SANSUI TU-707
AM/FM STEREO TUNER ¥54,800
1977年に,サンスイが発売したFM/AMチューナー。サンスイはプリメインアンプの分野ですぐれた
製品を送り出してきたブランドでしたが,アンプとペアを組むチューナーにおいてもオーソドックスなが
らすぐれた製品を送り出してきました。そんなサンスイが,前年に発売したAU-707,AU-607との
ペアを想定して作り上げたチューナーがTU-707でした。
FMフロントエンドは,高周波段に低雑音デュアルゲートMOS型FETを使用し,新開発のワイドギャッ
プの精密周波数直線型4連バリコンを組み合わせ,高感度及び混信妨害除去能力を向上させていま
した。精密周波数直線型バリコンは,ワイドギャップ構造のため,周波数安定度が改善され,ダイヤル
目盛の精度も向上していました。
FM IF部は,差動IC5個による合計10段の全差動増幅回路を採用し,十分な増幅度とリミッター特
性を確保していました。選択度は2段切替になっており,NARROWでは,リニアフェイズセラミックフィ
ルターにより,80dB以上(IHF,400kHz)の高選択度を実現していました。WIDEでは,厳選したリニ
アフェイズセラミックフィルター4素子と群遅延等価回路を組み合わせ,0.08%以下(STEREO,
1kHz)の低歪率と50dB(IHF,400kHz)の選択度を実現していました。この選択度切替えは,ダイ
オードスイッチ回路により正確に行われ,さらに,10段差動リミッター回路により,AM成分を確実に
除去するようになっていました。
検波回路には,Sカーブの直線性にすぐれた1.4MHz,P-Pワイドレンジ・レシオ検波回路を搭載し
ていました。微分利得特性のうねりを0.5%以内に抑え,その帯域幅を220MHzに拡張し,検波歪
を最小限に抑え,高SN比を実現していました。また,一般的にIF回路と同一基板に配置される検波
回路を,IF基板から分離し,シールドケース内に収納し,スプリアスレスポンス比の向上を図り,確実
な動作を実現していました。
MPX部には,温度,湿度などによる経年変化に強く,安定した動作が可能なPLL方式が採用されて
いました。また,PLL用ICのバッファーアンプにNF回路技術を応用し,スイッチング歪の低減を図っ
ていました。さらに,次段のオーディオアンプは,ローノイズトランジスタ2段直結回路,エミッタフォロ
ワー1段構成による低歪率設計で,DCプリメインアンプ同様に,オーディオ特性の充実を図ってい
ました。
電源部は,各回路に安定した電源供給を行うため,誤差増幅型(出力電圧が変化してもフィードバッ
クで出力の変動を抑える方式)の強力定電圧電源回路を採用していました。また,電源部が音質に
及ぼす悪影響を抑えるため,低インピーダンス化を図り,低音域まで高セパレーションを実現してい
ました。
AM部は,周波数直線型2連バリコンとAM専用高集積度モノリシックICを使用し,構成していました。
また,AM IF部に選択度特性の高いセラミックフィルターをLCブロックを内蔵し,高感度のフレキシ
ブルバーアンテナ搭載により,すぐれた受信性能と音質を確保していました。
機能的には,局間ノイズを90dB以上の減衰比でシャープにカットするダブルミューティング方式の
FMミューティングスイッチ,位相進相型で約400Hz,-3dBのキャリブレーショントーンを発振す
るキャリブレーション・レベルスイッチ,ノイズキャンセラースイッチ,出力レベル調整ツマミ,などが
装備されていました。
ダイヤルスケールは,リニア表示の大型スケールで,メーターは,シグナルメーターとセンターチュー
ニングメーターが搭載された2メーター方式となっていました。
以上のように,T-707は,サンスイが積み重ねてきたチューナー作りの技術をオーソドックスにまと
めあげたチューナーで,新しいプリメインアンプ「07シリーズ」とのペアとして作り上げられた,受信性
能と音質のバランスのとれた1台でした。白いダイヤルスケールの美しい照明とブラックパネルの生
み出すサンスイらしさを感じさせるデザインと温かみのある音は,今でも魅力あるものと感じます。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
FMのクオリティを表現する
低歪率,高SN比の最新回路技術。
◎高感度FMフロントエンド
◎WIDE,NARROW選択度切替え可能
10段差動増幅型リミッター回路のFM IF部
◎低歪率設計のワイドレンジ・レシオ検波回路
◎高安定度,音質重視のMPX部
◎誤差増幅型定電圧電源回路を採用
◎音質の良いAM部
◎局間雑音をカットするFMミューティング
◎録音テクニックを発揮できる発振器を内蔵
●ノイズキャンセラー・スイッチ
●同調のしやすいシグナルメーターとセンター
チューニングメーターの2メーター方式
●リニヤー表示の大型ダイヤルスケール
●出力レベル調整可能
●FM用300Ω/75Ω同軸用アンテナ端子
●高感度フレキシブル型AMバーアンテナ
●FM部●
実用感度(IHF) MONO 9.8dBf(旧IHF1.7μV)
STEREO 15dBf(旧IHF4.5μV)50dBクワイティング感度(IHF) MONO 15dBf(3.1μV)
STEREO 37.2dBf(40μV)SN比(65dBf) MONO 80dB以上
STEREO 78dB以上ハム及びノイズ(65dBf) 76dB 全高調波歪率 MONO,IHF,65dBf
100Hz 1kHz 6kHz
WIDE 0.08%以下 0.06%以下 0.08%以下
NARROW 0.15%以下 0.15%以下 0.25%以下
STEREO,IHF,65dBf
WIDE 0.2%以下 0.08%以下 0.18%以下
NARROW 0.22%以下 0.2%以下 0.25%以下混変調歪率(IHF,65dBf) MONO:0.06%以下
STEREO:0.065%以下キャプチュアレシオ 1.2dB以下(WIDE) 隣接局選択度(IHF,400kHz) 50dB以上(WIDE)
80dB以上(NARROW)スプリアスレスポンス比(IHF) 92dB以上(83MHz) イメージレスポンス比(IHF) 80dB以上(83MHz) IFレスポンス比(IHF) 100dB以上(83MHz) RF相互変調(IHF) 64dB以上(83MHz) AM抑圧比(IHF) 60dB以上 ステレオセパレーション 100Hz:41dB以上
1kHz :45dB以上
10kHz:38dB以上
30Hz~15kHz:36dB以上
●AM部●
実用感度(IHF,バーアンテナ) 48dB/m(250μ/m) 選択度(±10kHz) 35dB以上 SN比 48dB以上 全高調波歪率 1.2%以下(30%変調,80dB/m)
1.6%以下(80%変調,100dB/m)イメージレスポンス比(IHF) 45dB以上(1,000kHz) IFレスポンス比(IHF) 60dB以上(1,000kHz) ●その他●
出力電圧/インピーダンス 可変出力:0~1V以上(600Ω) 定格消費電力(電気用品取締法) 20W 寸法 430W×168H×402Dmm 重量 8.7kg ※本ページに掲載したTU-707の写真,仕様表等は1977年3月の
SANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等するこ
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