TC-R7−2の写真
SONY TC-R7-2
TAPE DECK ¥218,000

1976年にソニーが発売したオープンリールデッキ。ソニーは,1950年に国産初のテープレコーダー
「G型」を開発したブランドで,テープデッキのオリジネーターともいえる存在です。それだけにすぐれた
テープデッキ技術を持ち,多くの名機を作ってきました。1974年にはTC-8750-2(¥550,000)と
いう超高級機を発売するなど,オーディオ用テープデッキにもすぐれた製品が出ていました。
TC-R7-2は,その技術の流れを受け継ぐいわゆる2トラ38機で,すぐれた性能を持つ1台でした。

TC-R7-2の走行系図TC-R7-2のテープ走行部

走行系は,2組のキャプスタンとピンチローラーを持つクローズドループデュアルキャプスタン方式がと
られていました。走行系のモーターは,キャプスタン用に1基,そしてリール用には供給と巻取りそれぞ
れ専用のモーター1基ずつを搭載した3モーター構成となっていました。
キャプスタン用モーターには,ソニー自慢のACサーボモーターが使用されていました。基本的に回転
が滑らかでトルクリップル少なくフラッター成分が少ないACモーターに,FG(周波数発電機)による周
波数サーボがかけられたもので,モーターの回転軸に直結されたFGの出力周波数の変化によりモー
ターの回転数を検出し,正確な回転に制御するようになっていました。このサーボは高い精度を持ち
FGレベルの経年変化や温度変化,パルス的な成分の外来ノイズなどに強く,高い回転精度と信頼性
を実現していました。

ACサーボモーターF&Fヘッド

ヘッドとして,消去1,録音1,再生(2トラック,4トラック)2の計4ヘッド構成で,録音用と再生用に
はソニー自慢のF&Fヘッドが搭載されていました。F&Fヘッドは,10年の研究期間を経て開発さ
れたフェライトヘッドで,コア部だけでなくガード部にもフェライトを使用し,長期間にわたり劣化を生
じにくい構造となっていました。このF&Fヘッドは,(1)従来のパーマロイに比べて桁違いの耐摩耗性
をもち,長寿命,(2)ギャップ接着剤として高硬度無ひずみガラスを開発,使用し,温度,湿度,径時
変化にほとんど影響を受けない高精度なヘッドギャップ,(3)過電流が少なくすぐれた高域特性を持
つなどの特徴がありました。さらに,再生用ヘッドには低域の周波数特性のうねり(コンター)を抑え
るためのコンターエフェクト改善型のF&Fヘッドが使用されていました。
また,F&Fヘッドと再生アンプの初段は,コンデンサーなどを介さずに直結されたダイレクトカップリ
ング方式がとられ,歪み率,SN比などの点で改善が図られていました。

ソニーはオープンリールデッキに搭載したこれらの技術,ACサーボモーター(AC Servo Motor)
クローズドループデュアルキャプスタン(Closed  Loop Dual Capstan),F&Fヘッ ドFerrite & 
Ferrite Head)のそれぞれのイニシャルをつなげ「Secloff(セクロフ)」と称し,1973年に発売され
たTC-7750-2(¥158,000)以来,一貫したシリーズ名として名乗っていました。

走行系の操作は,ロジカルコントロールが採用されていました。録音,再生,早送り,巻き戻し,一時
停止などの操作を電子的に制御するもので,フェザータッチでしかも停止ボタンを押さずに次の動作
に移れる軽快さ操作が実現していました。リール軸に直結したFGが回転を検出し,テープが停止す
ると次の動作に移るようになっているため,安全で確実,迅速な動作が可能となっていました。
また,別売のリモコンRM-30(¥9,800)を使用してのリモートコントロールも可能でした。

テープセレクターは,バイアス/イコライザー独立3段切替え方式で,バイアス(LOW/MED/HIGH)
イコライザー(NORMAL/SLH/Fe-Cr)を備え,ソニー自慢のDUAD(Fe-Cr)テープにも対応して
いました。DUAD(デュアド)テープは,高音用,中低音用に,ふたつの異なる磁性体(高抗磁力材,
抵抗磁力材)を二層に塗り分け,相互の特徴を引き出そうとしたテープで,カセットテープでも発売
されました。通常のテープに対し,全域に渡ってダイナミックレンジが拡大(400Hzで+4.5dB,
12.5kHzで+7dB,20kHzで+10dB)されるというすぐれた性能を誇りました。

入力は,MIC,LINEそれぞれL・R各1系統ずつ備えられ,それぞれにREC LEVELツマミが装備
されておりMIC/LINEのミキシングも可能でした。また,MIC入力には3段切替え(0,15,30dB)の
マイクアッテネーターが装備されていました。また,MIC入力からの録音時のハウリングを防ぐため
に,録音時に自動的にLINE OUTをカットするモニターミューティングスイッチも装備されていました。

以上のように,TC-R7-2は,オープンリールデッキとして,バランスの取れた設計とすぐれた性能を
持ち,ソニーの高いデッキ技術を示した1台でした。現在でもその余裕ある録音性能は,録音機とし
て一級の性能といえるでしょう。

また,TC-R7-2には姉妹機として,4トラック・19cm/sec録音・再生型のTC-R6もありました。ヘッ
ドブロック以外の走行系等の部分はほぼ同一で,コストパフォーマンスの高い1台でした。

TC-R6の写真
SONY TC-R6
TAPE DECK ¥198,000


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



OPEN IN Secloff
 Closed Loop Dual Capstan
 F&F Head
 AC Servomotor

聴感による細かいツメが,時を超えた存在価値を
もたらしました。物理特性との絶妙なバランスを示す
2トラ38デッキです。

 ◎F&Fヘッドと再生アンプとのダイレクトカップリング
 ◎3モーター
 ◎クローズドループ・デュアルキャプスタン
 ◎ロジカルコントロール
 ◎モニターミューティングスイッチ
 ◎バイアス/イコライザー独立3段切替えのテープセレクター
 ◎4ヘッドシステム
 ◎別売プログラムタイマーの併用で,連続留守録音,目覚まし再生可能
 ◎別売RM-30の併用でREC-MUTE(無音録音)を含む
  フルリモートコントロール可能
 ◎編集に便利な後追い録音可能
 ◎録音・再生独立モニター回路
 ◎L・R独立録音モードスイッチ
 ◎ライン,マイクミキシング
 ◎マイクアッテネーター(15dB,30dB)
 ◎リールサイズ切替えスイッチ




●主な仕様●

 
TC-R7-2
TC-R6
テープ形式
2トラック,2チャンネル(4トラック再生)
4トラック,2チャンネル
テープスピード
38cm/sec,19cm/sec
19cm/sec,9.5cm/sec
ヘッド
消去1,録音1,再生2(2トラック・4トラック)
消去1,録音1,再生1
モーター
キャプスタン用FGつきサーボモーター:1
リール用モーター:2
キャプスタン用FGつきサーボモーター:1
リール用モーター:2
SN比
64dB(DUADテープ)
61dB(DUADテープ)
周波数特性
38cm/sec時30〜30,000Hz
19cm/sec時30〜25,000Hz
 (±3dB,DUADテープ)
19cm/sec時30〜25,000Hz
 (±3dB,DUADテープ)
ワウ・フラッター
38cm/sec時0.018%WRMS
19cm/sec時0.04%WRMS
19cm/sec時0.04%WRMS
ひずみ率
0.5%(DUADテープ)
0.7%(DUADテープ)
大きさ
445W×525H×235Dmm
445W×525H×235Dmm
重さ
26.5kg
26.5kg
消費電力
80W
80W


※本ページに掲載したTC-R7-2,TC-R6の写真,仕様表等は
 1980年5月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株
 式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
 ださい。

   
 
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