NIKKO T-800
AM-FM STEREO TUNER ¥44,000
1975年に,ニッコー(現日興電機製作所)が発売したAM/FMチューナー。ニッコーは,1935年に
創業した配線用遮断器(サーキットブレーカー)のメーカー・日幸電機製作所のオーディオブランドで,
1962年に,日本初のオールトランジスタステレオアンプをオーディオフェアで発売するなど,当時す
ぐれたオーディオ機器を発売していました。そんなニッコーが,性能対価格比でもっとも激戦区とい
われる価格帯に,プリメインアンプA-800とともに発売したチューナーがT-800でした。

FMフロントエンドは,RF増幅段とミキサー段に,過入力変調に強いデュアルゲートMOS型FETを
使用していました。4連バリコンを搭載し,実用感度1.8μV(IHF),イメージ比95dB,スプリアス妨
害比100dB以上を確保し,クロスモジュレーション等の混信排除能力が大幅に高められ,安定した
受信を実現していました。
局部発振回路には,変形コルピッツ形を用い,発振出力は同調回路より混合用デュアルMOS型
FETの第2ゲートに注入され,高調波が極少に抑えられ,波形がきれいに整い,スプリアス妨害も
しっかり抑えられていました。また,温度,時間,電源電圧変動に対しても高い安定性を実現してい
ました。

選択度等,S/N比等受信性能に大きく関わるIF段には,使用する素子の配置を徹底して吟味した
回路設計がなされていました。FM専用の高集積度ICを採用し,従来の単独素子やICでは困難で
あった回路構成により,諸特性の大きな向上を実現し,高選択度,広帯域のIF特性を実現してい
ました。

MPX部は,IC化されたPLL回路が採用され,従来のLCの同調回路を大きく上回る高い安定性と
性能を実現し,経時変化や環境変化による劣化も抑えていました。さらに,シャープな遮断特性を
もつローパスフィルターを使用して,正確な周波数特性を維持しながら,キャリアリークを完全に
カットして,音質劣化を防いでいました。

AM部は,高集積度ICを使用していました。このICは,AGCにすぐれた特性を示し,常に一定した
検波出力が得られ,セラミックフィルターを採用したIF段は,シャープな選択度と音質の向上を実
現していました。



機能的には,チューナーとしてオーソドックスにまとめられていました。IF段にはミューティング回路
が組み込まれ,ミューティング動作による出力波形の歪みを抑え,周波数特性,位相特性に影響
を与えず,局間ノイズ等を効果的に抑えることができるようになっていました。また,FMステレオ放
送の受信時にセパレーションを調整して高域ノイズを抑えるハイブレンドスイッチも搭載されていま
した。
メーターは,リニアリティが高められたシグナルメーターとセンターチューニングメーターが搭載され
ていました。アンテナ端子は,300Ω平衡型と75Ω不平衡型が登載されていました。出力端子は
固定と可変の2系統が登載され,他にマルチパス端子も登載されていました。

以上のように,T-800は,オーディオ用チューナーにおいては無名のニッコーが,激戦区ともいえ
る価格帯に投入しただけあり,オーソドックスにまとめられたコストパフォーマンスにすぐれたチュー
ナーでした。しっかりした内容をもつ隠れた実力機ともいえると思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



NIKKOからNIKKOへ快心の作。
性能対価格比の常識を
完全にくつがえしました。

◎FMフロントエンド部
FMフロントエンドは,RF増幅段と混合回路に,過入
力混変調に強いデュアルゲートMOS型FETを使用。

◎発振回路
局部発振回路には,変形コルピッツ形を用い,発振出力
は同調回路より混合用デュアルMOS型FETの第2ゲー
トに注入。

◎FMIF部
FMチューナーにおいて,IF部の受け持つ役割は非常に
重要です。

◎MPX部
IC化されたPLL回路を導入。
◎AM部
AMチューナーにも高集積度ICを使用しており,いちだん
と充実したAMチューニングを保証。

◎FMミューティング回路
IF段に,ミューティング回路を組み込んであります。
◎メーター回路
シグナルメーターのリニアリティが大幅に改善されていま
す。

◎ファンクション
●ハイブレンドスイッチ
●出力端子は,固定と可変の2系統を用意してあります。
●アンテナ端子は,バルーンを用いた300Ω平衡型と
75Ω不平衡型端子を用意してあります。
●マルチパス端子




●主な定格●

型式 AM/FMステレオチューナー 
回路方式  スーパーヘテロダイン方式 
使用石  FET2,IC5,トランジスタ9,ダイオード2 
FMチューナー部 
受信周波数  76MHz~90MHz 
感度(IHF)  1.8μV 
選択度(IHF)  80dB 
イメージ比  95dB 
IF妨害比  100dB 
キャプチュアレシオ(IHF)  1dB 
スプリアス妨害比  100dB 
AM抑圧比  55dB 
周波数特性  15Hz~15,000Hz 
高調波歪率  モノ    0.2%以下
ステレオ 0.4%以下 
ステレオセパレーション  40dB 
出力  (固定)1V
(可変)0~2V 
アンテナ  300Ω平衡,75Ω不平衡 
AMチューナー部  
感度(IHF,バーアンテナ)  200μV 
選択度(IHF)  40dB 
S/N比  50dB 
イメージ比  45dB 
IF妨害比  45dB 
出力  (固定)0.3V
(可変)0~2V 
総合 
電源  AC100V 50/60Hz 
消費電力  25W 
外形寸法  455W×151H×370Dmm 
重量  7.5kg 
※本ページに掲載したT-800の写真,仕様表等は1975年の
 NIKKOのカタログより抜粋したもので,日興電機製作所に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

★メニューにもどる       
 
 

★チューナーのページPART7にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system