ONKYO T-445XX
FM STEREO/AM TUNER ¥43,000
1986年に,オンキョーが発売したFM/AMチューナー。オンキョーは,同社が得意とするプリメインアンプとペアと
なるチューナーにも力を入れ,バリコンチューナーの時代からすぐれたチューナーを作っていました。シンセサイ
ザーチューナーにも早くから取り組み,完成度の高いチューナーを作っていました。バリコンチューナーにこだわり
を見せつつ,1983年には,コストパフォーマンスにすぐれたシンセサイザーチューナー・T-437を発売しました。
その後,プリメインアンプは,モデルチェンジをしていきましたが,チューナーは,新機種が出ていませんでした。そ
うした中,オンキョーとしては,T-437以来の久々の本格派チューナーとして発売されたのがT-445XXでした。

それまでのオンキョーのシンセサイザーチューナーは,どちらかというと比較的厚みもあり,ごつい感じもあるデザ
インが多かったのですが,T-445XXは,デザインも一新され,すっきりしたイメージになり,従来機種のモデルチェ
ンジではなく,新機種として発売されていました。逆に他社のシンセサイザーチューナーと似たイメージの標準的な
デザインになったともいえましたが,その外観から想像するよりぐっと重量のある6.2kgという重量級のチューナー
となっていました。これは,T-445XXの大きな特徴である「Xスタビライザー」によるものでした。



「Xスタビライザー」は,PbSb特殊合金(鉛-アンチモン合金=実用鉛合金中で硬度が最も高く,硬鉛と呼ばれ,機
械的性質,耐食性にすぐれる)製のX型のスタビライザーで,重量もスタビライザー単体で2.5kgありました。同社
のアンプやCDプレーヤーなどにも採用されていたもので,4つの脚部をつなぐような形でX型のスタビライザーが
底部にあたるシャーシに取り付けられ,その剛性と重量によりシャーシの振動を抑えるというものでした。オーディオ
機器をしっかりとした台の上に設置すると音質面で有利であるということから,シャーシ自体に頑丈な台を取り付け
てしまおうという発想でもあったようです。チューナーであるT-445XXにおいては,振動の影響を最も受けやすい
局発の振動を機械的に抑える働きをしていました。局発は,入力電波を変換するために100MHz前後で発振して
いるため,回路のわずかな静電容量でも変化を受け,それによる局発のノイズはそのまま検波されて音の濁りに
つながる恐れがあり,「Xスタビライザー」は振動に弱い局発の防振により音質を改善しようとするものでした。

フロントエンドは,4連バリキャップが搭載され,FET構成となっており,シングル同調→デュアルゲートFET→ダブ
ル同調→デュアルゲートFETバランスドミキサー→FETを使用したOSC同調という構成になっていました。また,
局発は2段シリーズバッファーが採用され,RFはBOOST/OFFのRF2段切り換えが装備されFETによるRF増
幅が入る/入らないが選べるようになっており,受信状況に応じた相互変調の改善が図られていました。

IF部は,ユニフェーズセラミックフィルター2個とセラミックフィルター2個が搭載され,IF増幅用ICと組み合わされて
いました。WIDE/NARROWの切り替えが装備され,NARROW時には,上記のセラミックフィルター4段構成とな
るようになっていました。さらに,IFフィルターで発生する歪みを補正するD.C.I(Distortion Crrecting IF System)
回路を採用することで低歪率を実現していました。
検波部は,PLL検波で,検波器に新開発のL.T.D(Linear Tracing Detector)が採用されていました。10.7MHz
をダイレクトに検波する方式で,IF信号から90°遅れた信号がリニアにIF信号をトレーシングして検波するクロー
ズドループタイプであり,検波器単体でのS/Nは106dB,チューナー全体としても100dB(MONO)の高S/Nを実
現していました。

MPX回路は,PLL MPX方式を基本に,L・Rの分離に純粋な38kHz(正弦波)を作り,入力コンポジット信号をア
ナログ演算する方式をとり,D.C.D(Digital Computed Detector)と称していました。コンポジット信号に対する
相互変調などの妨害による音質劣化を防ぐためのアンティバーディーフィルターなども不要となり,高調波の発生
もなく,セパレーション,歪率なども改善されていました。また,受信状況に応じた自動切換のHi-BLENDも装備さ
れ,動作はインジケーターで表示されるようになっていました。



シンセサイザーチューナーは基準周波数に水晶を用いることで高い受信精度を実現していますが,反面,チュー
ナーの各コントロールに使用されているPLLの基準周波数の漏れやマイクロコンピューター等のノイズがデジタル
ノイズとして音質に影響を与える可能性が高くなります。T-445XXでは,PLLのモードを受信するために必要な
モードと放送を聴くためのモードに自動切換することにより,同調後の放送受信中はデジタル部とアナログ部を分
離してデジタルノイズを減少させるI.D.S(Isolated Digital System)が採用されていました。
オンキョーは,D.C.IとI.D.Sをあわせて電気的D.R(Direct Receiving)スタビライザーと称し,チューナー内部で発
生するデジタルノイズを減少させてS/Nの向上を図り,機械的なXスタビライザーであるXスタビライザーととともに
「Wスタビライザー方式」と称し,電気面,機械面の双方からチューナー回路の低歪みと安定化を追求していること
をうたっていました。

機能的には,AM/FMランダムで20局メモリー機能,プリセットした局を順々にスキャンしていくプリセットスキャン
プログラムした5局をタイマーによるON/OFFにしたがって順に呼び出す5局タイマープログラム,AUTO/MANU-
ALのチューニング切換などが装備されていました。その他,上述のように,RFでのBOOST:ON/OFF,IFでの
WIDE/NARROW,Hi-BLEND ON/OFFなどが装備され,FUNCTION INDICATORにすべて表示され,確認
できるようになっていました。

以上のように,T-445XXは,中級クラスのチューナーとして性能面でも機能面でも完成度の高い設計で,使いや
すい1台となっていました。実際,後継機のT-445XGでは,回路面ではほぼ同一で,Xスタビライザーなどが省略
されるなど,むしろコストダウンが図られることとなり,FMチューナーのオーディオ機器としての存在感の低下とと
もに,オンキョーも本格派のチューナーは,これ以降少なくなっていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



電気的,機械的なノイズの発生を防ぐ
Wスタビライザー方式採用。
S/N100dB,歪率0.0055%など
高純度再生を徹底して追求しました。

◎S/N100dB,歪率0.0055%の
 高性能を実現。
 新開発Wスタビライザー方式。
◎同調後にデジタル部を分離して
 デジタルノイズを 減少させる新開発
 I.D.S(Isolated Digital System)
◎S/N100dBを達成したL.T.D
 (Linear Tracing Detector)
◎高選択度と低歪率を両立するD.C.I
 (Distortion Crrecting IF System)
◎D.C.D(Digital Computed Detector)
 で回路をシンプル化,
 低歪・高セパレーションのMPX回路。
◎RF2段切換:BOOST/OFF
 相互変調対策フロントエンド採用。
◎20局ランダムメモリー,プリセット
 スキャンなど抜群の操作性。




定格・仕様
 

●FM部●


 
受信周波数範囲 76MHz~90MHz
実用感度 (75Ω/IHF)      0.9μV/ 10.3dBf(BOOST ON) 
4.0μV/23.3dBf(BOOST OFF)
S/N比50dB感度 (75Ω/IHF)            2.0μV/17.3dBf 
相互変調妨害比(WIDE/NARROW)  ±1MHz:88dB/103dB  ±2.5MHz:90dB/110dB 
イメージ妨害比(83MHz)  90dB(BOOST ON/OFF) 
IF妨害比 (83MHz) 100dB(BOOST ON/OFF) 
スプリアス妨害比  100dB(BOOST ON/OFF) 
2信号選択度  60dB(WIDE) 85dB(NARROW) 
歪率          MONO  400Hz:0.0055%(WIDE) 0.15%(NARROW)
STEREO 400Hz:0.008%(WIDE) 0.4%(NARROW)
ステレオセパレーション    1kHz        :68dB(WIDE) 45dB(NARROW)
100Hz~10kHz:45dB(WIDE) 40dB(NARROW)
AM抑圧比  62dB(WIDE) 50dB(NARROW) 
キャプチュアレシオ  1.0dB(WIDE) 2.0dB(NARROW) 
SN比  100dB(MONO) 90dB(STEREO)
周波数特性 20Hz~15kHz  +0.2dB -0.8dB
キャリアリーク -65dB
アンテナインピーダンス  75Ω 不平衡 
出力電圧(400Hz) 500mV(100%) 
出力インピーダンス  1.9kΩ


 

●AM部●


 
実用感度 200μV/m(付属ループアンテナ)
イメージ妨害比/IF妨害比(999kHz) 40dB/57dB
2信号選択度(選択度±10k) 35dB
SN比 50dB(100mV/m)
歪率(400Hz)  0.3% 
出力電圧(400Hz) 150mV(30%)
出力インピーダンス  1.9kΩΩ 

 
 

●その他●


 
消費電力(電気用品取締法規格) 17W
電源  AC100V 50/60Hz 
寸法/重量 435(W)×73(H)×368(D)mm/6.1kg

※本ページに掲載したT-445XXの写真,仕様表等は1986年9月の
 ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキヨー株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等す
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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