TC-K555ESⅡ
STEREO CASSETTE DECK ¥99,800
1984年に,ソニーが発売したカセットデッキ。その名称から分かるように,1981年発売のTC-K555ES
モデルチェンジしたデッキで,外観デザインはほとんど変わりはありませんが,内容は大きく強化されていまし
た。

ヘッドは,ソニー自慢の「独立懸架3ヘッド方式」が採用されていました。この方式は,コンビネーション3ヘッド
と独立3ヘッドの中間のような構造で,通常,録音ヘッドと再生ヘッドが一体化されているコンビネーション3ヘッ
ドに対して,録音ヘッドと再生ヘッドを分離構造とし,なおかつ全体の形はコンビネーション型のようなもので,こ
れにより。録音ヘッド再生ヘッドそれぞれ独立してアジマスの精度が高められ,また,テープのヘッドタッチが安
定して得られるという巧妙な構造でした。ヘッドの材質にはTC-K555ESと同様に,当時最先端の非結晶構造
のアモルファス磁性合金を採用し,レーザー加工技術により精密な加工が施され「レーザーアモルファスヘッド」
が採用されていました。
さらに,TC-K555ESⅡのヘッドでは,アモルファスヘッドの巻線に,第一種無酸素銅(純度99.995%以上)
の結晶を巨大化することで,結晶境界の数を少なくし,容量,リアクタンスによる信号の歪みを減少させたLC-
OFC(Linear Crystal Oxygen Free Copper)を採用し,より高音質の録音・再生を可能にしていました。



走行系は,オープンリールデッキ時代から技術を積み重ねてきたクローズドループ・デュアルキャプスタン方式
を継承していました。ヘッドを中心に配置された2組のキャプスタンとピンチローラーがテープをはさみこみテー
プを安定走行させるメカニズムで,(1)リールから伝わる振動を遮断し,(2)テープスパンを短く区切ることでモ
ジュレーションノイズを可聴帯域外へ追放し,(3)2つのキャプスタン間のテープテンションを利用して安定した
ヘッドタッチが得られることで,高い走行性度を実現していました。

さらに,TC-K555ESⅡでは,キャプスタン駆動に,トルクむらの原因となるスロットもブラシも取り去ったシン
プルな構造のリニアBSL D.D.モーターの回転軸をそのままキャプスタンにしたダイレクトドライブ方式を採用し
水晶発振子を用いたクォーツロックでサーボすることで,ワウ・フラッター0.025%という高精度な回転特性を
実現していました。



アンプ系も強化されていました。録音・再生アンプは全段L・Rツインモノ構成とし,相互干渉を抑え,信号の流
れに沿ったコンストラクションで前段・後段の干渉も抑えたDCアンプ構成としていました。また,アンプ部を1枚
のOFC基板にまとめ,配線材の引き回しを大幅に減らし,配線材にはLC-OFC線を使用していました。
ノイズリダクションとしてドルビーBタイプ,Cタイプが装備され,ドルビー回路を構成するICにシンメトリープロセ
スドルビーIC(L・Rそれぞれに,全く同じ回路構成で,左右対称となっている専用のIC)を新たに開発して搭載
していました。L・Rが対称形に設計されているために,周辺パーツの配線パターンも左右対称となり,チャンネ
ル間の特性差を極少に抑えることで,音像定位を改善していました。

テープセレクターは,TYPEⅠ(NORMAL),TYPEⅡ(CrO2),TYPEⅢ(Fe-Cr),TYPEⅣ(METAL)まで,4
ポジションを持ち,ソニー自慢のDUADカセット(Fe-Crカセット)も使えるようになっていました。さらに,TYPEⅠ
TYPEⅡ,TYPEⅢポジションには,±20%のバイアス微調整機構が装備されていました。
表示部は,多機能集中FLディスプレイで,レベルメーターは,-40dB~-8dBのピークプログラムメーターが
搭載され,テープカウンターは,テープ残量を表示できる減算表示も可能な4桁デジタル(分秒表示)の電子式・
リニア電子カウンターが装備されていました。

以上のように,TC-K555ESⅡは,「TC-K555」の系列の第3世代にあたるモデルとして,上級機のエッセン
スも投入し,より強力なデッキとなっていました。次の世代のTC-K555ESXからは,センターメカへと移行した
ため,オーソドックスな左側メカの「TC-K555」としては最終モデルとなり,高い完成度をもつ1台となっていま
した。ソニーらしい明るい音は,力強さも増していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



K555ESを,さらにリファイン。
デジタルソースの完璧なまでの
録音/再生を目指した
新・デジタルリファレンスデッキK555ESⅡ。

◎LC-OFC巻線を採用。さらに音質に磨き
 をかけたレーザーアモルファスヘッド搭載の
 独立懸架3ヘッド方式。
◎安定したテープ走行を実現する,クローズ
 ドループ・デュアルキャプスタン方式。
◎精度の高い回転特性が得られるクォーツ
 ロックダイレクトドライブ方式を採用。
◎シンプル&ストレート思想を徹底した全段
 ツインモノによるDCアンプ構成。
◎音像定位に優れたシンメトリープロセス
 ドルビーIC。
●TYPEⅠ(NORMAL),TYPEⅡ(CrO2),TYPEⅢ(FeCr)
 の3ポジションに±20%のバイアス可変ボリュームを装備
●テープ走行量を分秒単位(デジタル)で表示するリニア電子
 カウンター。テープ残量を直読できる減算機能つき
●-40~+8dBのワイドレンジをFL管で鮮明に表示する
 ピークプログラムメーター。一瞬一瞬のピーク値と約2.4秒
 間のピークホールドを同時表示するダブルインジケーション
 方式も採用
●多機能集中ディスプレイ
●ファインフェザータッチオペレーション
●カウンター連動メモリーストップ
●オートスペースつきREC MUTE
●MPXフィルタースイッチ
●別売リモートコントロールユニットにより,ワイヤード/ワイヤレス
 /フットリモコンなど多彩なリモートコントロールが可能
●別売タイマーによる連続留守録音/目覚まし再生が可能
●別売RM-65の使用により,ソニーのプレーヤーとスタート/
 ストップのタイミングを合わせたシンクロプレイが可能
●金メッキ処理の入出力ジャック
●極性表示つき無酸素銅電源コード




●主な仕様●

ヘッド  消去1,録音1,再生1 
モーター  リニアBSL D.D.モーター1,DCモーター1 
SN比  56dB(EIAJ)
60dB(ドルビーOFF,ピークレベル,METALカセット)
73dB(ドルビーNR・Cタイプ) 
周波数特性(EIAJ)  20~19,000Hz±3dB(METALカセット) 
周波数範囲(EIAJ)  15~20,000Hz(METALカセット) 
ワウ・フラッター  ±0.04%W・PEAK(EIAJ)
0.025%WRMS  
ひずみ率  0.5%(DUADカセット) 
大きさ  430W×105H×330Dmm 
重さ  6.6kg 
消費電力  28W 
※本ページに掲載したTC-K555ESⅡの写真,仕様表等は1985年
 2月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
等すること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
★メニューにもどる        
 
 

★テープデッキPART10にもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system