ONKYO T-455NⅡ
X’TAL LOCKED STEREO TUNER ¥69,800
1975年に,オンキョーが発売したFM/AMチューナー。オンキョーは,スピーカー,アンプの分野で
高い評価を得ていたブランドでしたが,アンプとペアを想定したチューナーにおいても,しっかりした
モデルを作っていました。1974年に発売された同社の最高級チューナーT-411の技術を継承し
つつ作り上げられた高級チューナーがT-455NⅡでした。

T-455NⅡの最大の特徴は,「X’TAL LOCKED」と称していたとおり,T-411と同じく水晶発振
子を用いた「クリスタルロック」の技術を局部発振回路に採用し,IF(中間周波数=10.7MHz)を
精密に保持することができるようにしていたことでした。水晶発振子の精度は,±0.001%以内と
従来のコイルとコンデンサーによるLC発振回路に比べて桁違いに高く,温度・湿度変化等にも強く
局部発振周波数偏移0.005%以内という高精度を実現していました。これにより,従来の方式に
比べ,桁違いの受信安定度を実現し,受信中の同調ズレに対しても,高精度なフィードバックにより
ドリフトのない安定した受信が可能となっていました。



フロントエンドは,初段の高周波増幅部ととミキサー部に低雑音デュアルゲートMOS型FETを採用
し,目盛精度の高い,新型の超精密4連バリコンを搭載していました。こうした構成により,1.7μV
(IHF)の高感度と,スプリアス妨害比110dB以上,イメージ比100dB以上という妨害排除特性を実
現していました。



IF段には,1ブロック6極の超リニアフェイズ型IFフィルターを2ブロック,12極のリニアフェイズフィル
ターを搭載していました。このリニアフェイズフィルターは,通過帯域の位相特性にすぐれ,温度・湿度
ドリフトの少ないすぐれた性能をもっていました。さらに,NORMAL,NARROWの帯域幅2段切り換
えを装備していました。NORMALポジションでは,ステレオ歪率0.1%以下(400Hz),セパレーショ
ン50dB以上(1kHz)を確保しつつ,選択度50dBを実現していました。NARROWポジションでは,85
dBという高選択度を確保しつつ,ステレオ歪率0.4%以下(400Hz),セパレーション40dB(1kHz)と
いうオーディオ特性を実現していました。



検波回路には,通常多用されていたSカーブより100倍以上の精度をもつ微分利得直視装置で設計さ
れた,広帯域にわたってリニアな特性を持つ広帯域直線検波器(広帯域レシオ検波器)を採用していま
した。
MPX回路には,放送局のパイロット信号とMPX内部のスイッチング信号を完全に一致させるPLL方式
を採用したPLL MPX ICを採用し,L・R独立の採用ともあいまって,高い安定度を確保し,音質劣化
を抑えていました。
AF部は,±2電源の高級プリアンプ並みの構成で,ダイナミックマージンが大きくとられクリップ歪も抑
えられていました。

機能的には,上述のNORMAL/NARROWの選択度切換スイッチ,局間ノイズを抑えるFMミューティ
ングスイッチ,MPXノイズフィルター,出力レベルコントロール等が搭載されていました。変わったところ
では,当時アメリカでテスト放送が行われていたドルビーエンコードしたFM放送に対応してドルビーユ
ニット接続して使用する際のFMドルビー切換スイッチが搭載されていました。このあたりは,当時アメ
リカでFMチューナー内蔵のレシーバーのブランドとして知られていたオンキョーらしいものでした。その
他,アンテナ設置時に使われるマルチパス出力端子と試聴スイッチ,当時いくつかテスト的に放送され
ていたされていたFM4ch放送に対応できる4ch検波出力端子が装備されていました。オーディオ出力
は,固定,可変,DINが装備され,FMアンテナ端子は,同軸,300Ω,75Ωに対応し,AMアンテナは
バータイプが搭載されていました。
ダイヤル目盛は,250mmの大型スケールで,200kHzの等間隔目盛を採用し,メーターは,シグナル
メーターとセンターチューニングメーターが搭載されていました。そして,LEDによる,同調を示すロック
ドインジケーター,同調完了を示すチューンドインジケーター,ステレオ放送受信を示すステレオインジ
ケーターが搭載されていました。

以上のように,T-455NⅡは,最高級チューナーT-411で開発された「クリスタルロック」の技術を核
に,各部にオーソドックスに技術を投入・集積して作り上げた高級チューナーで,使いやすく,あたたか
い音をもったバランスのとれた1台でした。当時チューナーではあまり注目されていなかったオンキョー
でしたが,意欲的に開発していた当時のオンキョーのチューナーへの姿勢が感じられる1台だったと思
います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



あらゆる角度から,
クオリティ向上を達成した
正真正銘のインテグラのチューナー。

高精度クリスタルロックド方式,
選択度2段切換,
FMドルビー対応など最新技術を
導入した超低歪率チューナー

◎音質最良点を維持するクリスタルロックド方式
◎正確かつ敏速なジャストチューン方式
◎音質を重視した選択度2段切換のIF回路
◎全回路を通じてオーバー変調対策を徹底




●主な定格●

FMセクション 
受信周波数  76~90MHz 
感度  IHF:1.7μV
S/N50dB:3.0μV 
イメージ妨害比(83MHz)  100dB 
IF妨害比(83MHz)  110dB 
S/N比(IHF)  77dB 
スプリアス妨害比  110dB 
2信号選択度(±400kHz離調)  50dB(NORMAL)
85dB(NARROW) 
AM抑圧比  57dB(NORMAL)
53dB(NARROW) 
キャプチュアレシオ  1.0dB(NORMAL)
2.0dB(NARROW) 
歪率  MONO 400Hz
 0.08%(NORMAL)
 0.2%(NARROW)
STEREO 400Hz
 0.1%(NORMAL)
 0.4%(NARROW) 
周波数特性  20~15,000Hz(+0,-0.5dB) 
アンテナインピーダンス  75Ω 300Ω 
ステレオセパレーション  1kHz
 50dB(NORMAL)
 40dB(NARROW)
100Hz~10kHz
 40dB(NORMAL)
 35dB(NARROW)  
キャリアリーク  -70dB 
出力電圧  可変・400Hz 100%変調
 0~1V
固定・400Hz 100%変調
 450mV 
出力インピーダンス  5kΩ(可変出力最大時) 
AMセクション 
受信周波数  535~1605kHz 
感度(バーアンテナ)  200μV/m 
イメージ妨害比(1MHz)  50dB 
IF妨害比(1MHz)  35dB 
S/N比  60dB 
歪率(400Hz)  0.5%
出力電圧  可変・400Hz 30%変調
 0~330mV
固定・400Hz 30%変調
 100mV  
その他 
使用半導体  IC10,Tr57(FET5),Di34 
電源  AC100V 50/60Hz 
消費電力(電気用品取締法規格)  21W 
AC出力  UNSWITCED 1(200VA) 
寸法  467W×161H×383Dmm 
重量  9kg 
※本ページに掲載したT-455NⅡの写真,仕様表等は1975年8月
 のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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