB |
周波数特性 | 50Hz~10kHz±0.3dB 30Hz~15kHz±0.5dB 10Hz~18kHz+0.5dB,-3.0dB |
サブキャリア抑圧比 | 65dB |
ミューティングレベル(AUTO DX MODE) | 5μV(19.2dBf) |
AUTO-DX動作レベル | ステレオ時妨害レベル約-50dBにて DX MODE自動切換 |
出力レベル/インピーダンス | |
FM(100%高調) | 1kHz 500mV/4kΩ |
REC CAL信号 (333Hz:FM50%変調に相当) |
250mV/4kΩ |
IF MODE切換(AUTO DX-LOCAL) |
レコーディングキャリブレーター |
FMミューティング,MODE&ATS連動SW |
SIGNAL QUALITY METER |
使用半導体等 | トランジスタ42,IC5,FET1,ダイオード10,ツェナーダイオード2 LED2,セラミックフィルター4 |
ACアウトレット | 1個(300W・MAX) |
定格電圧・周波数 | 100V・50/60Hz |
定格消費電力 | 9W |
外形寸法 | 435W×94H×332Dmm |
重量 | 5.5kg |
↓※本ページに掲載したT-3の写真仕様表等は1977年10月の
YAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
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