SANSUI TU-9500
FM/AM STEREO TUNER ¥68,000

1972年に,サンスイが発売したFM/AMチューナー。当時の同社の最高級プリメインアンプAU-9500
のペアを想定されたチューナーで,同社のチューナーとしては最上級機にあたり,ブラックパネルの精悍な
デザインはサンスイらしさをしっかりと主張していました。

FMフロントエンドには,新開発の周波数直線型5連バリコンとノイズの少ないデュアルゲートMOS型FET
が3個使用され,高周波増幅2段とミキサー段が構成されていました。同時に,高周波増幅とミキサー段の
間を複同調として,許容入力130dBが確保され,強電界にも安定した受信が可能となっていました。

IF段は,広帯域で選択度にすぐれた,新開発ユニ・ウェファ型2素子セラミック・フィルターを4段(合計8段)
構成で搭載し,選択度特性が大きく高められていました。さらに,位相ズレなどを補正するフェイズ・リニアー
のすぐれた独自の回路構成になっており,歪み最小範囲が広く,低域から高域までのセパレーションも向
上し,位相ズレによる歪みも抑えられていました。
リミッター段は,IC3石による3段とダイオード1段の4段構成となっており,十分なリミッター効果が得られ,
キャプチュアレシオ1.5dB,AM抑圧比,SN比は75dB以上を完全に確保していました。
FM信号を復調するディスクリミネーターは,peak to peak 1.1MHzの広帯域が確保され,ダイナミック
レンジも大きく改善されていました。

MPX部には,通常,当時アメリカ等ではすでに有料放送として行われていたサブキャリア波を利用したSCA
放送(後に日本ではVICS,FM文字多重放送などに使用された)の干渉妨害をカットするSCAフィルターが
搭載されていましたが,LC素子を使ったSCAフィルターは減衰特性が必要周波数帯域をカットする際に位
相ズレが発生し,セパレーションの劣化,歪みの発生の原因となるものでした。そこで,TU-9500では,SCA
を電子的にキャンセルするD.D.C.(差動復調回路)を採用し,SCAフィルターをなくし,セパレーション特性が
改善されていました。

AM部は,新開発の広帯域高選択度コイル,2素子セラミック・ヤーマン型フィルター,さらに高周波増幅1段
3連バリコンが採用され,高感度,高選択度,すぐれた音質を確保して,AM受信も重視した設計になってい
ました。

電源部は,トランジスターとツェナーダイオードを使用し,リップルや電圧変動を追放した定電圧回路が搭載され
SN比を高めていました。また,内部構造は,各部のシールドをしっかりと行い,各部の干渉を低減していました。

ペアを想定されたプリメインアンプAU-9500と同一サイズ(幅500mm,高さ140mm)に揃えられた幅広の精悍な
ブラックパネルに,ブラックアウト・グリーンの幅いっぱいの横行スケールと見やすいセルフライティング指針が印象
的なパネルデザインとなっていました。メーターもシグナルストレングスとセンターチューニングの2メーター方式と
なっていました。
機能的には,オーソドックスながら比較的多機能なチューナーとなっていました。ONにするとFM放送受信時には
10kHzの高域をカットすることなくステレオノイズを抑えるMPXノイズキャンセラーとして,AM放送受信時には,7
kHz以上のビートノイズをカットするホイッスル・フィルターとしてはたらくノイズサプレッサースイッチ,局間ノイズ,離
調,同調時のポップノイズを抑えるFMミューティングスイッチが装備されていました。FMミューティングはリアパネル
のアジャスターでミューティングのかけ具合をコントロールすることができるようになっていました。

出力は,アンプ用と録音用の2系統装備され,アンプ用出力は,フロントパネルにあるツマミでレベル調整ができる
ようになっていました。その他,将来の4chディスクリート放送が実現したときに(結局実現しませんでしたが・・・。)
4chアダプターを接続するためのディスクリミネーター出力端子,マルチパスを調べるためのマルチパス観測端子が
装備されていました。また,1系統ACアウトレット(UNSWITCHED)も装備されていました。
FMアンテナの接続端子は,ワンタッチ式の300Ωと75Ωの端子,さらに同軸ケーブル用のF型コネクターも装備さ
れていました。

以上のように,TU-9500は,当時のサンスイのチューナーの最上級機として,精悍なデザインの筐体にしっかりと
技術と物量が投入された力作でした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




新開発FM/AM8連バリコン,位相特性にすぐれた
IF段,D.D.C.採用のMPX部など最新の回路技術
を駆使

0.3%以下(1kHz)の
低歪率ステレオ受信を実現

◎歪率0.3%以下(1kHz)
 きれいなステレオ受信ができます
◎位相補正を行い,
 歪を少なくした独特のIF段
◎D.D.C.(差動復調回路)を採用して
 セパレーションや位相の乱れを大幅に改善
◎許容入力130dB・・・強電界地域での
 大入力にも美しい受信を約束します
◎感度,選択度,音質のすぐれたAM受信
◎定電圧電源回路
◎ノイズ・サプレッサー・スイッチ
◎同調点が容易に得られる
 ワイド・リニアスケールと大型2メーター
◎ミューティング・コントロールにより
 FMミューティングの調整が可能
◎ディスクリミネーター出力端子
◎マルチパス観測端子
◎アンテナ入力の損失が少ない
 75Ω同軸ケーブル専用F型コネクター

●アンプ用と録音用の2回路の出力端子
●アンプ用出力レベル調整ツマミ
●FM,FM STEREO,AMインジケーター
●ACアウトレット(UNSWITCHED)




●規格●

■FM部■

受信周波数 76〜90MHz
感度(IHF) 1.7μV
クワイティングスロープ
(入力傾斜特性)
40dB:1.7μV,50dB:3μV,60dB:10μV,70dB:50μV
全高調波歪率 0.2%以下(モノーラル),0.3%以下(ステレオ)
SN比 75dB以上
選択度 80dB以上
キャプチュアレシオ(IHF) 1.5dB
イメージ・フリクエンシー・リジェクション 100dB以上
IFリジェクション 100dB以上
ステレオセパレーション  40dB以上(400Hz),30dB以上(10kHz) 
周波数特性(ステレオ) 30Hz〜15kHz+0.5dB−2.0dB



■AM部■

受信周波数 535〜1,605kHz
感度(バーアンテナ) 46dB/m
選択度 25dB以上
イメージ・フリークエンシー・リジェクション 100dB/m以上(1,000kHz)
IFリジェクション 100dB/m以上(1,000kHz)



■その他■

出力 0〜1.0V
0.4V(TAPE REC)
消費電力 20W(最大25VA)
寸法 500W×140H×347Dmm
重量 9.5kg
※本ページに掲載したTU-9500の写真,仕様表等は1972年のSANSUI
 のカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じ
 られていますのでご注意ください。

 

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