ＳＡＮＳＵＩ ＴＵ-Ｄ６０７
ＤＩＧＩＴＡＬＹ ＱＵＡＲＴＺ ＬＯＣＫＥＤ ＴＵＮＥＲ ￥４９，８００
ＳＡＮＳＵＩ ＴＵ-Ｄ６０７
ＤＩＧＩＴＡＬＹ ＱＵＡＲＴＺ ＬＯＣＫＥＤ ＴＵＮＥＲ ￥４９，８００
１９７８年に，サンスイが発売したＦＭ/ＡＭチューナー。サンスイは，１９７６年より新たにプリメイン
アンプにおいて「０７シリーズ」を展開し，１９７８年には「９０７シリーズ」を発売し，ペアとなるチュー
ナーとしてＴＵ-Ｄ６０７を発売し，翌年には，上級機ＴＵ-Ｄ７０７を発売しました。サンスイも本シリー
ズ以降は，シンセサイザー方式に移行していくことになり，この両機種は同社最後の世代の本格的
なバリコン式チューナーでもありました。
ＴＵ-Ｄ６０７は，同調を安定させるシステムとして，「デジタリー・クォーツロック・システム」を搭載し
ていました。この方式は，水晶発振器を基準にして受信周波数が１００ｋＨｚごとにロックするという
もので，局部発振周波数に誤差が生じても，Ｄ-Ａコンバーターがただちに誤差に比例したフィード
バック電圧を発生し，受信周波数を水晶発振の高い精度で保つというものでした。この方式は，受
信周波数をデジタルで処理しているため，音質や受信性能に悪影響を及ぼすスプリアス妨害や
ＳＮ比の劣化が極少で，他の回路やスペックにもほとんど影響せず，すぐれた音質を保つことが可
能でした。さらに，ロック幅が大きくとってあり，周波数が正確にデジタル表示されるため，同調操
作が容易で，そして，自動ロックＯＮ-ＯＦＦ回路が内蔵されているため，チューニングノブに触れた
ままでもロック状態を保つことが可能となっていました。
ＦＭフロントエンドは，高周波段に低雑音デュアルゲートＭＯＳ型ＦＥＴを使用し，周波数安定度や同
調精度にすぐれたワイドギャップの精密周波数直線型４連バリコンとの組み合わせにより，感度，
混信妨害除去能力を向上させていました。
ＦＭ ＩＦ部は，ダーリントン差動ＩＣを含む３個のＩＣによる差動増幅回路を採用し，十分な増幅度とリ
ミッター特性を確保していました。５０dBクワイティング感度では，ＭＯＮＯで３５．５dBfというすぐれた
特性を実現していました。
また，新開発のリニアフェイズ・セラミックフィルターと，その性能を最大限に生かすダーリントン差動
ＩＣを採用し，入力電波のレベル変動にかかわらず群遅延特性が平坦になり，性能が高められてい
ました。
ＭＰＸ部には，温度，湿度などによる経年変化に強く，安定した動作が可能なＰＬＬ方式が採用され
ていました。さらに，ＦＭステレオ信号をＬ・Ｒに振り分けるためのパイロット信号は音楽信号に悪影
響を与えるため，音質に影響を与えずにパイロット信号をキャンセルするパイロットキャンセラーを
内蔵しており，クリアな音質を実現していました。
ＡＭ部は，ＡＭ専用高集積度モノリシックＩＣにより高感度・高安定度を実現し，ＩＦ部には，選択度特
性のよい，高性能ＬＣブロック・フィルターを内蔵し，フレキシブル型バーアンテナにより，すぐれた
ＡＭ受信性能を実現していました。また，ＦＭ部のデジタリークォーツロック・システムは，ＡＭにおい
ても受信周波数のデジタル表示を可能としており，正確なチューニングを容易にしていました。
オーディオ部には，プリメインアンプ同様にワイドレンジ思想を反映したＤＣアンプ構成を採用し，
ＴＩＭ歪や周波数特性などを高め，電源インピーダンスを低域から超高域まで拡大し，バランスのよ
い音質を実現していました。
電源部は，各回路に安定した電源供給を行うため，誤差増幅型（出力電圧が変化してもフィードバッ
クで出力の変動を抑える方式）の強力定電圧電源回路を採用していました。また，電源部が音質に
及ぼす悪影響を抑えるため，低インピーダンス化を図り，低音域まで高セパレーションを実現してい
ました。
機能的には，局間ノイズをシャープにカットするＦＭミューティングスイッチ，ノイズキャンセラースイッ
チ，出力レベル調整ツマミ，などが装備されていました。
ダイヤルスケールは，白色に黒色の目盛のリニア表示の大型スケールで，メーターは，デジタル周
波数表示とともにＦＬ表示のシグナルメーターとセンターチューニングメーターが装備されていました。
以上のように，ＴＵ-Ｄ６０７は，同社の主力となる新しいプリメインアンプ「０７シリーズのＤシリーズ」
のペアとして作り上げられたチューナーとして，サンスイらしいデザインの中にオーソドックスに技術
や物量を投入した１台で，前モデルＴＵ-７０７をベースに，クォーツロックによる周波数ロック，周波
数のデジタル表示などの新しい技術も投入され，オーソドックスながら使いやすいチューナーとして
完成されていました。そして，これ以降は，「０７シリーズ」のチューナーは，シンセサイザー方式へ
と移行していくことになりました。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
チューナーの同調とはこれほどラクだったのか。
音質を重視したサンスイの新開発デジタリークォーツロック。
Ｄシリーズ・アンプにベスト・マッチします。
◎受信精度に飛躍的向上をもたらす
デジタリークォーツロック・システムを搭載
◎高感度ＦＭフロントエンドで
ジャスト・チューニング
◎遠い電波も確実にキャッチするＦＭ ＩＦ部
◎動的群遅延特性の改善により
高選択度と低歪率を実現
◎音質重視のパイロットキャンセラー内蔵
ＰＬＬ ＭＰＸ回路
◎ＡＭ波も受信周波数を
デジタル表示する使い易さ
◎ワイドレンジＤＣアンプ構成で
バランスの良い音を実現
◎正確な音像定位を保証する
誤差増幅型定電圧電源回路
◎局間雑音をカットするＦＭミューティング
●ノイズキャンセラー・スイッチ
●出力レベル調整可能
●ＦＭ用３００Ω/７５Ω同軸用アンテナ
●高感度フレキシブル型ＡＭバーアンテナ
●ＦＭ部●
実用感度（ＩＨＦ） ＭＯＮＯ ９．６dBｆ
ＳＴＥＲＥＯ １６．５dBｆ５０dＢクワイティング感度（ＩＨＦ） ＭＯＮＯ １３．５dBｆ
ＳＴＥＲＥＯ ３５．５dBｆＳＮ比 ＭＯＮＯ ８１dB以上
ＳＴＥＲＥＯ ７８dB以上歪率（ＩＨＦ，５０dBクワイティング） ＭＯＮＯ １００Ｈｚ ０．６％以下
１ｋＨｚ ０．６％以下
６ｋＨｚ １．０％以下
ＳＴＥＲＥＯ １００Ｈｚ ０．６％以下
１ｋＨｚ ０．６％以下
６ｋＨｚ １．０％以下歪率（ＩＨＦ，６５dＢｆ） ＳＴＥＲＥＯ １００Ｈｚ ０．１％以下
１ｋＨｚ ０．０７％以下
６ｋＨｚ ０．１％以下キャプチュアレシオ（ＷＩＤＥ） １．０dB以下 選択度（ＩＨＦ，４００ｋＨｚ） ６０dB以上（４００ｋＨｚ） スプリアスレスポンス比（ＩＨＦ） ８５dB以上（８３ＭＨｚ） イメージレスポンス比（ＩＨＦ） ８０dB以上（８３ＭＨｚ） ＩＦレスポンス比（ＩＨＦ，平衡） ９０dB以上（８３ＭＨｚ） ＲＦ相互変調（ＩＨＦ） ６５dB（８３ＭＨｚ） ＡＭ抑圧比（ＩＨＦ） ５０dB以上 ステレオセパレーション １００Ｈｚ ３５dB以上
１ｋＨｚ ５０dB以上
１０ｋＨｚ ３５dB以上サブキャリア成分比 ６０dB以上 アンテナ入力インピーダンス ３００Ω平衡，７５Ω不平衡 出力電圧（可変出力）/インピーダンス ０～７７５ｍＶ/２．５ｋΩ
●ＡＭ部●
実用感度（ＩＨＦ，バーアンテナ） ４７dB／ｍ（２２０μ／ｍ） 選択度（±９ｋＨｚ） ３３dB以上 ＳＮ比 ５０dB以上（８０dB/ｍ） 歪率 ０．３５％以下（３０％変調，８０dB/ｍ）
０．８％以下（８０％変調，１００dB/ｍ）イメージレスポンス比（ＩＨＦ） ５０dB以上（１０００ｋＨｚ） ＩＦレスポンス比（ＩＨＦ） ３５dB以上（１０００ｋＨｚ） ●その他●
定格消費電力（電気用品取締法） ２０Ｗ 寸法 ４３０Ｗ×１６８Ｈ×４０５Ｄmm
４８２Ｗ×１６８Ｈ×４１９Ｄmm（ラックマウント・アダプター付）重量 ８．８ｋｇ
９．３ｋｇ（ラックマウント・アダプター付）※本ページに掲載したＴＵ-Ｄ６０７の写真，仕様表等は１９７８年１１月の
ＳＡＮＳＵＩのカタログより抜粋したもので，山水電気株式会社に著作権
があります。したがって，これらの写真等を無断で転載・引用等するこ
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