ｍａｒａｎｔｚ Ｔｔ-１０００
Ｄｉｒｅｃｔ Ｄｒｉｖｅ Ｐｌａｙｅｒ Ｓｙｓｔｅｍ
Ｔｔ-１０００Ｌ（アームレスモデル） ￥３６０，０００
Ｔｔ-１０００Ｓ（ＳＭＥ ＳｅｒｉｅｓⅢ標準）￥４３０，０００
１９８０年にマランツが発売した高級プレーヤーシステム。アームレスモデルもあったのでターンテーブルと
いうべきかもしれませんが，とにかくキャビネットにガラスを使ったユニークかつ美しいプレーヤーでした。
Ｔｔ-１０００の最大の特徴は外観からも分かるように，高精度なガラス製ソリッドベースにありました。デザイ
ンの美しさもさることながら，無共振を追い求めてのガラスの採用だったようです。そのため，このソリッドベ
ースは，ガラスの１枚板ではなく，写真からも分かるように，８mm厚のアルミ板の上下に，平面の精度を高
めた肉厚１５mm・重量７．５ｋｇの特殊ガラスを抱き合わせた構造になっていました。「質量の異なる物質を
サンドイッチ構造で使用すると，振動エネルギーを熱エネルギーへと変換することができる」という振動理論
に基づいた無共振設計で，実際，キャビネットを挙でたたいてもコツンという乾いた堅い音がするだけで，共
振が抑えられていることが感じられ，ハウリングや残響の発生が抑えられたまさに無共振構造となっていま
した。
ターンテーブルは，ターンテーブルシートも含め３．４ｋｇの重量級のものを搭載していました。また，キャビネ
ットに加え，通常ゴムなど振動を吸収する素材が使われるターンテーブルシートにも５mm厚の硬質ガラスが
使われ，振動を吸収するのではなく，振動そのものを受けつけない構造として，クリアーな音質を実現してい
ました。
優れた無共振性能を誇るキャビネットとターンテーブルを支えるインシュレーターにはエアーサスペンションタ
イプを採用し，全体を水平に保つ高さ調整も可能になっていました。
重量級ターンテーブルを駆動するモーターには，１．６ｋｇの起動トルクを持つ特注のハイトルクＤＣモーター
（マイクロのＯＥＭ？）が搭載され，１／２回転で定速回転に達するようになっていました。回転精度の面では
ドリフトなど静的な負荷変動に対しては全周検出型のクォーツロック機構，動的な負荷変動に対しては，重
量級ターンテーブルの慣性モーメントという形で高精度で正確な回転を実現していました。パワースイッチ及
び回転数切換スイッチはタッチセンサー方式が採用され，無共振設計のため，振動を与えずに操作ができる
ようになっていました。また，定速回転に達するとＬＥＤインジケーターで示され，ストップボタンで素早く停止
する電磁ブレーキ機構も搭載していました。さらに，モーターを駆動する電源部の電磁誘導によるハムを防ぐ
ため，独立型のパワーサプライ方式となっていました。
アームベースには，大きな塊から削り出したアルミのムク材を使用し，このアームベースを回転させることによ
って有効長１９０mmから２３０mmまでのアームに対応できるようになっていました。また，左奥に設けられたサ
ブアームスペースを利用してダブルアームにブレードアップすることも可能でした。
アーム搭載モデルＴｔ-１０００Ｓには，ＳＭＥｓｅｒｉｅｓⅢを標準装備していました。このアームは，カートリッジのロ
ーマス化に対応した設計のＳＭＥの当時の最新のアームで，ナイフエッジ軸受け機構・キャリングアーム方式
採用など無共振・高感度の設計で，軸受け部・ヘッドシェル・メインウェイトなど主要な部分にカーボンファイバー
を使用し，パイプ部分には極薄チタニウムを使用していました。このチタニウムパイプには表面を窒素硬化処理
内部にはライニング処理が施されてさらに優れた感度と伝送性能を実現していました。
以上のように，Ｔｔ-１０００は，アナログプレーヤーの分野ではあまり知られていなかったマランツブランドから突
如として登場した高級プレーヤーでした。美しいデザインと優れた性能が実に印象的な１台だったと思います。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
