V-8000Sの写真
TEAC V-8000S
3HEAD STEREO CASSETTE DECK ¥105,000

1991年に,ティアックが発売したカセットデッキ。前年に発売したV-7000(¥75,000)の上級機として
発売されたカセットデッキで,Vシリーズのプレステージ機として,ティアックとしては初めてドルビーS・NR
を搭載したカセットデッキでもありました。

走行系は,クローズドループ・デュアルキャプスタン方式が採用され,左右のピンチローラーの径をわずか
に変えることで回転系の周期的変動をキャンセルし,ワウ・フラッターを低減する周波数分散型となってい
ました。キャプスタンにはサブミクロン・オーダーの精密なエッチング処理が施され,テープのグリップ力が
高められ,テープの安定走行を確保していました。また,キャプスタンモーター軸に高精度大型フライホイー
ルが搭載され,さらに安定した回転を実現していました。

コバルト・アモルファス・ヘッド

録音・再生ヘッドを独立させたコンビネーション型3ヘッド方式で,CA(コバルト・アモルファス)ヘッドが採用
されていました。アモルファスの非結晶構造を生かして14層にラミネート(薄膜積層)化された構造で,電磁
変換特性にすぐれ,硬度が高く摩耗に対しても強く,渦電流損失が抑えられ,すぐれた高域特性も実現して
いました。さらに,微少信号を扱うヘッド部での歪みや伝送ロスを抑えるために,内部捲線には純度99.997%
PCOCC(単結晶高純度無酸素銅)が採用されていました。
コンビネーションヘッドを支えるベースには,亜鉛合金ダイキャスト・ヘッド・ベースが採用されていました。ヘッ
ド部に振動が伝わるのを抑えて変調ノイズを低減し,常にヘッドを正確に位置決めして長期にわたり高精度
を維持するようになっていました。消去ヘッドには,フェライトヘッドが搭載されていました。

カセットホルダー部

音質を劣化させるカセットハーフの微振動を抑えるために,「アンチ・スタティック・カセット・スタビライザー」が
搭載され,ハーフ全体を強力に圧着してローディングして有害な微振動を排除するようになっていました。アー
ム部は2mm厚アルミの2層構造,カセットホルダー部は1.6mm厚の鋼板製という剛性の高い構造となって
いました。また,カセットハーフのわずかなそりにも対応して,3点でカセットハーフを確実に支持してがたつき
を抑える「トライアングル・カセット・サポート・システム」が採用されていました。また,特殊耐振素材のカセット
リッドには補強リブが加えられ,微振動の分散・吸収が図られていました。カセットホルダーの開閉はモーター
によるパワーローディング・イジェクト・システムが採用されていました。

V-8000Sの内部メカニズム専用シャーシ

V-8000Sを含むVシリーズでは,ヘッド系を含む走行メカニズムを構造的にも視覚的にも安定性の高い中央
部に配置したセンターマウント方式がとられていました。重量配分の偏りをなくすことでシャーシの歪みなどを
抑え,脚部から離れた配置により外部振動も伝わりにくいというものでした。
そして,全体に高剛性となるような構造がとられていました。まず,ボトムシャーシとの二重構造により,メカニズ
ム部分の剛性を大きく高め外部振動の影響を排除するとともに,メカニズムから発生する微振動の他への影響
を抑えるためにボトムシャーシと独立したメカニズム専用シャーシが設けられていました。そして,メカニズム専
用シャーシ,独立したサイドシャーシ,フロントとリアを結ぶセンターシャーシが,底面全体を支える重量級のボト
ムシャーシ上に,がっちり組み上げられた構造となっていました。さらに,中央にも固定ネジが設けられた5スク
リューマウント・トップパネルと制振サイドパネルで強固に一体化された高剛性の「ハイリジッドチューン・シャーシ」
構造となっていました。トップパネルには1.6mm厚の重量級スチールダンパー材がマウントされ,共振や形状の
歪みを抑制し,さらなる重量アップで本体の安定性や耐振性を向上させていました。

すべての再生アンプは,2電源ダイレクト・カップリング方式による全段モノーラル・オールDCアンプ構成で,セ
パレーションや位相特性に優れたコントロールアンプに匹敵する高音質が実現されていました。ヘッドアンプ部も
入力カップリング・コンデンサーを排除したFET差動入力DCアンプとして,低域のノイズ特性を大きく改善してい
ました。回路部は,線材を極力減らし,最短経路設計が採用され,線材の引き回しによる音質の劣化やノイズ干
渉を抑えていました。特に,録音ボリュームと入力端子は直付け構造として,入力信号がダイレクトにラインアン
プ部に送り込まれる構成がとられていました。録音レベルボリュームには,正確なコントロール特性が得られる
ように厳しく調整されたカスタムメイドのユニットが採用されていました。
各回路部は,内部シャーシで分離されたレイアウトが採用され,入力部,コントロール部,アンプ部とディスプレイ
部,メカニズム部が完全にシールドされ,各セクション相互の電気的,物理的な干渉を排除していました。

電源部には,大型トランスを搭載し,各セクションへの安定した電源供給を確保し,メカニズム系,録再アンプ系
は,トランス巻線から完全独立構成がとられ,干渉を抑えたクリーンな電源を供給するようになっていました。電
源コードは,極性表示付きのOFC材による大容量タイプが使用されていました。その他,金メッキ端子,カスタム
メイドのオーディオ専用コンデンサー,電解コンデンサーなど高品質なパーツが投入されていました。

テープ1本ごとに異なる最適バイアス値とレベル(テープ感度)を合わせ込むことが可能な,左右独立のテープ微
調整機構が装備され,内蔵発振器を使って正確な調整が行え,ドルビーNRの正確な動作も確保していました。
レベルメーターには,視認性のよいダブルFLディスプレイが搭載され,さらに,瞬時のピーク値を正確にデジタル
表示するデジタル・ピークマージン表示も搭載されていました。

V-8000Sの最大の特徴の1つとして,ドルビーS・NRがありました。これは,ドルビーB,Cの技術をベースに,
業務用で使われていたドルビーSRの動作原理を継承したもので,すぐれたノイズ低減効果(高域で24dB,低域
でも10dBと全帯域での低減効果)とブリージング現象を大きく抑えた高い性能を持っていました。ドルビーB,C
も搭載され,高域特性を改善するドルビーHXプロも搭載されていました。

機能的には,比較的多機能で,前後15曲のCPS自動選曲機能,ストレートな録音ができるCDダイレクト,CDの
録音レベルが簡単に分かるCDレベルチェック,自社CDプレーヤーに対応したCDシンクロ機能,オートRECミュ
ート(4秒),TAPE/SOURCEが自動的に切り換わるオートモニター,オートテープセレクター,ワイヤレスリモコン
などが装備され,使い易いデッキとなっていました。

以上のように,V-8000Sは,ティアックが新しいプレステージモデルとして,各部に物量とティアック伝統のテープ
デッキ技術が投入されたティアックらしいオーソドックスな安定した音と性能をもつ使い易いデッキでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



先進のドルビーS-NR搭載。
カセットデッキの頂点へ
Vのプレステージ。





●V-8000Sの主な仕様●

トラック形式 4トラック・2チャンネル・ステレオホニック方式
ヘッド構成 録音×1・再生×1(PCOCCコバルト・アモルファス)コンビネーションヘッド
消去(フェライト)×1
モーター構成 キャプスタン:クォーツロックPLL DDモーター×1 
リール    :DCモーター×1
メカニズム:DCモーター×1
ワウ・フラッター 0.022%以下(WRMS),±0.04%(W・Peak)
早巻時間 約85秒(C−60テープ)
総合周波数特性 メタル  :15Hz〜21,000Hz ±3dB
クローム:15Hz〜20,000Hz ±3dB
ノーマル:15Hz〜18,000Hz ±3dB
総合SN比 58dB(NR OFF規定録音レベル)
84dB(ドルビーS-NR ON CCIR/ARM)
入力 ライン:97mV(入力インピーダンス50kΩ)
CDダイレクト:155mV(入力インピーダンス50kΩ以上)
出力 ライン:0.69V(負荷インピーダンス50kΩ以上) 
ヘッドホン:2mW(8Ω)
電源 100V AC,50/60Hz
消費電力
23W
外形寸法 471(幅)×149(高さ)×355(奥行)mm
重量 10.5kg(側板含む)


※本ページに掲載したV-8000Sの写真,仕様表等は1992年7月
 のTEACのカタログより抜粋したもので,ティアック株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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