RT
CORAL X-15
3WAY PROFFESIONAL SPEAKER SYSTEM
¥325,000
1978年に,コーラルが発売したスピーカーシステム。コーラルは,1946年に創業したブラン
ドで,コーン紙,スピーカーユニット製造から始まっていました。そのため,自作派のユーザー
などからは,ユニットメーカーとして高い支持を得ていました。1960年代頃からスピーカーシス
テムを発売し,コストパフォーマンスの高いモデルを作っていました。(この時期,アンプなども
手がけ,いいものを作っていましたが,しばらくして撤退しています。)そんなコーラルが作った
スピーカーシステムで最大級ものがX-15でした。
コーラルは,前述のようにスピーカーユニットのメーカーとして有名で,多くのすぐれたユニット
を発売していました。そして,1975年より,より高性能なユニット群として「Proffessoinalシ
リーズ」を展開していきました。この「Proffessoinalシリーズ」のユニットを搭載して作り上げた
同社の最高峰のフロア型システムがX-15でした。
X-15は,3ウェイのバスレフ方式のフロア型スピーカーシステムで,X-15の”15”は15イン
チを意味し,ウーファーが15インチ=38cm口径ユニットであることを意味し,当時のプロ用
大型モニターシステムの標準ともいえるものでした。デザイン的にもユニット構成的も当時人気
のあったアメリカのJBLのL-300(¥520,000)と非常によく似ており,その影響を大きく受
けていたことは間違いないと思います。
JBL L-300
FLOOR TYPE SPEAKER SYSTEM ¥520,000
ウーファーは,15L-100が搭載されていました。15L-100は,その型番から分かるように,口
径15インチ=38cmのコーン型で,自社製の強力なパルプコーンが使用されていました。駆動
系も,直径220mmを超え,総磁束532,000maxwellもの強力なフェライトマグネットを搭載し,
ユニット全体の重量は15.3kgにもおよぶ強力なユニットでした。
CORAL 15L-100
38cmWOOFER ¥53,000
スコーカーは,ドライバーユニットM-100,ストレートホーンAH-503,音響レンズAL-603を組
み合わせ,強力なホーンユニットを構成していました。
CORAL M-100
DRIVER UNIT ¥52,000
M-100は,モニタースピーカーや大小ホールのPA用として開発されたドライバーユニットで,JBL
のホーンにも直接接続できるものでした。ダイアフラム(振動板)には,Al(アルミニウム),Ti(チタ
ン)Mg(マグネシウム)など9種類の化学成分からなる超硬質・軽量の合金を独自に開発して採
用していました。この合金は,局部応力の生じない独自の方式で成形され,600℃±2℃の高性
能電子炉で焼き入れエージング処理がなされており,物理的にも機械的にも安定度の高いダイア
フラムとなっていました。エッジ部にはタンジェンシャルエッジが採用されていました。
ボイスコイルは,アルミ合金リボン線をエッジワイズ巻きして空隙占有率を高め,変換効率を高め
ていました。また,ボイスコイル製造工程では,全数顕微鏡チェックが行われ,1ターンの誤差もな
い仕様が確保されていました。
磁気回路は,磁束漏洩が少なく効率の良い内磁型磁気回路にアルニコマグネットNKS-5DGを
採用していました。また,ヨークには磁気飽和値の高い強磁気性鋳鉄を使用し,ギャップを構成
するプレートやポールには透磁率の高い純鉄を使用し,19,000ガウスの磁束密度を実現して
いました。そして,特にプレートはミクロン単位で全面研磨された超精密仕上げとして安定した直
流磁場が確保されていました。
M-100では,500Hz~18kHzの広帯域特性を確保するために,亜鉛ダイカスト製二重スリット
構造の位相等価器(WE式)フェージングプラグを採用していました。ダイアフラムは最後部に装着
されており,通常の逆方向に音が放射され,フェージングプラグの二重スリットを通り位相ズレを起
こすことなく,ユニット前面にあるスロート部に到達するようになっていました。
CORAL AH-503
STRAIGHT HORN ¥9,300
CORAL AL-603
ACCUSTIC LENS ¥8,700
AH-503は,アルミ鋳物製のストレートタイプのコニカルホーンで,同社のドライバーや音響レンズ
と適合するようにねじ穴が設けられており,一体化させて使えるようになっていました。
AL-603は,指向性をコントロールするための音響レンズでした。この音響レンズはスラントプレー
ト型というもので,JBLに多く見られるものでした。V字型にカットした金属板をすきまをあけて11枚
斜めにずらせて重ねたもので,音はすきまを反射を繰り返しながら出てくるので,中心部と周辺部
で距離差を生じ,音響レンズ(光学レンズていうと凹レンズ的に拡散させる)として働くものでした。
CORAL H-100
SUPER HORN TWEETOR ¥32,000
H-100は,ホーン型のスーパートゥイーターで,コーラルのトゥイーターユニットとしては最上級モデ
ルでした。アルミ棒から精密に削り出されたホーンは,肉厚で機械加工の限界まで絞り込んだスロー
ト部と厳密に計算された数値に基づいて削り出されたイコライザーをもち,さらにゼロ近くまで微調整
されたダイアフラムとのクリアランスは振動系に十分な空気負荷を与え,すぐれたトランジェント特性
と指向性を実現していました。
ダイアフラムは,非常に薄い15μ厚のスーパージュラルミンが採用されていました。高精度熱風炉
による焼き入れを施して,軽量・硬質という特性を実現したダイアフラムでした。
ボイスコイルは,高導電率のアルミ合金のアルミリボン線をエッジワイズ巻きにして採用し,空隙の
磁束を最大限に活用して大きな駆動力と制動力を確保し,すぐれた過渡特性と高い変換効率を実
現していました。
磁気回路は,アルニコマグネットNKS-5DGを採用し,ポールピースとヨークプレートに透磁率の高
い純鉄を使用した内磁型となっており,スコーカー部のM-100と同じ19,000ガウスの磁束密度
を実現していました。
このH-100は,そのすぐれた性能が評価され,H-100をベースにしたユニットがアルテック社の初
の4ウェイシステムのスーパートゥイーターとして採用されていました。
こうしたコーラルの,「Proffesionalシリーズ」のユニットはコストパフォーマンスの高さと確かな性能
で高い評価を受けていました。これらの実力派ユニット群を搭載するX-15のエンクロージャーは,バ
スレフ型で,ややバッフル面がスラントした形状が特徴でした。作りも非常に強固なものとなっており,
ユニットも含めた総重量は77kgにも及ぶものとなっていました。背面の入力端子はマルチアンプに
も対応したものとなっていました。
以上のように,X-15は,コーラルが自社の高性能な単体ユニットを結集し,作り上げた堂々たる重
量級のフロア型スピーカーシステムでした。ユニット,エンクロージャー,システム形式等JBLの影響
を強く感じるところはありましたが,コーラルらしく高いコストパフォーマンスを実現していました。高能
率のしっかりした鳴りっぷりの本格的なモニタースピーカーでしたが,高域を担当するスーパートゥイー
ターのH-100の特性ゆえか,モニタースピーカーを強く感じさせるデザインからイメージするよりも滑
らかな音をもっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
すでにプロユースの各分野で優れた評価と
信頼を築きあげたコーラルプロシリーズの
ユニットによる最高峰フロアーシステムです。
アンプから送り込まれた信号を忠実にトラン
スデュースする側面と音楽再生の側面,双方
の実力をプロユースの名に恥じることなく存
分に発揮します。
●主な仕様●
■X-15主要規格■
エンクロージャー型式 | バスレフ型 |
使用ユニット | 38cmウーファー:15L-100 スコーカー: ドライバーM-100 ストレートホーン+アコースティックレンズAH-503+AL-603 スーパートゥイーター:H-100 |
公称インピーダンス | 8Ω |
プログラムソース入力 | 150W |
再生周波数帯域 | 30~30,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 750Hz,8,000Hz |
出力音圧レベル | 97dB/W-m |
外形寸法 | 590W×860H×590Dmm |
重量 | 77kg |
その他 | マルチアンプ入力端子付き |
公称インピーダンス | 8Ω/16Ω |
プログラムソース入力 | 150W |
最低共振周波数 | 25Hz |
再生周波数帯域 | fo~1,500Hz |
出力音圧レベル | 96dB/W-m |
総磁束 | 532,000maxell |
重量 | 15.3kg |
有効振動半径a | 16.8cm |
振動系等価質量 | mo=110g Qo=0.25 |
公称インピーダンス | 8Ω/16Ω |
プログラムソース入力 | 150W |
公称入力 | 50W.r.m.s(500~5,000Hzのホワイトノイズによる) |
再生周波数帯域 | 500~18,000Hz |
出力音圧レベル | 105dB/W-m(AH-500使用時) |
磁束密度 | 19,000gauss |
マグネット | 1kg NKS-5DG |
スロート径 | 25.4mm(1インチ) |
外形寸法 | 116φ×104Dmm |
重量 | 4.2kg |
クロスオーバー周波数 | 800Hz以上 |
外形寸法 | 158φ×220Dmm |
重量 | 1kg |
適合ホーン | ストレートホーンAH-503 |
拡散角度 | 水平方向=80° 垂直方向=45° |
有効周波数 | 2,500Hz以上 |
適合ホーン口径 | 100φmm |
外形寸法 | 245W×168H×72Dmm |
重量 | 650g |
公称インピーダンス | 8Ω |
プログラムソース入力 | 30W |
再生周波数帯域 | 7,000~30,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 7,000Hz以上(12dB/oct) |
出力音圧レベル | 110dB/W-m |
磁束密度 | 19,500gauss |
ボイスコイル径 | 18φmm |
外形寸法 | 98φ×115Dmm |
重量 | 3.8kg |
※本ページに掲載したX-15,15L-100,M-100,AH-503
AL-603,H-100の写真・仕様表等は,1981年8月のCORAL
のカタロより抜粋したもので,コーラル株式会社に著作権があり
ます。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。