TEAC V-R1
AUTO REVERSE STEREO CASSETTE DECK ¥89,800
1981年に,ティアックが発売したカセットデッキ。ティアックは,オープンリールデッキの時代から,テープデッキの
メーカーとして高い評価を得ていたブランドで,カセットデッキの時代に入っても,しっかりした作りのテープデッキを
作り続けていました。1970年代後半に入って,カセットデッキにもオートリバースデッキが登場し始め,ソニー,ア
カイなどテープデッキに強いメーカーが高い技術を生かして次々と開発していきました。そうした中,ティアックは
オートリバースのカセットデッキに対して比較的慎重で,早くから高速なリバースができるクィックリバース機を発売
していたアカイなどとは対照的でした。そんなティアックが初めて発売したクィックリバース機構搭載のカセットデッキ
がV-R1でした。
V-R1の最大の特徴は,上述のようにクィックリバース機構を搭載していたことでした。通常のオートリバースはテー
プエンドまでテープを送り,そこからリバース動作を行うため,リバース時にかなりの空白時間が生じますが,クィッ
クリバース機構は,テープエンドまで行かずに高速でリバースするもので,空白時間をごく短く(1秒以下)に抑える
ことができるようになりました。
V-R1に搭載されたクィックリバースメカニズムは,ティアック独自のI.R.(赤外線)コンビネーション・テープセンサー
を搭載し,このセンサーが録音テープとリーダーテープの境目を光学的に検知し,その反射光線をフォトトランジス
タが素早くキャッチして,瞬間的に反転を完了させるというメカニズムでした。メカニズム自体の反転時間は0.2秒
実際の音の空白時間も0.4秒と,ほとんど音切れが気にならないほどに高速化されていました。赤外線センサー
の信号を受けてのテープ走行の切換は,すべてマイクロコンピュータ制御になっており,テープ反転時に起きやすい
ノイズも抑えられていました。
カセットデッキのオートリバースでは,ヘッド位置の自由度の大きいオープンリールデッキと異なり,ヘッドをいかにし
て往復録音・再生に対応させるかが課題となり,いくつかの方式がありました。A面録・再時とB面録・再時でヘッド全
体を回転させる方式,ヘッドをA面,B面に対応してテープ幅方向にスライドさせる方式,A面とB面それぞれに専用
の2トラックで対応する4トラックヘッドを搭載した方式などがありました。
V-R1では,4トラックヘッド方式で,ヘッドが固定されているため,通常の2ヘッドデッキとほぼ同条件になり,テープ
走行の安定性にすぐれるという特長がありました。また,ヘッド回りがシンプルな作りになるため,ヘッド部に負担が
かからず耐久性にも有利な方式でした。
録音・再生用4トラックヘッドは,ハードパーマロイヘッドが搭載され,消去ヘッドはフォワード側,リバース側それぞれ
専用で,合計2つ搭載され,保磁力の大きいメタルテープに対応したダブルギャップヘッドが搭載されていました。
テープ走行系は,キャプスタン専用にDCサーボモーター,リール専用にDCモーターが搭載され,さらにメカニズム駆
動用にDCモーターを搭載した3モーター構成となっていました。ソレノイドを使用せず,モーターによるメカニズム駆
動が行われるため,静かにスムーズに動作するメカニズムとなっており「ソフト・スムーズ・サイレント」の「3Sメカニズ
ム」と称されていました。
録音/再生アンプは,信号系のコンデンサー数を大きく減らし,ノイズや位相変化を抑えたDC構成アンプが搭載され
ていました。さらに,イコライザーアンプ,マイクアンプ,ヘッドホンアンプ,メーターアンプのすべてに±2電源方式の
DC構成アンプ回路が採用され,トータルにDC化されていました。
V-R1には,ノイズリダクションシステムとして,ドルビー(Bタイプ)に加え,dbxが搭載されていました。アメリカのdbx
社が開発したプロ規格のノイズリダクションシステムであるdbxを,1976年に世界で初めてカセットデッキに搭載した
のがティアックでした。圧縮伸張型のノイズリダクションであるdbxによって,ノイズレベルは30〜40dB低減され,ダ
イナミックレンジは110dBを実現していました。
V-R1は,オートリバース機構を生かし,ブロックリピート機構,CPS機構など,多くの機能が搭載されていました。ブ
ロックリピート機構は,繰り返して聴きたい部分を連続で6回リピートできる機構で,マイコンがスタートメモリー(始点)
とストップメモリー(終点)を記憶し,このブロック間で再生と巻き戻しを繰り返すものでした。巻き戻しは両方向ですべ
て最短距離をマイコンが判断するようになっており,A面,B面の両面にわたってリピート機構が作動するようになって
いました。CPS(Computer Program System)は,両方向15曲までの飛び越し選曲機構で,ブロックリピート同様
A面,B面を通じて両方向に可能となっていました。
レベルメーターは,16ドットのLEDによるピークレベルメーターが搭載され,テープカウンターも,4桁のLEDカウンター
が搭載されていました。操作系は,ストローク0.3mmのフィルムスイッチ式のフラットキーボードコントロールが採用さ
れ,外観上の特徴となっていました。V−R1では,録音レベルボリュームもタッチフェーダーコントロールとなっており
録音レベル調整に加え,フェードイン,フェードアウトもワンタッチでできるようになっていました。フェードコントロールの
スピードもFAST/SLOWの切換が付いていました。
その他,ワイヤードリモコンのRC-95が標準で付属しており,通常のテープ走行のコントロールとブロックリピート機構
CPS機構の操作もリモコンでできるようになっていました。
以上のように,V-R1は,ティアック初のクィックリバース機構搭載デッキとして,高い機能性を実現し,それまでのハー
ドなイメージの同社のテープデッキとしてはやや毛色の変わった1台となっていました。しかし,dbxを搭載し,3モーター
構成のメカニズムを採用するなど,テープデッキとして,ティアックらしいこだわりも見せていました。
また,V-R1と基本性能,基本的メカニズム等は同一で,dbx,CPS機構,タッチフェーダーコントロール,LINE OUT
PUTボリュームなど,一部の機能を省略した弟機V-R2も発売されました。
TEAC V-R2
AUTO REVERSE STEREO CASSETTE DECK ¥69,800