TA-F555ESの写真
SONY  TA-F555ES
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥99,000

1982年にソニーが発売したプリメインアンプ。1980年頃,ソニーのプリメインアンプは,高効率のパルス電
源を主に搭載し,薄型で軽量の高効率型アンプを中心としており,オーディオファンからの人気はもう一つと
いった状況にありました。そんな中,突如,オーソドックスな電源を搭載したしっかりとした筐体と重量を持った
アンプがイメージを一新した精悍なブラックパネルで登場しました。それがこのTA-F555ESでした。

TA-F555ESの最大の特徴は,フロントパネル上にも表示されている「オーディオ・カレント・トランスファ方式」
の採用でした。これは,1981年のTA-AX8で開発されたもので,プリアンプに加えられた信号をカレント変換
アンプにより,定電流信号系に変換し,パワーアンプ初段の2端子型リニアゲインコントローラー方式アッテネー
ターを負荷とし,再び電圧として取り出すという構成で,パワーアンプから見たプリアンプは,無限大のインピー
ダンスをもち,電気的には完全に切り離された状態になり,同時にL・Rのチャンネル間もセパレート化されると
いうものでした。
この方式により以下のようなメリットがあるということでした。(1)L・Rチャンネルごとに独立した特性追求がは
かれるとともに理想的なアースが可能。(2)入力信号と負荷がはっきり定まり,アースループや電源インピーダ
ンスの影響を受けず,同時に信号経路に介在する線材やスイッチ類による外乱の影響も受けにくい。(3)2端
子式リニアゲインコントロール方式アッテネーターは,「オーディオカレントトランスファ方式」により搭載可能とな
った,通常よりも電流容量が大きく抵抗値が低い可変抵抗器を使ったもので,ゲインを下げるほど比例してイン
ピーダンスが低下し,実使用レベルでの,諸特性が改善される。
プリアンプ部電源には,定電流シャントレギュレーターが採用され,パワーアンプ電源からの影響を完ぺきに断
つことができ,電源インピーダンスもほぼゼロとなるため,安定したレギュレーションが実現されていました。

パワーアンプ部には,「レガートリニア方式」が採用されていました。これもTA-AX8で開発され,当時の同社の
プリメインアンプに広く採用された技術でした。パワーアンプ部で問題となるスイッチング歪やクロスオーバー歪
みを防ぐために,この当時,各社でノンスイッチング方式や疑似A級方式など,可変バイアスや電源電圧値の変
動などの手法が多く採用されていました。「レガートリニア方式」は,固定バイアス方式をとりながら,高速出力素
子Hi-fTトランジスタを極小カットオフ領域で働かせるもので,(1)信号系に追加される非直線性素子が皆無(2)
入力信号の大小で動作条件を変化させない(3)100kHzの超高域までスイッチング歪みが観測されない(4)位
相特性を含め安定した動作を保証,などの特徴を持ち,高速広帯域な特性が実現されていました。

イコライザーアンプ部,カレントトランス部,パワーアンプ部に信号系のコンデンサーを排除し,動作の安定化を図
ったDCサーボ付きアンプが採用されていました。さらに,回路,素子の熱変調歪を追放するため,コンスタントPC
回路が,イコライザーアンプとパワーアンプ初段の差動部に採用されていました。さらに,各素子に専用ヒートシン
クが設けられ,可聴帯域での分解能の向上が図られていました。

パーツ等の面でも各部に配慮がなされ,内部配線材,電源コードには,無酸素銅が用いられていました。シャーシ
は,カッパータイト(銅メッキ処理)ケースが採用され,磁気歪みが低減されていました。パネル面では,ボリューム
が左側にあるのはエスプリシリーズのアンプ等,当時の同社のアンプによく見られる特徴で,信号の流れに沿った
配置を行ったためでした。
機能的には,REC OUTセレクター,DIRECT/ON切替付きトーンコントロール,ベースブースト,サブソニックフィ
ルターなど,オーソドックスなものが装備されていました。

以上のように,TA-F555ESは,ソニーがそれまでのプリメインアンプの路線を大きく変更した新しい「ESシリーズ」
の第1号機ともいえるモデルで,軽量・高効率からオーソドックスに音質を追求しようとした姿勢がうかがえる1台でし
た。当時,実力機が各社から出されていた10万円クラスの中で,歪み感が極めて少ない抑制のきいた端正な音は
同社の個性を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「オーディオ・カレント・トランスファ」
「レガートリニア」
独自の技術をベースに,
デジタルソースを余りある
出力100W+100W,
実用ダイナミックレンジ120dBを獲得。
そして,”音楽”の再現をも厳しく求めました。


◎4つのアンプ間の干渉を断つ,
 オーディオ・カレント・トランスファ方式。
◎スイッチングひずみを追放する
 レガートリニア方式,
 100W+100Wパワーアンプ部。
◎低域の安定化をはかったDCサーボと,
 熱変調ひずみを防止する
 コンスタントPC回路。
◎聴感と特性の両面から吟味した
 高品質パーツを厳選使用。
◎世界のカートリッジの個性を生かす
 カートリッジ ロードセレクター。




●TA-F555ESの主な仕様●

回路方式
カレントドライブ・インテグレーテッド・ステレオアンプ
ローノイズHi-GAINイコライザーアンプ・DCサーボ付加
ブリッジバランス型カレント変換アンプ・DCサーボ付加
レガートリニア・前段直結ピュアコンプリメンタリー,
トリプルダーリントンSEPPパワーアンプ・DCサーボ付加
実効出力
100W+100W(20Hz〜20kHz,両チャンネル動作
           定格高調波ひずみ率,8〜16Ω負荷時)
100W+100W(4〜6Ω負荷時)
高調波ひずみ率
0.004%以下(定格出力時,20Hz〜20kHz,8Ω)
0.01%(定格出力時,4Ω)
混変調ひずみ率
0.004%以下(定格出力時,8Ω,60Hz:7kHz=4:1)
0.01%(定格出力時,4Ω)
スルーレート
100V/μsec,250Vμsec(インサイド)
ダンピングファクター
125(1kHz,8Ω)
周波数特性
PHONO:RIAAカーブ±0.2dB
TUNER,AUX,TAPE,CD:2Hz〜200kHz+0,−3dB
SN比
PHONO:MM87dB/MC70dB
TUNER,AUX,TAPE,CD:97dB
入力感度および入力インピーダンス
PHONO,MM:2.5mV/100pF,330pF/50kΩ
  MC(40Ω):130μV/100Ω
  MC(3Ω) :130μV/30Ω
TAPE,TUNER,AUX,CD:150mV/50kΩ
出力電圧および出力インピーダンス
REC OUT:150mV/1kΩ
SPEAKER:適合インピーダンス4〜16Ω
HEADPHONE:30mW/8Ω
トーンコントロール
BASS(低音)   :±8dB(60Hzにて,ターンオーバー周波数300Hz)
TREBLE(高音):±8dB(25kHzにて,ターンオーバー周波数5kHz)
サブソニックフィルター
15Hz以下,6dB/oct
ベースブースト
+4dB(50Hz)
電源
AC100V,50/60Hz
消費電力
193W
大きさ
430W×130H×367Dmm
重さ
13kg

※本ページに掲載したTA- F555ESの写真,仕様表等 は,1982年
 10月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作
 権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていま すのでご注意ください。

 

★メニューにもどる          
  
 
★プリメインアンプPART5のページにもどる

 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system