ONKYO T-427R
FM STEREO/AM TUNER ¥49,800
1982年に,オンキヨーが発売したFM/AMチューナー。オンキヨーは,スピーカー,アンプなどに強い
ブランドでしたが,チューナーの分野でも,オーソドックスながらしっかりしたチューナーを作っていまし
た。1980年代に入ると,チューナーはシンセサイザー方式が主流となり,オンキヨーも,T-429R
とT-427Rが本格的なバリコン式チューナーとしては最後のモデルとなりました。

フロントエンドは,4連バリコンを搭載し,トリプルチューン構成となっていました。このクラスのチュー
ナーとしては初めて感度2段切換(BOOSTER IN/OUT)が搭載され,受信エリアの違いに応じて
高い妨害排除能力(BOOSTER OUT=direct)と高感度(BOOSTER IN)が選べるようになって
いました。directでは,入力トリプルチューンの後,ダイレクトにMOS FETを使用したミキサーに入
るとともに,局発出力をFETバッファを通してミキサーへ入力させることによって,強入力受信時の
ダイナミックレンジを拡大し,相互変調妨害比100dBという高い妨害排除能力を実現していました。
BOOSTER INでは,デュアルゲートFETを使用したRF増幅が挿入され,高感度受信を可能として
いました。



IF部には,ユニフェイズ・セラミックフィルター1個とセラミックフィルター3個とIF増幅用ICが搭載さ
れ,WIDE/NARROWの帯域幅2段切換が搭載されていました。WIDEでは,ユニフェイズ・セラ
ミックフィルターのみで,40dB(±400kHz)の選択度が確保され,NARROWでは,さらにセラミッ
クフィルター3個が挿入される構成となり,85dB(±400kHz)という高選択度が確保されるように
なっていました。

そして,WIDEでは,FM SERVOの表示があるように,オンキヨー自慢のFM帰還方式が動作す
る仕組みになっていました。FM帰還は,歪み低減のNFB技術をチューナーに導入したもので,検
波器出力信号の一部を,FMサーボ回路を通してフィードバック(帰還)し,局発に内蔵した超低歪
率変調回路で局発信号を変調し,変調信号はミキサーで入力信号とミックスされ,IF信号が取り出
されるという仕組みでした。このFM帰還により,(1)NFB効果で,局発変調回路の歪みを従来の
1/10にまで低減,(2)IFスペクトラム信号帯が大幅に圧縮され,結果としてIF帯域幅が拡大され
たこととなり,IF信号帯は,IF回路の最も位相特性の良い部分だけを通り,低歪率を実現する,
(3)IFスペクトラムに含まれるステレオ分離用の信号もクリアに伝送され,MPX復調器での位相ず
れが抑えられ,セパレーションが向上する,(4)IF回路の広帯域化によって,同調ずれを抑えるサ
ーボロックの効果が高まる,などの効果が実現されるというものでした。

検波部は,クオドラチュア検波回路が搭載され,MPX部には,安定度の高いAFアンプ内蔵・PLL
ICを使用し,セパレーション57dBを確保していました。また,わずかな歪みの発生を抑えるため
安定したPLL・ICに強化フィルターを追加し,全体としての音質向上を実現していました。

最適な受信状態を保つサーボロック方式が搭載され,音質最良点をがっちり保持するようになっ
ていました。同調範囲に入ると,ロックドインジケーターが点灯し,チューニングノブから手を離す
と同時に最適同調点にロックするタッチセンサー・サーボロックとなっていました。
メーターは,シグナル(信号強度)メーター,センターチューニングメーターに加えてデビエーション
(変調度)メーターも搭載された3メーターとなっていました。

AM部は,2連バリコン方式で,IF段には,4素子ラダー型フィルターと2個のインピーダンスマッチ
ングトランスが搭載され,周波数特性,スプリアス妨害の改善が図られた本格的な構成がとられて
いました。また,IF帯域幅はWIDE/NARROWの切換が搭載されていました。さらに,AM部にも
タッチセンサー・サーボロックが搭載され,安定した受信が可能となっていました。アンテナとして,
高感度のAMループアンテナが搭載され,アンテナコイルの振幅特性を急峻にして選択度を高め,
隣接局妨害を抑えていました。

以上のように,T-427Rは,当時のオンキヨーのチューナーの主力モデルとして,前モデルや上級
機のエッセンスを受け継ぎつつ,オーソドックスに作り上げられていました。そして,同社としては
T-429Rとともに,最後の本格派のバリコン式チューナーとして,薄型で優美と感じさせるデザイ
ンも魅力的でした。受信能力にもすぐれ,トリオケンウッドとは傾向の異なる,上品なソフトな音も魅
力あるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



FM多局化時代を先制する
インテグラ・チューナーの代表機。
驚異的低歪率のFM帰還テクノロジーと
贅沢なAM部が光ります。

◎FM帰還方式でひずみ0.009%を達成。
 受信条件に応じてIF帯域幅2段切換。
◎このクラス初の感度2段切換。
 入力トリプルチューン構成。
◎快適なタッチセンサー・サーボロック方式。
◎低歪率PLL・ICのMPX部
◎第3のメータ・デビエーションメータ
◎AM部もタッチセンサー・サーボロック方式。
 広帯域IF2段切換で音質を重視。




定格・仕様
 

●FM部●


 
受信周波数範囲 76MHz~90MHz
アンテナインピーダンス 75Ω
実用感度 (75Ω/IHF) 
    
0.9μV/ 10.3dBf(RF BOOST IN) 
1.75μV/16.1dBf(RF BOOST OUT)
SN比50dB感度 (75Ω/IHF)            2.0μV/17.3dBf 
歪率            WIDE    400Hz      0.009%(MONO)  0.02%(STEREO) 
        50Hz~10kHz                 0.08%(STEREO) 

NARROW 400Hz         0.15%(MONO)  0.4%(STEREO) 
        50Hz~10kHz                   0.6%(STEREO)

SN比 
  (100%変調1mV入力)
84dB(MONO) 80dB(STEREO)
キャプチャーレシオ 1.0dB(WIDE) 2.0dB(NARROW)
2信号選択度(±400kHz離調) IF WIDE     40dB 
IF NARROW  85dB 
ステレオセパレーション    WIDE     1kHz         60dB 
         100Hz~10kHz   50dB         
NARROW  1kHz          45dB 
         100Hz~10kHz   40dB           
周波数特性 2Hz~15,000Hz  +0.2dB -0.8dB
相互変調妨害比(±1MHz/±2.5MHz) 85dB/95dB(RF BOOST IN) 
90dB/100dB(RF BOOST OUT)
イメージ妨害比(83MHz)   90dB(RF BOOST IN) 90dB(RF BOOST OUT)
IF妨害比 (83MHz)       120dB(RF BOOST ON) 100dB(RF BOOST OFF)
スプリアス妨害比  120dB(RF BOOST ON) 110dB(RF BOOST OFF)
AM抑圧比 62dB(IF WIDE) 50dB(IF NARROW)
キャリアリーク -65dB
出力電圧/出力インピーダンス 固定出力(録音出力)  500mV/5.5kΩ  
可変出力         0~800mV/3.6kΩ


●AM部●


 
実用感度 200μV/m(ループアンテナ)
イメージ妨害比/IF妨害比 57dB(1MHz)/42dB(1MHz)
2信号選択度 20dB(WIDE)/45dB(NARROW)
SN比/歪率 60dB/0.3%(WIDE),0.5%(NARROW) 
出力電圧  可変出力 0~260mV
固定出力 150mV 


●その他●


 
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 27W
寸法 435(W)×99(H)×393(D)mm
重量 5.2kg
※本ページに掲載したT-427Rの写真,仕様表等は1983年9月の
 ONKYOのカタログより
抜粋したもので,オンキヨー株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等す
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。   

 

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