TU-777の写真
SANSUI TU-777
SOLIDSTATE STEREOPHONIC TUNER ¥37,800

1968年に,サンスイが発売したFM/AMチューナー。日本では,FM放送は1957年に始まり,オーディオソースの
主流を占めていました。これは,当時の物価からするとレコード=アナログディスクは非常に高価なもので,おいそれ
と買えるものではなかったことが一因でした。そして,1963年にはFMマルチステレオ放送の実験放送が始まり,FM
ステレオチューナーの時代がスタートしました。そして,FMステレオ放送の本放送は1969年に始まることとなりまし
た。そうした中,各オーディオメーカーも,FMステレオチューナーを発売していきました。当初は,チューナーもいろいろ
なサイズやデザインのものが登場しましたが,このTU-777もそうした中の1台でした。

TU-777は,前年に発売された,サンスイ初のオールシリコントランジスター型プリメインアンプAU-777とのペアを想
定されたチューナーで,ブラックパネルのデザイン,パネルの高さなども揃えられていましたが,パネル幅はやや狭く設
定され,周波数表示が横行スケールではなくグリーンのリングサーキュラーダイヤル(円形ダイヤル)表示になっている
ところが大きな特徴でした。この当時,サンスイ自身も,チューナーのデザインについて模索していたことがうかがえる
と思います。

フロントエンドは,初段にジャンクションFET,RF2段目とミキサー,オシレーター回路にシリコントランジスターを使用し
4連バリコンを搭載したもので,高感度を実現していました。
IF部は,シリコントランジスター採用のIF5段の中間周波部とリミッター4段で,高増幅度,高安定度,低雑音,低歪率
を実現していました。
フロントエンドには2段,IF部には,特にAGC専用に非同調段を1段設けた3段AGCとなっており,110dBの強入力時
でも歪まず,強電界での選択度も十分確保され,高い信頼性が実現されていました。

IF段とフロントエンドの電源は,ツェナーダイオードの安定化電源を採用し,特にフロントエンドは局部発振器を完全に
温度補償し,さらに電源の安定化で,局部発振器のドリフトを最少限に抑え,AFC回路を排除することに成功していま
した。
ノイズキャンセラーは,従来のハイカット方式ではなく,周波数の高い可聴範囲をカットすることなく,ノイズを取り除くこ
とができる新方式が採用され,4段リミッターとあいまって,ノイズがしっかりと抑えられるようになっていました。
メーターおよびミューティング専用アンプが特に設けられ,同調点をシャープにして受信周波数の中心に確実に合わせ
られるようになっていました。
マルチプレックス回路は,シリコン化をはかったうえ,安定度,信頼度の高いスイッチング方式が採用され,チャンネル
セパレーション35dBというすぐれた特性を実現していました。FM STEREOとFM MONOは,現在のチューナーと
同様に,FM AUTOにしておけば,電子スイッチで自動的に切り換わり,電波状態によりFM STEREOとFM MO-
NOを,スイッチでも切り換えられるようになっていました。

FMアンテナは,300Ωと75Ωの2回路のインピーダンス端子が設けられ,さらに,ローカル・ディスタンススイッチで
20dBダウンのアッテネーターが装備されており,フィーダー,同軸ケーブル,ロッドアンテナなど,様々なアンテナ環境
に対応できるようになっていました。
AM部は,RF1段3連バリコンが搭載され,フェライトバーアンテナが内蔵され,高感度が確保されていました。
出力回路は,半固定の出力レベルアジャスタが装備され,アンプのゲインに応じて調整ができるようになっていました。
また,FMマルチプレックスのセパレーションアジャストも装備されていました。

以上のように,TU-777は,FMステレオチューナー黎明期ながら,回路的にも操作系においても非常に完成度が高
く,使いやすい1台となっていました。円形ダイヤル表示の個性的なデザインも。今見ると魅力的なものに感じます。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



雑音と歪を徹底的に追求した
FET内蔵の高級チューナー


◎FET内蔵のフロントエンド
◎IF5段,リミッター4段
◎3段AGCで,抜群の安定度
◎低雑音,高感度なFMチューナー部
◎ツェナーダイオードによる安定化電源
◎新方式のノイズキャンセラー
◎シャープな同調回路
◎オールシリコン化のマルチ回路
◎純電子式FMステレオ・モノ切替
◎FMアンテナは300Ωと75Ωの
 いづれも使用可能
◎RF1段3連バリコンのAMチューナー部
◎出力レベルアジャスター





●規格●

■FMセクション■

受信周波数
76〜90MC
感度
1.4μV±3dB(20dB quieting)
1.8μV±3dB(IHF)
全高調波歪率
0.8%以下(入力60dB,100%MOD)
S/N比
65dB(入力60dB,100%MOD)
選択度
50dB以上
イメージ比
80dB以上
IFリジェクション 95dB以上
キャプチュアーレシオ
2.5dB(IHF)
スプリアス レスポンス
90dB以上
FMステレオ・セパレーション
35dB以上
不要輻射
34dB以下
ローカル/ディスタンス スイッチ
ローカル:20dBダウン
ディスタンス:ダイレクト


■AMセクション■

受信周波数
535〜1,605KC
感度
15μV±3dB(20dB S/N,1,000KC)
イメージ比
50dB(1,000KC)
IFリジェクション
100dB以上(1,000KC)
選択度
20dB以上(1,000KC)



■オーディオ出力・その他■

定格出力電圧
2V(0〜2V可変)
負荷インピーダンス
100kΩ以上
使用半導体
トランジスタ:28,FET:1,IC:3,ダイオード:24
電源電圧
100V 50/60cps
消費電力
10VA
寸法
345W×155H×334Dmm
重量
7.7kg

※本ページに掲載したTU-777の写真,仕様表等は1968年の
 SANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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