SONY TA-F5000
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥120,000
1995年に,ソニーが発売したプリメインアンプ。インテリアにも溶け込む小型の筐体をもつ新しいCDプレーヤー
として発売されたCDP-X5000とペアを想定されたプリメインアンプで,大袈裟でない小型の筐体で高品質のプ
リメインアンプを作り上げたといったアンプでした。
小型で薄型の筐体ながら,しっかりと音を支える強力な電源部を搭載していました。そのために,電源トランスは
変換効率が高く,小型でも大きな容量が得られるトロイダル型トランスが採用されていました。さらに,小型の筐
体ゆえに,より問題となるトランス自身の振動を低減するために,通常角形であるトランスのコア(鉄芯)を楕円
型にしたトーラス・トロイダルトランスをトランスメーカーと共同開発し搭載していました。従来に比べ振動は1/4
以下に低減されていました。さらに,小信号を扱うプリ部と大信号を扱うパワー部に独立して整流回路を設け,独
立して電源供給を行うことでプリ部へのパワー部の干渉を防ぎ,安定した動作と音の透明度をねらったS.T.D
(Spontaneous Twin Drive)電源方式が採用されていました。
シャーシは,十分な厚みと強度をもったアルミとスチールを組み合わせ,一つの箱を形成するモノボックス構造が採
用され,もとより筐体自体が小型である上,内部をアルミ角材とスチール材のビームで補強したことにより,きわめて
高剛性な構造となっていました。また,アルミとスチールという固有振動数の異なる素材の組み合わせにより,互い
に共振を打ち消す制振効果も確保されていました。インシュレーターには,外部からの振動を打ち消すように吸収す
る偏心インシュレーターが採用されていました。フロントパネルには,厚さ10mmにもおよぶアルミ材を使用し,剛性
に加え,高級感のあるフロントパネルの質感が実現されていました。こうした構造は,CDP-X5000と共通のもので
デザインイメージの統一感にもつながっていました。
パワートランジスターには,入力インピーダンスが高いことにより前段と電流的に分離でき,ノイズ電流が流れ込みに
くく,音質上好ましくない奇数次歪みの少ないMOS-FETを,ドライブ段も含めてパワー段すべてに,クロスオーバー
歪みの少ないシングルプッシュプル構成で搭載していました。バイアス回路も,熱変動に対する安定度が高いという
MOS-FETならではの特長を生かし,電流値を固定したフィックスド・オプティカル・バイアス回路を採用していました。
これにより,出力段の安定性が高められていました。パワートランジスターは,上述のように強固に形成されたシャー
シに直接マウントされ,音質に悪影響を与えるパワートランジスターの振動を効果的に抑えるとともに,大きな容積を
占めるうえ,フィンの鳴きが音質を害する恐れがあるヒートシンクをなくした構造にしていました。
パーツの面でも,小型のプリメインアンプながら,抵抗,コンデンサーなど音質的に吟味した高品質のものが厳選して
使用されていました。また,トーンコントローラー,バランスコントローラーにも,マスターボリュームと同グレードの可変
抵抗器を使用した贅沢な構成となっていました。さらに,トーンコントローラーは,センター位置で回路が信号経路と切
り離されるセンターディフィート方式が採用されていました。
入力端子は,PHONO,TUNER,AUX,CD,入出力端子は,TAPE,MDが装備されていました。TAPE2がMDと
表示されているのは,当時のソニーらしいところでした。信号入力回路には,選択されていないソース機器の入力をリ
レーを使って切り離すノイズカットインプットセレクターが採用され,聴いていない機器の信号はアンプ内に入り込まず
機器間のクロストークを抑えていました。また,出力としてPRE OUTも装備されていました。
アナログレコード用のフォノイコライザーアンプには,CR-NF型が採用され,MCカートリッジ用にはヘッドアンプが搭載
されていました。
以上のように,TA-F5000は,生活場面に圧迫感をもたらさない小型のシンプルな筐体に,高品質なパーツ,技術を
投入し,音楽を聴く道具として魅力的な1台となっていました。繊細で上品な音とデザインで,現在でも魅力ある1台と
思います。当時,CDP-X5000と組み合わせ,「#5000シリーズ」としても提案されていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
設計者が
一度はつくりたかった
逸品です。
音質に,操作感に,仕上げに,
ピュアオーディオを楽しむ
品格を備えました。
◎トーラス・トロイダルトランスによる余裕あるパワーをベースとした
S.T.D.電源方式で高度なスピーカードライブ能力を獲得しています。
◎複合素材モノボックスシャーシと偏心インシュレーターにより
振動に対してきわめて強い構造です。
◎パワーMOS-FETをシャーシにダイレクトマウント。
ドライブ段にもMOS-FETを採用しました。
◎トーンコントローラーにマスターグレードのボリュームを使用したほか,
高音質パーツを惜しみなく投入しています。
◎聴いていないソースは入口でカット。
音を汚すクロストークを根本からなくしています。
◎高性能フォノイコライザーアンプ搭載。
アナログレコードも高音質で楽しめます。
●TA-F5000の主な仕様●
回路方式 | パワーアンプ部:スーパーレガートリニア,全段直結ピュアコンプリメンタリー ダーリントンSEPP MOS-FETパワーアンプ プリアンプ部:低雑音イコライザーアンプ+MCヘッドアンプ |
電源部 | 大容量トーラス・トロイダルトランス+S.T.D.電源 |
定格出力 | 45W+45W(4Ω負荷,20〜20,000Hz,高調波ひずみ率0.03%時) |
適合スピーカーインピーダンス | 4〜16Ω |
出力帯域幅 | 10Hz〜100kHz(4Ω負荷,出力10W,高調波ひずみ率0.08%時) |
全高調波ひずみ率 | 0.008%(4Ω負荷,10W時) |
イコライザー偏差 | ±0.3dB(PHONO MM,20Hz〜20kHz) |
周波数特性 | 5Hz〜100kHz+0,−3dB(TUNER,CD,AUX,TAPE,MD) |
入力感度および入力インピーダンス | PHONO MC:0.18mV 100Ω PHONO MM:1.6mV 50kΩ TUNER,CD,AUX,TAPE,MD:150mV 20kΩ |
SN比 | PHONO MC:75dB(A Fil.0.5mV) PHONO MM:85dB(A Fil.5mV) TUNER,CD,AUX,TAPE,MD:100dB(入力ショート) |
出力電圧および出力インピーダンス | MD REC OUT,TAPE REC OUT:150mV 1kΩ PRE OUT:600mV 200Ω |
ヘッドホン出力レベル | 10mW(8Ω,Low/Highインピーダンスヘッドホンに対応) |
トーンコントロール | BASS±6dB(100Hz) TREBLE±6dB(10kHz) |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 100W |
補助電源コンセント | 連動2個(合計100W) |
大きさ | 280W×100H×400Dmm |
質量 | 約7kg |
付属品 | ショートプラグ×2,電源コード変換アダプター(3極→2極)×1 電源コード×1 |
※本ページに掲載したTA-F5000の写真,仕様表等は,1995年11月
のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
あります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。
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