TA-9Xの写真
ONKYO TA-9X
STEREO CASSETTE TAPE DECK ¥150,000

1981年にオンキョーが発売した高級カセットデッキ。テープデッキの分野ではあまりメジャーではなか
った同社が突如発売した高級デッキで,ワンウェイ3ヘッド,3モーターとオーソドックスに音質を追求した
隠れた高性能デッキでした。

ヘッドは録・再コンビネーションヘッドを搭載した3ヘッド構成でした。録音用にはワイドギャップ,再生用
にはナローギャップとそれぞれの性能を追求したS&Sセンダスト録音/再生コンビネーションヘッドで,
コア材には,磁気特性に優れ,フェライトなみの高度を持つというセンダスト合金を使用していました。
消去ヘッドは,デュアルキャプスタン・3ヘッドを実現するために,超小型に作られたダブルギャップ・メタ
ル消去ヘッドを搭載していました。この消去ヘッドは,新素材であるダイナロイとフェライトを結合したもの
で,超小型ながら,メタルテープにも対応した強力な消去パワーを持っていました。

TA-9Xのヘッド

走行系は,テープテンションやヘッドタッチが安定し,振動や変調ノイズが少ないクローズドループ・デュ
アルキャプスタン方式で,キャプスタン駆動用,リール駆動用,ヘッドベース駆動用のそれぞれに,専用
のハイトルクDCモーターを採用した3モーターシステムを採用していました。
特に,キャプスタン駆動用モーターには,ブラシレスFGサーボDDモーターを使用し,ワウ・フラッター
0.019%(WRMS)という安定したテープ走行を実現していました。駆動系のコントロールをコンピュータ
で集中的にコントロールするフルロジックシステムが採用され,モーターによるヘッドベース駆動を採用し
たサイレントメカニズムとなっていました。

TA-9Xのモーター系

TA-9Xには,テープごとにバイアス値を最適にチューニングし,フラットな周波数特性を得る「オート・アキュ
バイアス方式」が開発され搭載されていました。録音ポーズ状態でスタートボタンを押すことにより,低域
400Hzと高域10kHzの2つの発振器の混合出力を,バイアス値を連続的に変化させながら録音,これを
3ヘッドで同時再生しながら低域と高域のレベルを比較サーチし,そのレベルが一致したポイントにバイアス
値を設定するというシステムになっていました。チューニング開始の地点までの巻き戻しも自動で,オートバ
イアスチューニングは通常5秒以下の短時間で完了しました。また,チューニング結果はメモリーすることも
できるようになっていました。

TA-9Xのもう一つの特徴として,「デュアルセンサー・リアルタイムカウンター」の搭載がありました。テープ
の経過時間と残量時間を正確にカウントするリアルタイムカウンターとするために,送り出し側リールからだ
けでなく,巻き取り側のリールからも回転速度を検出し,両方の回転速度からコンピューターで計算する「デ
ュアルセンサー方式」となっていました。この「デュアルセンサー・リアルタイムカウンター」は,以上のような
仕組みであるため,テープの初めからでなくても,演奏中のどのポジションからでも数秒以内に残量時間を
表示できる機能を持っていました。
残量表示スイッチは,C-90,C-60,C-46の3つがあり,このスイッチを押すことで,コンピューターがテー
プサイズに応じた演算を行い,残量表示が行われるようになっていました。また,C-46とC-60,C-60と
C-90,C-46とC-90というふうに2つのスイッチを同時に押すことにより,それぞれC-50,C80,C-120
にも対応できるようになっていました。
リセットパネルを押すと,カウンター表示は0:00となり以降のテープ走行時間を表示するようになっていまし
た。また,その後でも残量表示スイッチを押すと再び演算が行われ残量表示がされるようになっていました。

デュアルセンサー・リアルタイムカウンター

ノイズリダクションとしては,ドルビーBタイプに加えて,当時最先端であったドルビーCタイプも搭載していました。
音質重視のオーソドックスな設計であるため,上記のカウンターやバイアスチューニング以外には機能的には比
較的シンプルで,約5秒間の無録音部分を作れるオートスペース・レックミュート,巻き戻し後の0:00で停止・再
生ができるメモリーストップ&プレイなどオーソドックスな機能が搭載されていました。

以上のように,TA-9Xは,非常にオーソドックスに性能を追求した高級デッキでした。走行系,ヘッドなど,一つ一
つの部分が丁寧に設計され,優れた性能を持っていました。オンキョーというブランドのせいか,デッキとしては,
あまり注目を集めることはありませんでしたが,隠れた名機といってもいいと思います。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


録音リアリティの新しい地平が見えはじめた。
最高のクオリティと,最高のファンクションを追求して,
9X誕生。
これは,もうマスターデッキ。
◎クローズドループ・デュアルキャプスタン方式。
 しかも,録音同時モニターのできる3ヘッド構成。
◎秀抜な周波数特性と高SN比をマークした
 S&Sセンダスト・録音/再生コンビネーションヘッド。
◎コンピュータ制御DD3モーターシステムで,
 ワウ・フラッタ0.019%の秀れた走行特性を達成。
◎あらゆるテープの100%クオリティを求めた
 オンキョーオリジナル・オート・アキュバイアス方式。
 留守録音時のアキュバイアス・メモリーも搭載。
◎新開発デュアルセンサー・リアルタイムカウンター。
 テープ残量時間・経過時間を高精度分秒表示。
 C-50,C-80テープにも対応できるワイド機能設計。
 ●デュアルセンサーだから,どのブランド,どのグレードのテープでも
  残量時間のグンと正確な分秒デジタル表示。
 ●テープ途中からでも,数秒以内に残量時間を正確表示。
 ●C-50,C-80テープの残量時間も読みとり可能。
 ●録音・再生・早送り・・・・どんな時にも働くテープウォッチ。
  メモリープレイとも連動できるリアルタイムカウンターです。
◎圧倒的な広ダイナミックレンジと高SN比。
 ドルビーCシステムNR搭載。
◎自動的に5秒間の無録音スペースを作れる,
 新開発オートスペース・レックミュート
◎高速応答7点ピークホールド・レベルインジケータ
●TA-9X主要定格●


形式 4トラック2chステレオカセットデッキ
ヘッド S&S録音・再生コンビヘッド
FXフェライト複合型消去ヘッド
モータ DDサーボモータ(キャプスタン用)
DCモータ(リール用)
DCモータ(ヘッドベース用)
テープ速度 4.8cm/sec
ワウフラッタ 0.019%(WRMS)
周波数特性 METAL 20〜20,000Hz
      (25〜19,000Hz±3dB)
HIGH   20〜18,000Hz
      (25〜17,000Hz±3dB)
NORM  20〜16,000Hz
      (25〜15,000Hz±3dB)
SN比 60dB(ドルビーOUT)
 ドルビーBで10dB(5kHz)向上
 ドルビーCで20dB(5kHz)向上
(SN比はMETALにて測定)
MIC入力 最小入力レベル 0.3mV/600Ω
入力インピーダンス5kΩ
最適マイクインピーダンス200〜50kΩ
LINE入力 最小入力レベル 50mV
入力インピーダンス50kΩ
LINE出力 基準出力 1,100mV(0dB)
負荷インピーダンス 50kΩ以上
ヘッドホン 6mm径標準ステレオジャック
負荷インピーダンス 8Ω〜200Ω
消費電力 45W
寸法 450W×100H×392Dmm
重量 9.5kg
※本ページに掲載したTA-9Xの写真,仕様表等は1981年9月
 のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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