TC-K777の写真
SONY TC-K777
STEREO CASSETTE DECK ¥148,000

1980年に,ソニーが発売したカセットデッキ。ソニーが1961年に発売したオープンリールデッキの名機
TC-777の型番を受け継ぐカセットデッキで,ソニーの栄光のナンバー777を久々に名乗る力作でした。

ヘッドは,3ヘッド構成で,ソニー独自の独立3ヘッド方式(後に独立懸架3ヘッド方式と称されるようになり
ます)が採用されていました。この方式は,コンビネーション3ヘッドと独立3ヘッドの中間のような構造で,
通常,録音ヘッドと再生ヘッドが一体化されているコンビネーション3ヘッドに対して,録音ヘッドと再生ヘ
ッドを分離構造とし,なおかつ全体の形はコンビネーション型のようなもので,これにより。録音ヘッド再生
ヘッドそれぞれ独立してアジマスの精度が高められ,また,テープのヘッドタッチが安定して得られるという
巧妙な構造でした。

独立方式S&F録再ヘッド

録・再ヘッドには,F&Fヘッドにセンダスト合金のすぐれた特性をプラスした「S&F」ヘッドが搭載されてい
ました。センダスト合金は,磁束密度が大きいため,ダイナミックレンジが広いというすぐれた特性を持ちま
すが,フェライト材より高い周波数でのコア損失が大きいため,単独でコア材すべてにするよりも,他のヘッ
ドコア材と組み合わせて使われるのが通常でした。「S&Fヘッド」では,ガード部とコア部にフェライトが用い
られ,High-μフェライトコアにセンダスト合金チップを複合させた特殊3段構造となっていました。コア部は,
コア材を積層する構造ではなく加工技術でなし得たセンダストチップを用いたソリッド構造でギャップ部の高
い精度を確保していました。また,高硬度石英被膜を特殊蒸着する新開発のギャップ形成法の開発・採用
により,直線性のよいシャープなエッジのギャップとなっており,すぐれた高域特性を実現していました。さら
に,センダスト合金(Si-Al-Fe)に第4の元素を添加して耐食性,耐摩耗性を高め,テープ接触部の鏡面処
理と合わせ,F&Fヘッドに迫る耐摩耗性を確保していました。

テープ走行系は,クローズドループ・デュアルキャプスタン方式で,安定した走行とヘッドタッチを得ていまし
た。キャプスタン駆動用モーターは,ソニー自慢のBSLグリーンモーターでした。これは,B(ブラシ・アンド)
S(スロット)L(レス)モーターの名の通り,トルクムラの原因となるスロットとブラシを取り去ったシンプルな構
造のモーターで優れた耐久性も誇りました。マルチギャップFGによるクォーツロック制御のダイレクトドライブ
により,ワウ・フラッター0.025%(WRMS)の優れた回転精度を実現していました。
テープ走行の操作系は,ロジカルコントロールによるフェザータッチオペレーションで,ボタンのマークが光る
自照式になっていました。

BSLグリーンモータークローズドループデュアルキャプスタン方式
走行メカニズム

録音・再生アンプは,L・Rツインモノ構造がとられ,すべて全段DCアンプ構成がとなっていました。回路のレイ
アウトも,信号の流れにそったものとされ,ヘッドと再生アンプの間は,コンデンサーが排除されたダイレクトカッ
プリングで,さらに,デュアルFET作動2段SEPP回路が採用されていました。また,音質重視のためにマイクロ
ホン回路はあえて搭載されず,マイクロホン回路は,別売のマイクロホンアンプMX-1000(¥48,000)で対
応するという形がとられていました。

MX-1000

電源部は,高能率カットコアトランスによるセパレート構成で,リアパネルから突き出して搭載された大型のもの
が採用されており,極太の電源コードとあいまって,カセットデッキとしては非常に強力な電源部が搭載されてい
ました。
筐体は,シルバーパネルの精悍なのもので,トップパネルには磁性歪みを抑えるためにアルミパネルが採用さ
れていました。

機能的には,TYPET,TYPEU,TYPEV,TYPEWまで,4ポジションのテープセレクターを持ち,ソニー自慢
のDUADカセット(Fe-Crカセット)も使えるようになっていました。さらに,BIAS CAL,REC CAL機能により
テープに合わせてバイアス調整,録音感度調整ができるようになっていました。
レベルメーターは,−40dB〜−10dBのピークプログラムメーターが搭載され,テープカウンターは,4桁デジタ
ル(分秒表示)の電子式・リニア電子カウンターが装備されていました。
ノイズリダクションとしてドルビー(Bタイプ)が装備されていました。搭載されたドルビーは,回路を一つのコンプ
リートICに集積したもので,録再の切替スイッチの排除や部品点数の減少など,特性のバラツキを抑え,信頼
性の向上も図られていました。さらに,音質への配慮のため,MPXフィルターパス回路が採用されていました。
その他,オートプレイ/メモリープレイ,オートスペース付きREC-MUTE,タイマースタンバイスイッチなど,オー
ソドックスな機能が搭載されていました。

以上のように,TC-K777は,当時のソニーのカセットデッキの最上級機として,また,ソニー久々の10万円を
大きく超える価格をもつ高級カセットデッキとして,音質重視のしっかりした作りが特徴でした。栄光のナンバー
777には,ソニーの力の入れ具合が表れていたと思います。後継機としてTC-K777ES, TC-K777ESUと
続くロングセラーモデルとなっていきましたが,この初代モデルのシャープな音には,根強いファンが多いといわ
れています。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



独立3ヘッド,クォーツロックD.D.
クローズドループ・デュアルキャプスタン
全段DCアンプ構成・・・・・・
カセットデッキのリファレンス機をめざします。


◎独立3ヘッド方式
◎クォーツロックD.D.
◎クローズドループ・デュアルキャプスタン
◎全段DCアンプ構成
◎マイクロホン回路をセパレート化
◎BIAS CAL,REC CAL
◎S&Fヘッドによるメタルテープ対応
◎多彩な表示機能をもつ多機能ワイドレンジ
 (−40dB〜+10dB)ピークプログラムメーター
◎デジタル(分秒)表示のリニア電子カウンター
◎ロジカルコントロールによる自照式フェザータッチ
 オペレーション
◎MPXフィルターパス回路採用ドルビーNR
 コンプリートIC
◎オートプレイ/メモリープレイ
◎オートスペース付きREC-MUTE
◎タイマースタンバイスイッチ




●主な仕様●

ヘッド 消去1,録音1,再生1
モーター リニアBSLモーター×2
SN比   60dB(ドルビーOFF,ピークレベル,METALLICカセット) 
周波数特性(EIAJ) 20〜20,000Hz(METALLICカセット)
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
ひずみ率 0.8%(DUADカセット)
大きさ 430(幅)×105(高さ)×390(奥行)mm
重さ 9.5kg
消費電力 32W

※本ページに掲載したTC-K777の写真,仕様表等は1980年11月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引用等すること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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