National Technics1(SB-1204)
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥18,000(発売当時)
                      ¥20,000(1970年)
1965年に,ナショナル・松下電器(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。松下電器は,総合家電
メーカーとして,古くから電蓄をはじめオーディオに携わっていました。特に,スピーカーやフォノモーターなど
の分野では高い技術力が評価されていました。しかし,当時の松下電器は,オーディオに関してはパーツメー
カーという見方もされていました。そうした中スピーカーユニットにおいても,ダブルコーンスピーカー8W-P1
(1954年発売・通称ゲンコツ)などすぐれたユニットを発売し,高い評価を得ていました。この松下電器が,
小さな組織で高級・高性能なスピーカーシステムをつくろうという発想を実現させて1965年にスタートしたの
がテクニクスブランドでした。そのテクニクスの名を冠した最初の製品がテクニクス1でした。

テクニクス1は,エンクロージャーの奥行き方向がちょうどA4サイズで,まさにブックシェルフ型といえる小型
のブックシェルフ型スピーカーシステムでした。ユニット構成は2ウェイで,バッフル板,裏板の継ぎ目から空
気が漏れないようにパッキングを用いて完全に密閉された完全密閉型エンクロージャーでした。





ウーファーは,12cm口径のコーン型ユニット12PL50が搭載されていました。12PL50は単売もされている
スピーカーユニットで,小型キャビネットに取り付けた場合にすぐれた低域特性を示すように設計されたもので
した。当時,テクニクスが早くから取り組んでいた超小型システムで低音を再生する研究が生かされたもので,
振動板のマスを増やすことによって最低共振周波数を下げる工夫がされていました。コーンは,スティフネス
(剛性)が大きく,適度の損失をもったパルプコーンで,独特の製法により,大入力が入った場合のコーンの変
形による歪みが少なく,中高音部にかけての特性の凹凸が抑えられていました。エッジには,振動板とは別材
質で作られたUL(ウルトラリニア)エッジが採用され,最低共振周波数が低く抑えられ,エッジ部の非直線性歪
も抑えられていました。

トゥイーターは,ホーン型の5HH17が搭載されていました。軽くて剛性の高いプラスチックフィルムのダイアフ
ラムにダイカスト製のショートホーンに組み合わせたシンプルな構造で,安定した特性を確保しつつ大量生産
も可能で,驚くほどのコストパフォーマンスが実現されていました。安価ながら,驚くほどフラットな特性とすぐれ
た指向特性を実現しており,当時,技術者が測定器の故障を疑ったというエピソードも残っているほどでした。
また,単売された5HH17は,ベストセラーとなり,実際,当時のヒヤリングテストで,何万円もするトゥイーター
にも負けない音との評価を受けることもありました。そして,このユニットは,テクニクス飛躍の第1歩ともなりま
した。

以上のように,テクニクス1は,テクニクスブランドの第1弾の商品として,小型ながら本格的な再生能力をもつ
スピーカーシステムとして高い評価を受けました。当時,1964年発売の,イギリスのグッドマンのマキシムが話
題となっており,その真似との評価もありましたが,実際には松下電器も早くから小型システムの研究をしてお
り,独自開発であったことは間違いないようです。高さ30cmほどの小型システムであるだけに,さすがに大型
システム並みとはいいませんが,サイズを超えたしっかりした再生音はバランスのとれたものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ブックシェルフ時代を決定づけた
超小型2ウェイスピーカシステム

テクニクスの第1弾として発売以来,すでに4年余。アンプ,プレヤー
との組合わせに妥協を許さないスピーカシステムとして,この種のシステ
ムの代表作になっています。とくに,中音域の再生は美しく,そのみが
きあげられた音色は,世界のいかなるスピーカシステムにも,追随を許
さない”音響芸術品”として,音響の権威者から高く評価されています。

◎小型強力ウーハを使用
◎ツィータにホーン型を採用
◎完全密閉ボックス




●定格●

形式  2ウェイ完全密閉型 
再生周波数  40~20,000Hz 
V.C.インピーダンス  8Ω 
許容入力  12W 
音圧レベル  93dB(1kHz) 
クロスオーバー周波数  3,500Hz 
外形寸法  164W×297H×210Dmm 
重量  4.4kg 
使用スピーカ  ウーハ:12cm
ツィータ:ホーン型 
※本ページに掲載したTechnics1の写真,仕様表等は1967年3月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社
 に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
転載,引用
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