TC-K8Bの写真
SONY TC-K8B
STEREO CASSTTE DECK ¥128,000

1977年にソニーが発売したカセットデッキ。当時のソニーの最高級機で,メカニズム,回路とも
ソニー伝統のデッキ技術が生かされたもので,信頼性の高い高性能なものでした。また,メーター
部には最新の液晶メーターが搭載され,個性を発揮していました。

走行系は,2モーター方式が採用され,定速走行用のFG周波数サーボモーターと,早巻き用の
ハイトルクモーターを専用化して,複雑な伝達機構を排除したシンプルで信頼性の高いメカニズ
ムとしていました。

TC-K8Bの走行系グリーンモーター

定速走行用のFG周波数サーボモーターには,ソニー自慢のグリーンモーターが搭載されていまし
た。このグリーンモーターは,ソニーがモーターの構造から製造方法まで全面的に検討を加えて
改良されたモーターで,高安定性,長寿命,高精度を実現していました。モーターの心臓部にあた
る整流子とブラシでは,材質の選定,最適な位置関係,ブラシの精密加工などを追求し,また絶縁
処理を施した整流子を採用することで,信頼性,耐久性を大きく高め,ノイズを低減していました。
さらに,防振ゴムや,アルミと鉄の三重シールド構造とあいまって静粛性も2倍以上向上させていま
した。この優れたモーターに,FG周波数制御方式でサーボコントロールすることで,高精度な回転
が維持されていました。
この2モーターメカニズムは正立透視型を前提とした作りで,キャプスタン軸や軸受部にもきめ細か
な配慮がなされ,最適なクリアランスがとられるなど,ソニーのノウハウが生かされたものでした。
そして,ダイナミックバランスが確実にとられた直径90mmの大型フライホイールをトルク伝達ロスの
少ない平ベルトで駆動する構造となっていました。これらの優れたメカニズムにより,ワウ・フラッター
は0.045%WRMSという高水準なものとなっていました。

この高精度で安定した2モーターメカニズムの動作は,電磁ソレノイド駆動が採用されていました。
さらに,フェザータッチ操作が採用され,操作ボタンのロック機構や切替のための複雑なレバーなど
が簡素化され,信頼性の高い動作が可能となっていました。このフェザータッチの操作系には,録音
再生,停止,早送り,巻き戻し,一時停止などの操作を電子的にコントロールするロジカル・コントロ
ールが採用され,停止ボタンを経由せずとも他の動作に安全に素早く移れるようになっていました。
また,別売のワイヤードリモコン(RM-30 ¥9,800)での遠隔操作も可能となっていました。

F&Fヘッド

ヘッドには,ソニー自慢のF&Fヘッドが録音・再生ヘッドとして搭載されていました。F(フェライト)&F
(フェライト)の名の通り,コア部だけでなく,ガード部にまでフェライトを使用したヘッドで,長期にわた
って摩耗せず,音質劣化を生じないとともに,すぐれた高域特性をもっていました。また,F&Fヘッド
は高精度な加工が行われ,ヘッドギャップがきれいに直線になっていました。このギャップの精度を
厳密に保つためにギャップ融着材として高硬度無歪みガラスを開発し使用していました。これにより
温度や湿度の変化,径時変化に対してもほとんど影響を受けないヘッド特性となっていました。

このF&F録音・再生ヘッドと再生ヘッドアンプはコンデンサーなどを介することなく直結された「ダイレ
クト・カップリング」となっていました。このヘッドアンプも独自に開発された低雑音トランジスターが使
用され,線材の引き回しからパーツまで考慮されたもので,入力の信号源インピーダンス変化による
レベル変動を抑え,かつ高利得が確保されていました。
電源部も,同社のアンプの電源部と同様にFETバッファ電源が採用されていました。FETにより入力
側電圧の変動(電源リップル)に対するリジェクションが高く,しかも出力インピーダンスが低いなど,
音質へのメリットを持つものでした。

ノイズリダクションとして,ドルビーNR(Bタイプ)が搭載され,FM録音時の19kHzパイロット信号によ
る誤動作を防ぐMPXフィルターも装備されていました。
テープセレクターは,バイアス,イコライザー独立型で,バイアスは,NORMALを中心にアンダーバイ
アスのLOW/オーバーバイアスのHIGHの3ポジション,イコライザーはNORMAL,CrO2ポ ジション
に加えFe-Crポジションも備えた3ポジションとなっており,当時の全てのテープタイプに対応していま
した。
その他機能的には,REC MUTE,タイマー録音機能,カウンターに連動したメモリー・ストップ/プレイ
機能などオーソドックスなものはきちんと装備されていました。

入力は,LINEとMICが備えられ,独立したレベル・ボリュームが装備されており,独立したレベルコント
ロールやミキシング録音が可能でした。また,背面だけでなく前面パネルにもLINE入力端子が装備さ
れ,カセットデンスケなどとの接続も考えた仕様となっていました。

TC-K8Bの大きな特徴である液晶メーターは,当時最新の技術で完成されたもので,−∞〜+5dB
までを左右各64個のエレメントで構成し,ピークレベルが鮮やかな液晶棒グラフで表示されるものでした。
また,ピークホールド機能も装備されていました。このメーターの駆動回路は最新のLSI・4つにまとめら
れ,この駆動回路の素子数は約5200と,TC-K8Bの他の部分の素子数の10倍にも達していました。

TC-K7BUの写真
SONY TC-K7BU
STEREO CASSTTE DECK ¥105,000

TC-K7Uの写真
SONY TC-K7U
STEREO CASSTTE DECK ¥99,800

TC-K8Bには兄弟機として,液晶メーターではなくオーソドックスなアナログVUメーターと3段ピークレベ
ルインジケーターのTC-K7BU(ガンブラックパネル)とTC-K7U(シルバーパネル)が先行して発売され,
メーター以外,同等の機能と性能をもっていました。

以上のように,TC-K8B,TC-K7BU,TC-K7Uは,当時のソニーのカセットデッキの中で先進的かつ
基本をきちんと煮詰めた高性能で使いやすいカセットデッキでした。そのカチッとしたデザインもソニーらし
い格好良さがあったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



完成度を高めた伝統のデッキ技術。
膨大なノウハウが,その価値を
ゆるぎないものにしています。


   27年の淘汰から生まれた
◎信頼のメカニズム
    安定したテープ走行を実現。
◎2モーター,シンプルメカニズム
    高忠実録音・再生するアンプ部の礎。
◎ダイレクト・カップリング・アンプ

◎高安定性,長寿命,高信頼度を実現。
  グリーンモーター

◎美しい音を,いつまでも。F&Fヘッド



●主な規格●



TC-K8B

トラック形式
4トラック2チャンネルステレオ
録音時間
C-120で往復120分
SN比
60dB
(ドルビーNRスイッチOFF・ピークレベル,デュアドカセット)
ドルビーNRスイッチONにてS/N改善量は
5dB(1kHz),10dB(5kHz)以上
総合ひずみ率
1.3%(Fe-Crカセット)
周波数特性
デュアドカセット:20〜18,000Hz,30〜16,000Hz± 3dB
CRカセット:20〜17,000Hz
ワウ・フラッター
0.045%wrms
入力端子
マイクジャック(標準ジャック2)
 最小入力レベル0.2mV(−72dB)
 ローインピーダンスマイク用
ライン入力ジャック(ピンジャック2)(ステレオ標準ジャック1)
 最小入力レベル0.06V(−22dB)
 入力インピーダンス100kΩ
出力端子
ライン出力ジャック(ピンジャック2)
 基準出力0.775V(0dB)100kΩ負荷
ヘッドホンジャック
 負荷インピーダンス8〜32Ω
 レベル可変範囲−46〜−16dB(8Ω負荷時)
メーター部
指示範囲
−40〜+5dB
周波数特性
20〜20,000Hz±1.5dB
アタックタイム
10m/sec
リカバリータイム
750m/sec
オーバーシュート

表示エレメント数
64(L,R各チャンネル)
電源
AC100V,50/60Hz
消費電力
26W
大きさ 430W×170H×310Dmm
重さ 10.8kg






TC-K7U/K7BU

トラック形式
4トラック2チャンネルステレオ
録音時間
C-120で往復120分
SN比
60dB
(ドルビーNRスイッチOFF・ピークレベル,デュアドカセット)
ドルビーNRスイッチONにてS/N改善量は
5dB(1kHz),10dB(5kHz)以上
総合ひずみ率
1.3%(Fe-Crカセット)
周波数特性
デュアドカセット:20〜18,000Hz,30〜16,000Hz± 3dB
CRカセット:20〜17,000Hz
ワウ・フラッター
0.045%wrms
入力端子
マイクジャック(標準ジャック2)
 最小入力レベル0.2mV(−72dB)
 ローインピーダンスマイク用
ライン入力ジャック(ピンジャック2)(ステレオ標準ジャック1)
 最小入力レベル0.06V(−22dB)
 入力インピーダンス100kΩ
出力端子
ライン出力ジャック(ピンジャック2)
 基準出力0.775V(0dB)100kΩ負荷
ヘッドホンジャック
 負荷インピーダンス8〜32Ω
 レベル可変範囲−46〜−16dB(8Ω負荷時)
電源
AC100V,50/60Hz
消費電力
26W
大きさ 430W×170H×310Dmm
重さ 10kg

※本ページに掲載したTC-K8B,TC-K7U,TC-K7BUの写真,
 仕様表等は1977年10月のSONYのカタログより抜粋したもので,
 ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
 ください。

   
 
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