X-10Wの写真
ESOTERIC X-10w
CD PLAYER ¥400,000

1995年にティアックがエソテリックブランドで発売した一体型CDプレーヤー。ティアックは,1989年
より,アメリカのWADIA(ワディア)社と技術交流を行い,同社にVRDSメカニズムを供給していました。
WADIA社は,1988年に発足し,翌年の1989年に「デコーディング・コンピューター」と称するD/Aコ
ンバーター「WADIA2000」を発売し,デジタルながらアナログ的なニュアンス豊かな音が高い評価を
受けていました。そして,1990年に発売した同社のトランスポート1号機「WT2000」にティアック製
のVRDSを採用し,それ以来,同社製のCDトランスポート,CDプレーヤーの多くに搭載されていきま
した。
X-10wは,メカニズム,筐体,メイン電源部をティアックが,D/A変換部及びアナログ基板をWADIA
が担当して完成させたCDプレーヤーで,ティアックとWADIAの交流6年を記念して作り上げられた1台
でした。

VRDSメカニズム

CDドライブメカニズムには,ティアック自慢のVRDSメカニズムを搭載していました。VRDS(Vibration-
Free Rigid Disc- Clamping System)は,ディスクと同径,微妙な角度を持つターンテーブルに,
高精度に調整されたクランパーが,ディスク本体を圧着することで,ディスクのソリや歪みを矯正し,ディ
スクの不要な振動を排除するというもので, ティアック自慢の方式でした。X-10wでは,ターンテーブル
に高精度アルミダイキャストを使い,肉厚補強リブ構造のブリッジがこれをリジッドに支える構造になって
いました。メカベースには,熱膨張係数が低く,温度変化に強いなどの特徴があり,ABS樹脂に比べ約
2倍の比重がある特殊高分子素材が用いられ,すぐれた電気的,機械的特性,高度な寸法精度が実現
されていました。
CDをドライブするモーターには,高トルクブラシレス・ホールモーターが搭載され,回転安定性と耐久性が
確保されていました。さらに,ターンテーブルメカニズム全体が,銅メッキ・サブシャーシでフローティングさ
れ,振動モードの低減が図られていました。

DAC部DACのダイアグラム

DAC部には,WADIA社がVRDSメカニズム専用に開発・製造した「差動バランスD/A回路」が搭載され
ていました。この「差動バランスD/A回路」では,CDトランスポート部からのデジタル信号をデジタルフィル
ターで8倍にリ・サンプリングし,次に18ビットDACをアメリカXILINX(ザイリンクス)社製のプログラマブル
・ゲートアレーを用いて19ビットに変換し,同時に8倍を16倍へと2倍処理が行われます。このゲートアレー
では,変換誤差を極小にするための「サイン波移動平均回路」の働きも行われていました。この「サイン波
移動平均回路」は,8倍オーバーサンプリングからさらにオーバーサンプリングする際に,サイン波上に補
間値を置くことで,12/24オーバーサンプリングを実現し,単なる直線補間に比べ,誤差を大きく低減し,
後段のアナログ補間での位相歪みの発生を最小限に防止する働きをしていました。この後4つのDACが
搭載されており,16倍オーバーサンプリングでディファレンシャル動作が行われるようになっており,バラ
ンス出力へは,アナログフィルターを通過することなく,ダイレクトにXLRコネクターに信号が送られるよう
になっていました。

X-10WのリアパネルX-10Wのピンポイント・フット&ベース

メカニズム系とD/A部を完全分離するために,電源トランスが2つ搭載されたツイントランス構成がとられ
電源トランスは,リアパネルの外側に配置され,メカニカル制御系へのフラックスの影響を防止していまし
た。さらに,電源部専用基板は,回路上,構造上最適のレイアウトがとられていました。また,一体型のCD
プレーヤーの良さを積極的に生かすために,あえてデジタル・アウト回路は省略されているということでした。
(しかし,デジタル出力への要望は大きく,1998年には,デジタル出力を備えたX-10WD・¥410,000
が発売されることになりました。)

X-10Wの上部からの写真

筐体内部は,メカニズムを支えるサブシャーシ,D/A部,サーボ系をそれぞれ独立させたボックス構造が
採用されていました。また,各ステージを電気的にシールドするため,銅メッキを施したインナー・シャーシ
用鋼板をダイヤモンド構造で構築していました。フロントパネル,サイドパネル及び天板には最厚部10mm
の重量級アルミ押し出し材が用いられ,固有振動や共振へのしっかりとした対策がとられていました。
筐体全体を支える脚部には,真鍮ブロックにステンレスのピンを組み合わせたハイブリッド構造のピンポ
イント・フットが採用され,適度な内部損失を持つアルミ削り出し材のピンポイント・ベースが用意されてい
ました。ピンポイント・フットは,フロント2点,リア1点の3点支持構造がとられ,重心がこの3つのピンポイ
ントを結ぶ三角形の中心に来るように設計されていました。

以上のように,X-10wは,ESOTERIC(ティアック)とWADIAの共同開発ともいえる形で作り上げられた
珍しいCDプレーヤーでしたが,それだけに,音の方にも,他の国産CDプレーヤーとは異なる個性を持ち
厚みや安定感のある音は,国産離れした音として高い評価をうけました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



WADIA DAC
サイン波移動平均回路搭載。
高品位デジタル・プロセシング回路


◎ワディア社が「VRDS」メカニズム専用に
 開発した差動バランスD/A回路。
◎理想の補間曲線を獲得する
 サイン波移動平均回路。


VRDS
◎世界最高水準。
  圧倒的なメカニズム精度を実現する
  理想のターンテーブル・メカニズム。


◎メカニズム系とD/A部の電源部を
  完全分離するツイントランス構成。
◎銅メッキ・メイン&サブシャーシと最厚部
  10mmアルミ押し出し材による2重構造。
◎X-10wの厚みのある濃厚な音を支える
  ハイブリッド構造の
  3点支持ピンポイント・フット&ベース。




●FUNCTIONS●

ダイレクト・サーチ
TRACK/SKIP/INDEX/TIME
タイム・サーチ
10キー入力
プログラム
40prog.(RANDOM)
デリート・プログラム
40prog.(RANDOM)
リピート
1/ALL/PROGRAM/A-B
ディスプレイ
TOTAL No./PLAYING No./PROG No./INDEX No.
タイム・ディスプレイ
EACH
リメイン・タイム・ディスプレイ
TOTAL/EACH




●MAIN SPECIFICATIONS●

周波数特性
DC〜20kHz
チャンネルセパレーション
110dB以上
チャンネル位相差
0.5°以下
オーディオ出力
XLR/4.2Vrms(200Ω)
RCA/4.2Vrms(100Ω)
リ・サンプリングレート
16倍
D/Aコンバーター
18ビット4DAC(19ビット分解能)
パスバンドリップル
0.00005dB
アナログフィルター
なし
電源
100V,AC 50-60Hz
消費電力
12W
外形寸法
465W×157H×390Dmm
重量
14.5kg


※本ページに掲載したX-10Wの写真・仕様表等1995年4月
 のESOTERICのカタログより抜粋したもので,ティアック株式
 会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
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